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Hitachi

自然災害やパンデミックに対して製造業サプライチェーンを強靭化する技術を開発

生成AIを活用したインサイト抽出により調達リスクを可視化し、リスク管理の効率化をめざす

  株式会社日立製作所(以下、日立)は、自然災害やパンデミックなどに対して製造業のサプライチェーンを強靭化するために、「ディープインサイト推定技術」を開発しました。この技術は、部品の型名、素材、供給元の企業名などの部品供給情報と、ウェブサイトで一般に公開されている企業情報などを生成AIに入力し、従来、明らかにすることが困難であった製造拠点の情報を高精度に推定するものです(図1)。
  今回、日立グループ内で検証したところ、85%を超える精度でサプライヤーの製造拠点情報を推定できることを実証しました。これにより、例えば、地震や台風などの部品供給リスク事象が発生した際、従来の人手による膨大な調達先製造拠点情報の収集や絞り込み作業が軽減できます。
  今後、日立は、国立大学法人東京大学(以下、東京大学)デジタルオブザーバトリ研究推進機構*1, 2と共同で製造業に影響を及ぼすリスク予兆を取り込み、調達リスクを可視化し、リスク管理の効率化を図ることで企業のサプライチェーン強靭化に貢献します。

[画像]図1 製造業のサプライチェーンリスク*4低減の全体像。今回は製造拠点推定の効果を実証
図1 製造業のサプライチェーンリスク*4低減の全体像。今回は製造拠点推定の効果を実証

  なお、本成果の詳細は、2025年3月17日に東京大学 本郷キャンパスで開催される「第二回 デジタルオブザーバトリ研究推進機構オープンフォーラム」で発表予定です*5

*1
2050 年の社会や経済活動のあるべき姿からのバックキャストによりレジリエントな社会のグランドデザインを描き、 国や産業界に向けて分析結果や政策を発信・提言・社会実装をめざす取り組み https://inst-do.adm.u-tokyo.ac.jp/
*2
2023年4月4日ニュースリリース 「東京大学が「デジタルオブザーバトリ研究推進機構」を設置 日立とレジリエントな社会・経済の実現に向けて共同研究を開始」
*3
Mapbox
OpenStreetMap
*4
製品やサービスの供給に関わる企業や組織が、災害や事故、サイバー攻撃などの脅威によって業務が滞り、供給が途絶えるリスク
*5
https://inst-do.adm.u-tokyo.ac.jp/news/20250213.html

背景

  近年、自然災害やパンデミック、地政学的な紛争など世界情勢の不確実性が増大しており、特に多数のサプライヤーを抱える製造業では、サプライチェーンリスクの管理とそれによるレジリエンスの強化が重要となっています。これに対して日立では、2023年4月より、東京大学デジタルオブザーバトリ研究推進機構とともに、サプライチェーンに影響を与える多様な要素をデジタルデータとして観測・分析し、リスクの予兆を早期に発見・対応することでレジリエントな社会の構築をめざす取り組みを進めてきました。

ディープインサイト推定技術を用いたサプライヤーの製造拠点推定

  今回、日立は、生成AIを用いて、企業内データやオープンデータをリアルタイムに収集・蓄積し、関連付けや推定を行うことで、人が想定しきれないインサイトを抽出する「ディープインサイト推定技術」を開発しました。この技術を用いて、製造業サプライチェーン強靭化に向けて、リスクを可視化するために重要となるサプライヤーの製造拠点推定を試みました。具体的には、まず、調達時の契約情報から得た所在地や部品情報を、製品を識別・分類・管理する際に使われる製品コード体系*6を用いて製品コードや付属情報に変換し、次に、生成AIを用いて、企業公式ホームページ、ISO認証情報*7、地図情報などの定型化されていないオープンデータから、製造拠点の候補となる情報を抽出しました。さらに、これらの情報で作成された中間リストに、一貫性や正確性を保証するための処理を加えることで、サプライヤーの製造拠点を緯度と経度のレベルで高精度に推定しました(図2)。

[画像]図2 製造拠点推定の方法
図2 製造拠点推定の方法

  日立グループ内の複数製品におけるサプライヤー群に対して評価したところ、85%を超える推定精度を達成しました*8。今後、例えば地震発生時にゆれが大きいと予想される場所や、台風およびそれに伴う河川氾濫の予測情報、パンデミックや地政学のニュースなどと重ね合わせることで、膨大な調達先製造拠点の中からサプライチェーンリスクのある拠点を抽出し、在庫の積み増しや、代替調達先の調査を行うなど納期遅延に及ぼす影響を評価することが可能になります。

*6
製品を識別、分類、管理するために使われる一連のコードやルールのこと。これにより、製品の特定や在庫管理、販売データの分析などが容易になる。
*7
自社が構築したマネジメントシステムや、提供する製品やサービスの品質が国際的な基準をクリアしていると証明するもの。
*8
調達部門の担当者が手作業で収集した情報と、オープンデータと生成AIを用いて推定した技術を複数領域のユースケースで比較し、情報が一致した割合を平均化。生成AIによる業務サポートに現状期待される水準を上回る。

今後の展望

  今後、日立は、東京大学デジタルオブザーバトリ研究推進機構との共同研究を進め、本技術と多様なリスク情報や予兆を統合することでサプライチェーンリスクの可視化を実現します。また、行政やパートナーとともにエコシステムを形成し、サプライチェーンリスク管理システム・サービスの社会実装を推進することで企業のサプライチェーン安定化に貢献するとともに、多様な社会リスクへの対応もめざします。

日立のサプライチェーンプラットフォームについて

  日立は、社会の不確実性やESG意識の高まりに対応するため、約87,000社のお客さまに企業間取引の場を提供するクラウドサービス「TWX-21」をベースに、サプライチェーン全体のレジリエンスとアジリティを向上するプラットフォームを提供しています。

日立製作所について

  日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」という3セクターの事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。3セクターの2023年度(2024年3月期)売上収益は8兆5,643億円、2024年3月末時点で連結子会社は573社、全世界で約27万人の従業員を擁しています。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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