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日立、秋田県から河川水位や洪水を24時間連続リアルタイムで予測するシステムを受注

[画像]太平川の水位・洪水のシミュレーション画面
太平川の水位・洪水のシミュレーション画面

  株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、秋田県から河川の水位や洪水を24時間連続リアルタイムで予測するシステム(以下、本システム)を受注し、2025年春から同県において運用が開始される予定です。本システムは、河川や地形のデータに加え、最新の気象データを自動でリアルタイムに取り込み、分析することで、河川の水位と洪水を6時間先まで高精度かつ迅速に予測するものです。秋田県は本システムにて河川の水位を予測して、秋田市内の中心部を流れる洪水予報河川*1・太平川が氾濫する可能性を事前に把握し、洪水警報発表の精度を高めます。将来的には、内水・外水氾濫*2一体の洪水シミュレーションの精度を向上し、洪水予測による避難行動の支援、そして気候変動による豪雨災害の検証と対策に有効活用し、流域における治水対策をさらに推進していくことを検討します。
  本システムは、企業向けに納入実績のある株式会社日立パワーソリューションズのリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood*3」の技術を活用しています。また、同様のシステムが、青森県で「流域治水 浸水被害予測システム」として2023年4月から運用*4されています。
  日立は、流域治水対策に取り組む自治体へ本システムを広く展開することで、大規模水害による被害軽減への貢献をめざします。

*1
洪水予報河川:国民経済上、重大な損害または相当な損害を生じるおそれのある河川のうち、水位などの予測が技術的に可能な、流域面積が大きい河川
*2
内水氾濫:都市に降った雨が河川などに排水できずに発生する氾濫
外水氾濫:河川から溢れて発生する氾濫
*3
水害をシミュレーションするための(株)日立パワーソリューションズのソフトウェア。「DioVISTA」は(株)日立パワーソリューションズの日本における登録商標です。
*4
2023年5月25日発表の日立ニュースリリース「青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」を初納入、本格運用開始」

秋田県から受注した本システムの特長および付随機能

(1) 24時間連続リアルタイム予測
  河川水位データと気象データを自動でシステムに取り込み、6時間先までの洪水予測を24時間連続で計算することが可能です。太平川(牛島、太平本町)と、太平川が合流する旭川(中島)の3カ所の河川水位データと連携することで予測精度の向上を図ります。

(2)樋門*5開閉や排水機場*6の稼働変更のシミュレーション
  予測した結果に対して、樋門の開閉や排水機場の稼働をシミュレータ上で変更することで、被害軽減に向けた検討が可能です。また、自治体で検討している治水対策と、過去の水害の条件(降雨量、堤防決壊など)を併せて設定、シミュレーションすることで、治水対策の効果を検証できます。

(3)外水氾濫と内水氾濫を同時に予測でき、浸水想定区域図の作成に有効
  任意の降雨や堤防決壊の条件を設定して、外水氾濫と内水氾濫を同時に予測することが可能です。また、太平川が合流する旭川(砥沢を含む)、および旧雄物川(新城川、道川、草生津川を除く)もしくは太平川に合流する河川(猿田川、寺沢川、八田川)のバックウォーター現象*7の影響もシミュレーション可能です。

(4)河川や地形などのデータ管理が可能
  本システムで河川データや地形データなどをデジタルで設定・管理していくことで、予測精度の向上とともにデータ管理の一元化が図れます。また、更新された河川データや地形データを新たに取り込み、これまで作成した浸水想定区域図と同じ条件を設定すると、過去の検討プロセスの把握や条件変更による影響範囲のシミュレーションが可能です。

(5)浸水領域の広がりを高速に予測
  本システムの予測のリアルタイム実行には、日立の特許技術Dynamic DDM*8を適用しており、浸水領域の広がりに応じて計算領域を自動的に拡大・縮小させることで計算量を減らし、予測の高速化を実現しています。

[画像]従来方式とDynamic DDMを使った場合の計算方法の違い
従来方式とDynamic DDMを使った場合の計算方法の違い

*5
樋門:水の逆流を制御するために河川の堤防内に設けるゲート状の施設
*6
排水機場:河川や水路の流水をポンプによって河岸または堤防を横断して排水するために、河岸や堤防の付近に設けられる施設。ポンプ場とその付属施設(吐出水槽など)で構成される
*7
バックウォーター現象:大きな河川の水位が上がることで、これに合流する小さな河川の水位が上がって発生する氾濫
*8
日本特許第4761865号、米国特許7603263、中国特許PZL200610008661.4、令和元年度 関東地方発明表彰 発明奨励賞

背景

  近年、日本では気候変動などの影響から水害が激甚化・頻発化する傾向にあります。2021年11月には、インフラ整備の加速化・充実、治水計画の見直し、流域全体を俯瞰した水害対策などの治水対策強化を目的に、「流域治水関連法」が全面施行されました。このため、自治体にはハード面だけでなく、データを活用し、中小河川にまで拡大した水害に関するハザードマップを作成するなど、ソフト面での対策強化が求められています。また、2024年8月には、新たな「水循環基本計画」が閣議決定されました。これからは水災害の最小化をめざす治水のみならず、水を有効活用する利水や、水でつながる豊かな環境の最大化を含めた、あらゆる関係者による総合的な水マネジメントが必要となります。
  秋田県では、流域の関係者が水害リスク情報を共有し、流域治水を計画的に推進するため、国および市町村などと連携し、2020年9月、米代川、雄物川、子吉川の3圏域で流域治水協議会を設置しました。また、2023年7月15日からの大雨により、太平川の溢水をはじめ秋田市街地の大規模浸水被害が発生したことから、雄物川下流圏域では、国、県、市などが連携し、国は雄物川の河川改修、秋田県は太平川、旭川などの河川改修、災害復旧の対策を集中的に実施するとともに、秋田市は下水道の整備や浸水対策の検討を行い、2023年7月と同規模の大雨による浸水被害を大幅に軽減する対策を実施しています。
  こうした秋田県の取り組みを加速するため、水総合プロバイダーとしてIT、OT*9、プロダクトを活用したLumada*10ソリューションを提供する日立が、山形県東根市との共同研究*11の成果や、青森県向けの実績を生かして、本システムを構築します。

*9
OT(Operational Technology):制御・運用技術
*10
  Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したシステム・サービス・テクノロジーの総称。
*11
  2022年12月19日発表の日立ニュースリリース「日立と山形県東根市、総合治水対策として、リアルタイム洪水予測と避難・緊急活動へのシミュレーション技術活用に関する共同研究で有効性を確認」

日立の「流域治水 浸水被害予測システム」に関する将来構想

  日立は今後、山形県東根市との共同研究で開発した避難・緊急活動を支援するアプリケーションを「流域治水 浸水被害予測システム」と連係させ、流域自治体関係者が浸水予測と合わせて各種施設情報を共有できるようにすることで、避難・緊急活動と「逃げ遅れゼロ」を支援します。

日立製作所について

  日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎシステムを提供する「コネクティブインダストリーズ」という3セクターの事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaシステムを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。3セクターの2023年度(2024年3月期)売上収益は8兆5,643億円、2024年3月末時点で連結子会社は573社、全世界で約27万人の従業員を擁しています。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 水・環境ビジネスユニット

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