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ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

ミッションクリティカルな「サービス総合管理システム」を迅速にオープン化。
高信頼な「止まらないシステム」を実現

経営のスピード化と情報資源のさらなる有効活用を図るため、メインフレーム資産をオープンシステムに移行するレガシーマイグレーションの動きが活発化しています。 そこで「株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス」は、SIパートナーである「株式会社 日立エイチ・ビー・エム」とともに、メインフレームで稼働していた制御用コンピュータのサービス総合管理システム「COSMIC」*1を、COBOL2002やOpenTP1、XMAP3、JP1といった日立オープンミドルウェアを活用し、HA8000のオープンプラットフォームへと移行。信頼性を維持しながら、より柔軟でスピーディな情報活用を実現しました。

*1
COSMIC : COmputer Service Management Information and Control system

引田 和郎 氏の写真
株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
常務取締役
情報・制御システム本部
本部長
引田 和郎 氏

川上 道雄 氏の写真
株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
コンピュータサービス部
部長
川上 道雄 氏

土門 和男 氏の写真
株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
コンピュータサービス部
情報支援グループ
主任技師
土門 和男 氏

国分 二郎 氏の写真
株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
コンピュータサービス部
テクニカルサポートグループ
主任技師
国分 二郎 氏

村山 武典 氏の写真
株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス
コンピュータサービス部
情報支援グループ
村山 武典 氏

情報活用ニーズに応える新たなIT基盤を構築したい

1960年の創業以来、日立グループの一員として、電力やエネルギー、交通、上下水道、各種産業といった社会インフラの幅広い分野に、エンジニアリングや高機能システム、保守サービスなどをワンストップで提供している「株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス(以下、HES)」。同社は約30年前から、各種プラントや工場で使われている日立製作所の制御用コンピュータの保守サービスを担っており、そのあらゆる情報をメインフレームMP5400(VOS1/FS)で管理していました。

しかし、エンドユーザーであるサービスマンの情報活用ニーズが多様化するにつれ、いくつかの課題が顕在化してきたと、常務取締役情報・制御システム本部 本部長の引田和郎氏は語ります。

「当社では制御用コンピュータを導入されているお客さまへのメンテナンス対応や技術支援、リプレース提案などに活用できるよう、全国32の拠点に散らばる約200人のサービスマンに、サービス総合管理システム「COSMICオンライン・システム」で情報提供を行っています。さらに、それらのデータをWeb経由あるいはリクエスト形式でEXCELデータの提供も行っています。

しかしWebで提供しているデータは全体のごく一部であり、より幅広い情報をリアルタイムに入手したい、といったさまざまな要望に応えるため、システム基盤の刷新を模索していたのです」

さまざまな社会インフラを担う重要システムのサポート情報が蓄積されたCOSMICは、文字どおり24時間365日稼働するミッションクリティカルなシステムです。そのため当初は信頼性を重視して最新型メインフレームへの移行も検討されました。しかし、システム全体の拡張性と柔軟性、TCO*2削減も考慮して、オープンなHA8000プラットフォームへの移行を決断。SIパートナーである「株式会社 日立エイチ・ビー・エム(以下、HBM)」と連携し、HESはオープン化に備えたプログラム資産の現状調査や、データベースを移行するに際しての新たなデータベースアクセス方式の検討など、綿密な分析作業と準備を経た後、2005年秋より本格的なシステム移行プロジェクトに着手しました。

*2
TCO : Total Cost of Ownership

COSMICシステム概要
(図)COSMICシステム概要

プログラム移行を効率化したオープンミドルウェア

今回の新COSMICプロジェクトにおいて、移行作業の効率化とシステム全体の信頼性、機能性を高めるツールとして採用されたのが、COBOL2002、XMAP3、OpenTP1、JP1といった日立オープンミドルウェアです。その経緯をコンピュータサービス部 情報支援グループ主任技師 土門和男氏は、次のように説明します。

「サービスマンや本社内のユーザー部門からヒアリングした結果、今回は情報資産を継承することが第一であり、使い慣れたプログラムそのものを大幅に変える必要はないことが確認されました。 そこでプログラム資産の移行では、MP5400とHA8000双方に相性のいいCOBOL2002を使用することとし、DBアクセス部は独自のツールを作りこみ、効率よくコンバージョンを行い、また画面系ではCIUからGIUへのシフトはひな形を作成し、パターン化することでそれぞれの作業効率とスピードを大幅に向上させようと考えたのです」

一方、オープンな分散コンピューティング環境において、メインフレームと同等の高信頼なオンライントランザクション処理(OLTP)を実現したのが、分散トランザクションマネージャOpenTP1です。OpenTP1は高負荷環境でも安定した性能を提供できるうえ、メインフレームと親和性の高いAPIを提供しているため、メインフレームからのスムーズな移行にも役立ちました。 HESとHBMは、OpenTP1サーバとWebサーバを二重化した上で、ネットワークの負荷分散を図り、システム全体の冗長化と高信頼性を確保。9台のHA8000サーバを統合システム運用管理JP1の監視下に置くことで、「絶対に止まらないシステムをめざしました」と土門氏は胸を張ります。

メインフレームのセンターコンソールをJP1ファミリーで再現

新COSMICにおけるJP1の役割は、単なる稼働監視やジョブ運用の自動化にとどまりません。メインフレーム時代のCOSMICには、すべてのプログラムの稼働状況やトラブルがリアルタイムにエビデンスとして残る「センターコンソール」機能が備わっていました。しかし通常のオープンシステムにそのような機能は装備されていないため、「COSMICの安定稼働と迅速な障害回復を図るためにも、これまでのセンターコンソール機能をJP1によっていかに再現できるかが、止まらないシステムと並ぶ、もう1つの重要なテーマだったのです」と土門氏は説明します。

オンラインで約400本、バッチで約500本あるプログラムの処理結果を、異常/正常メッセージも含めてすべて統合管理製品「JP1/IM」*3上にリアルタイム表示したいというハイレベルな要求。これに対しHBMは、ジョブ管理製品「JP1/AJS2」*4や、ネットワーク管理製品「JP1/Cm2/NNM」*5、リソース情報収集製品「JP1/PFM/SSO」*6といったJP1コンポーネントを柔軟に組み合わせることで、本部端末のJP1/IM上に新たなセンターコンソールを再現。「わたしたちが期待していたものに、ほぼ近いものができあがりました」と土門氏は笑顔を見せます。

COSMIC画面の使用例
COSMIC画面の使用例。いつでもセンターコンソール(JP1/IM)に切り替え、すべての稼働状況を見渡すことができる

コンピュータサービス部 テクニカルサポートグループ主任技師の国分二郎氏も、「COSMICというシステムは、メインフレームの中で12の管理システムが相互に連携しながら稼働する、非常に複雑な構成になっていました。そのため個別移行や段階移行という手法はとれず、すべてを一気にオープン化しなければなりませんでした。そこでさまざまな要件を満たすためオープンミドルウェアが果たした役割は非常に大きかったと思います」と評価します。

約70万ステップものプログラム移行とデータベース変換を1年の間に着実に進め、最後の2日間で一気に切り替えを図った新COSMICプロジェクトは2006年10月、予定どおりカットオーバーを果たしました。

*3
JP1/IM : JP1/Integrated Management
*4
JP1/AJS2 : JP1/Automatic Job Management System 2
*5
JP1/Cm2/NNM : JP1/Cm2/Network Node Manager
*6
JP1/PFM/SSO : JP1/Performance Management/SNMP System Observer
上記製品は、JP1 Version 8(2006年5月)より、 JP1/Cm2/SNMP System Observerに名称変更

システムの利便性と処理スピードも格段に向上

新COSMICの稼働により、サービスマンによる情報活用の利便性が高まったと語るのは、コンピュータサービス部 部長の川上道雄氏。

「例えばお客さまのシステムにトラブルが発生した際、サービスマンは各拠点の自席PCから、対象システムの構成情報、保守情報などをチェックして障害個所を絞り込んだり、どの保守部品をどの棚からピックアップしてお持ちすればいいのかなど、さまざまな検索を行います。そのインタフェースがGUI化され、直感的かつスピーディに検索できるようになったことで、今まで以上に迅速な対応が図れるようになりました。また従来なら、わたしたちの部門にリクエストしなければならなかったその他の基幹情報も、加工しやすいデータ形式でオンデマンドに入手できる環境が整ったことで、今後の提案活動やプレゼンの準備が大幅に効率化するものと期待しています」

新しいハードウェアとミドルウェアとの相乗効果による処理スピードの高速化も、システム運用で大きな成果を上げています。「バッチ処理時間が従来の約1/10になりました。特に重い処理ほどスピードが速くなっていることを実感しています」と土門氏。

またコンピュータサービス部 情報支援グループの村山武典氏も、「災害対策用に、各サーバからLTO*7 にバックアップをとっていますが、従来なら2時間ほどかかっていたフルバックアップが現在は15分ほどで終了します。24時間稼働のシステムなので、オンライン業務に与える影響を最小化できるのが助かります」と語ります。

今後は新COSMICと、制御用コンピュータの生産工場システムをシームレスに連携させることで、お客さまシステムのさまざまな障害情報や保守情報を、「生産ラインの品質管理などにも迅速にフィードバックさせていきたい」と意欲を語る国分氏。日立はこれからも、信頼性の高いオープンミドルウェアとハードウェアによるサービスプラットフォームを継続的に強化し、HESの経営スピード向上と情報活用の進化を力強くサポートしてまいります。

*7
LTO : Linear Tape-Open

制御用コンピュータの写真
社会インフラを担う幅広い企業に導入されている
制御用コンピュータ

HA8000サーバの写真
サービス総合管理システム「COSMIC」を支えるHA8000サーバ

USER PROFILE

株式会社 日立エンジニアリング・アンド・サービス

[本社] 茨城県日立市幸町三丁目2番2号
[代表取締役社長] 瀧澤 照廣
[従業員数] 2,645名(2007年3月現在)

高い安全性と信頼性が要求される社会インフラ分野で培った技術力とグローバルな事業ネットワークにより、エンジニアリングから製造・SI、据付、試運転、保守サービスに至るまでの一貫した体制で、お客さまに満足いただけるワンストップサービスを提供。持続可能な社会の実現をめざして、環境保全と経済成長との調和、社会生活における安全、安心の確保に積極的に取り組む。

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 2007年7月号」に掲載されたものです。
  • COBOL2002OpenTP1XMAP3JP1の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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