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2023年9月11日
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科
株式会社日立製作所
東京大学のバイオアダプティブ材料データと、日立のMI向け独自AI技術の活用により、
バイオマテリアル創出の手法確立をめざす
本協創の概要図
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科 酒井崇匡教授の研究室(以下、「酒井研」)と、株式会社日立製作所(所在:東京都千代田区、執行役社長兼CEO:小島 啓二/以下、「日立」)は、日用品、医薬品など人に触れる素材において再資源化可能な完全循環型*1バイオアダプティブ材料*2の開発に、日立のマテリアルズ・インフォマティクス*3(MI)向け人工知能(AI)技術を適用する協創を開始しました。
我々の生活は、バイオアダプティブ材料など高分子材料で溢れており、その利便性と安定性、そして優れた物性から、さまざまな自然環境や、生体環境で利用されています。本協創では、酒井研が有するバイオアダプティブ材料に関するノウハウと実験データに、日立が有するMI向け独自AI技術*4を掛け合わせて、生体適合性*5情報を含むバイオ・高分子*6のデータベースを強化し、構築されたビッグデータを活用することで、バイオマテリアル創出の手法確立をめざします。
今後、酒井研は、人と地球に優しいバイオアダプティブ材料の開発を進め、環境中で速やかに分解されることや、アレルギー反応を起こさないことなどの特性を有した新しいバイオマテリアルの基礎開発を推進します。日立は本協創で培ったノウハウをLumada*7ソリューションとして提供している「材料開発ソリューション*8」へ適用することで、バイオ素材を扱うお客さまの製品の高付加価値化に貢献していきます。両者は、データ駆動によるバイオマテリアル創出に向けた産学連携を推進し、バイオアダプティブ材料を通じて人々のQoL向上と持続可能な社会の実現をめざします。
持続可能な社会の実現に向け、大量生産・大量消費・大量廃棄といったリニアエコノミーから、廃棄や汚染という概念のないサーキュラーエコノミーへ移行する取り組みが重要となっています。
現在、社会実装されている合成高分子*9では、アレルギー反応など予期せぬ生体反応を引き起こす可能性や、再生医療の足場材料*10や薬物送達技術*11などの最先端医療分野で既存の合成高分子の機能不足による社会実装の妨げが課題となっています。また、化粧品開発での動物実験を禁止する国際的な流れ*12を受け、動物実験に代わる効果的な材料開発手段が模索されています。
こうした背景を受け、酒井研では、医薬品や化粧品・食品などにも利用可能な、既存材料の代わりとなる安全な*13バイオアダプティブ材料を迅速に開発するため、生体分子であるタンパク質を用いたデータ駆動による計画的な材料創出が必要でした。
しかし、バイオアダプティブ材料をはじめとする合成高分子は、従来のMI技術では分析に必要なバイオ・高分子のデータが揃っておらず、材料開発の手法が確立されていませんでした。
そこで、酒井研と日立は、酒井研が有するバイオアダプティブ材料に関するノウハウと実験データに、日立が有するMI向け独自AI技術とを掛け合わせて、データ駆動によるバイオマテリアル創出の手法確立に向けた協創を開始することとなりました。なお、本協創は、日立が掲げるデジタル活用によるサーキュラーエコノミー実現の中で「バイオコンバージョン*14」に資する取り組みとなります。
本協創では、酒井研にてこれまでに合成・評価したアミノ酸の重合体であるタンパク質の実験データに対し、日立のMI向け独自AI技術を用いて分析することにより、高性能なタンパク質を材料用途にあわせて設計・開発することをめざします。酒井研では、数あるタンパク質の中から、有望な約20,000種のタンパク質を選定し、生体適合性を予想するうえで重要な水溶性などの指標について、実験や理論計算(分子動力学シミュレーション*15)を進めてきました。この過程で蓄積してきたデータにオミクス情報*16を付け加え、生体適合性情報を含むバイオ・高分子のデータベースを構築することで、ビッグデータ駆動によるバイオアダプティブ材料開発を推進していきます。
日立は、主に化学分野において、実験データに基づいて高性能材料の化学式を分析・発案するMI向け独自AIの開発に取り組んできました。本協創では、日立は化学式のかわりにアミノ酸配列を分析するMI向け独自AIを提供することで、実験で性能評価するに値する最適な実験候補の材料を提示します。酒井研は、提示された情報に基づいて実験計画を更新し、実験を進めることでバイオアダプティブ材料の開発を加速します。これらの取り組みを通じ、両者はデータ駆動に基づくバイオマテリアル開発の手法確立をめざします。
東京大学大学院工学系研究科は、1886年に帝国大学工科大学として誕生して以来、時代とともに変化する社会の要請に応えるため、常にダイナミックに変化してきました。工学系研究科は18 専攻、13附属施設で構成されており、科学技術の未来を支える工学の教育とともに、研究面では、基礎的な研究を重視すると同時に、既成の工学の枠組みを取り払い、新しい地平を開拓する取り組みを積極的に推進しています。
酒井研究室では、高分子科学を基盤として材料の構造・物性評価を行い、それに基づいて新・高機能を有する次世代バイオマテリアルの創成をめざしています。
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2022年度(2023年3月期)の連結売上収益は10兆8,811億円、2023年3月末時点で連結子会社は696社、全世界で約32万人の従業員を擁しています。
化学生命工学専攻 教授 酒井 崇匡(さかい たかまさ)
TEL : 03-5841-6947
公共システム営業統括本部 カスタマー・リレーションズセンタ [担当:猿田]
〒140-8512 東京都品川区南大井六丁目23番1号 日立大森ビル
以上