生産性の向上を阻害するさまざまなロス要因に多くの製造業が悩まされている。4M(huMan、Machine、Material、Method)データの分析によって、製造現場で発生するロス要因の特定を支援してきたのが日立だ。この4Mデータ分析について、工作機械を用いる組み立て加工系の製造業がより手軽かつスピーディーに導入できるよう新たに開発したのが「4Mロス分析サービス」である。
製造業にとって生産性の向上は常なる課題だが、近年はなかなか進みにくくなっている。工場の管理者からは「稼働率が伸び悩んでいる」「稼働率向上は確認できる一方で出来高が伸び悩んでいる」「現場(設備)ごとの稼働率にバラツキがある」「現場の要因特定と、その改善報告に対して不安がある」といった声が聞こえてくる。一方で、現場の作業者の方も「製品不良数を下げても生産数が伸びない」「設備停止時間の原因分析が困難」「管理者からの稼働時間に対する改善要望が困難」「そもそも改善活動を行う余力がない」といった悩みを抱えている。
実際のところ、熟練作業者の高齢化や労働力不足といった課題を抱えていたにもかかわらず、新たに発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って急務となった3密対策などが加わり、製造業の生産性が全般的に低下しているのだ。
生産性を向上するには、設備故障やワーク待ち、作業者不足、工具不足といったロス要因を特定する必要があるが、従来の生産管理手法では容易には実現できなかった。その解決手法としてIoT(モノのインターネット)が注目を集めているものの、ノウハウや労働力不足により対応できていない企業が多いのが実情だ。
こうした壁に直面している製造業の生産性向上に向けて、4M(huMan、Machine、Material、Method)に関するデータ分析で支援を行ってきたのが日立製作所(以下、日立)である。もともと日立は、製造現場におけるデータ活用、研究所を中心とした生産管理技術の研究から、製造業として長年培ってきた産業機器などのプロダクト、AI(人工知能)開発など、OT(制御・運用技術)とIT(情報技術)の融合による製造現場のIoT化およびデジタル化に取り組んでおり、その社内実践を通じて培ってきた技術とノウハウを広く提供することで、さまざまな製造業の生産性向上に貢献してきた。
例えば、ある顧客では、日立のデジタルソリューション「Lumada」の一部として提供されている「4MデータAI解析サービス」を活用して、工場の生産設備の稼働データをリアルタイムにモニタリングするとともに製造現場の可視化を実現した。さらに、これらのデータを網羅的に解析し、品質や生産性、設備の予知保全、省エネルギー化などに影響を与える要因を高速かつ高精度に探索・抽出する新たな生産システムを構築することで、生産性、品質、予知保全、省エネルギーの4つの観点からムダを排除し、高品質かつ高効率な製造を推進している。
とはいえ、従来の製造業向けのデータ解析サービスは、顧客の環境や条件に合わせた対応が必要であり、導入のためのコストや時間がかかることが課題だった。そこで、4Mデータ分析のメリットをより広範な製造現場で利用可能とするため、日立が新たに開発したのが「4Mロス分析サービス」である。
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット
ソリューション&サービス事業部 産業製造ソリューション本部 産業FAソリューション部
主任の後藤知明氏
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット ソリューション&サービス事業部 産業製造ソリューション本部 産業FAソリューション部 主任の後藤知明氏は「工作機械を利用して製品を生産している組み立て加工系の製造業のお客さま向けに特化して提供するもので、より手軽かつスピーディーに4Mデータの見える化とロス要因の分析を導入していただけます。加工機(設備)の稼働ログや加工するワークの動向、作業員の行動実績などの現場データを横串しで分析を行うことで、作業待ちや滞留による生産ロスを可視化し、改善につなげていきます」と同サービスの概要を説明する。
具体的には、多くの製造現場で適用可能なロス解析ノウハウを4Mデータの観点でモデル化し、その解析手法を分析・可視化の機能として提供するものである。動画解析技術を利用して人物(huMan)情報のデータ化も可能としたことが大きな特長になる。加工設備を対象とした実証において、近年製造業で実施され始めている機械の稼働ログ収集・分析だけでは分からない、作業者の不在など人的要因によるロスが稼働時間比で10%以上発生していることを明らかにしており、従来では見極めが難しかったロス要因の分析と定量化に役立てられるという。
「4Mロス分析サービス」の概要