HDSMは国内製造業での導入が進んでおり、成果も出始めている。
成功事例の一つとして紹介しておきたいのが、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー食品)と日立の協創である。
従前、サントリー食品において工場への原材料入荷から製造、物流、倉庫保管へとつながる情報はそれぞれ個別のシステムで管理されていたため、万が一製品の品質などに疑義が発生した際には、サプライヤーや工場、倉庫へ問い合わせて、その影響範囲の調査/確認を行っており、膨大な時間と労力を費やしていた。
そこでサントリー食品と日立が共同開発したのが、上記の情報を一元管理するチェーントレーサビリティシステムである。まずは、各工場における原材料の入荷/投入情報、商品の製造計画/実績情報、商品出荷情報や各倉庫における入庫/保管情報などのデータをIoT基盤に収集/蓄積する。そして、現場プロセスをデジタル空間に再現し、データをつなげることで、サプライチェーンを流れる膨大な出荷品が、いつ、どこで、どの原材料を用いて作られ、どこに出荷されたかを、直観的かつ速やかに追跡できるトレーサビリティを実現する。
サントリー食品におけるチェーントレーサビリティシステムの導入前/導入後の業務比較 提供:日立製作所
サントリー食品は、このチェーントレーサビリティシステムを国内で清涼飲料を製造している委託先を含めた工場約60拠点および倉庫約300拠点の全てに展開し、一斉に運用を開始した。これにより、異常のあった原材料を使用して他商品を製造するリスクを未然に防ぐことができるようになった。また、万が一、原材料や工程の異常による疑義商品を製造してしまった場合でも、その範囲を迅速/正確に把握することが可能となった。
なお、先にHDSMのアプリケーション群の1つとして紹介した「チェーントレーサビリティ」は、まさにこの協創を通じて開発されたシステムを汎用化して実装したものである。
今後のHDSMの展開では、顧客とのさまざまな協創を通じて得られた新たな知見やノウハウが組み込まれていくことになりそうだ。栢下氏と井原氏は「品質情報だけでなく、例えばCO2排出量に関する情報をチェーントレーサビリティでひも付ければ、カーボンニュートラルの取り組みも支援できると考えます」と語っており、HDSMの広範な発展を見据えている。
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転載元:MONOist
MONOist 2024年12月27日掲載記事より転載
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