インペラ(IMPELLA)とは急性心筋梗塞や重症心不全などで心原性ショック(心臓の機能が低下し、全身に血液を十分に送ることができない状態)に陥った際、全身に血液を送り、心臓の負担を直接軽減する補助人工心臓の一つです。
日本では2017年9月から導入され、当院でも2022年9月から運用開始しました。
『補助循環』とは、心臓のポンプ機能を助けることを指します。
心臓機能の一部を代行することで、心臓を一時的に休ませながら、治療に必要な手技や手術を行うことができるようになります。
これまでの補助循環には『大動脈バルーンパンピング(IABP)』、『経皮的心肺補助装置(ECMO)』、『左室補助人工心臓(LVAD)』などがありましたが、新たにカテーテルによる左室補助循環装置である『IMPELLA補助循環用カテーテル』が開発されました。
IMPELLAは超小型のポンプがカテーテルに内蔵されています。
足の付け根の動脈(大腿動脈)や鎖骨の下の動脈(鎖骨下動脈)から経皮的・経血管的にポンプカテーテルを挿入します。
従来の補助循環装置(ECMO)よりも心臓への負担が軽減され、挿入するカテーテルも少なく、低侵襲です。
インペラは、あらゆる内科治療(薬物療法)が効果的でない心原性ショックが適応となります。
具体的には超重症心不全が急性増悪した場合や重症の急性心筋梗塞、ウイルス感染を契機に起こりうる劇症型心筋炎などで搬送される緊急重症ショック症例などに有効と考えられます。また心臓血管手術後の補助循環として使うこともあります。
これまでの補助循環装置にはさまざまな問題があり、救命率が低い状態が続いていました。
これまでの治療に新たにIMPELLAが加わることで、救命率が改善する可能性があります。
より多くの心原性ショック、重症心不全の患者さんの治療に役立てられるよう多職種(循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、救急科、臨床工学技士、看護師)が連携し、診療に努めてまいります。