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2023年5月25日
自治体による、より高精度かつ充実した水害リスク情報の作成と有効な対策の検討に貢献
2022年8月大雨時のデータを基にした「流域治水 浸水被害予測システム」による中村川の浸水シミュレーション
株式会社日立製作所(以下、日立)は、青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」(以下、本システム)を納入し、2023年4月から同県において本格運用が開始されました。なお、日立として本システムの受注・納入は今回が初めてです。
本システムは、国土地理院の地図データに加え、都道府県の保有する河川データやLPデータ*1を取り込み、高精度かつ高速に浸水のシミュレーションが可能です。さらに、シミュレーション結果を活用した避難・緊急活動支援などの機能の拡張性も有しており、国・自治体におけるハード・ソフト両面の流域治水対策に有効です。
2022年8月の大雨により中村川流域で甚大な浸水被害が発生した青森県では、本システムを国や市町村と連携して取り組む県内の流域治水プロジェクト*2で活用し、より効果的な対策につなげていく予定です。具体的には、より高精度な水害リスクマップ(浸水頻度図)、および内水ハザードマップ*3を新たに作成することで、内水・外水*4の両方に対応した水害リスク情報の整備を図ります。
今後、日立は、流域治水対策に取り組む自治体へ本システムを広く展開することで、大規模水害による被害軽減への貢献をめざします。
近年、日本では気候変動などの影響から水害が激甚化・頻発化する傾向にあり、2021年11月には、インフラ整備の加速化・充実、治水計画の見直し、流域全体を俯瞰した水害対策などの治水対策強化を目的に、「流域治水関連法」が全面施行されました。このため、自治体にはハード面だけでなく、データなどを活用するソフト面(中小河川にまで拡大した水害に関するハザードマップの作成など)の対策強化が求められています。
青森県では、2021年度までに県内4圏域*5において流域治水協議会を設置し、「流域治水プロジェクト」に取り組んでいます。また、2022年8月大雨により青森県内の中村川流域で甚大な浸水被害が発生したことを受け、「中村川流域治水緊急対策推進会議」を設置し、今後10年間における流域治水の緊急対策を策定しました。特に、中村川では外水のみならず、内水による被害も顕著であったことから、水害リスク情報の充実化が求められました。
こうした青森県の取り組みを加速するため、水総合プロバイダーとして長年培ってきたプロダクト、OT*6、ITとLumada*7ソリューションを提供する日立は、山形県東根市との共同研究*8の成果を活用し、青森県向けに本システムを構築することになりました。
本システムは、降雨量や堤防決壊、田んぼダム*9の有無などの条件を設定することで、浸水区域・時間などをシミュレーションし、地図上に表示します。各種条件は地図上で入力できるなど、高い操作性を有しています。また、自治体で検討している治水対策と、過去の水害の条件(降雨量、堤防決壊など)を併せて設定、シミュレーションすることで、治水対策の効果を検証することが可能です。
なお、シミュレーションには、企業向けに納入実績のある株式会社日立パワーソリューションズのリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood*10」(以下、DioVISTA)の技術を活用しています。
本システムの主な特長は以下の通りです。
本システムにおいて河川データや地形データなどをデジタルで設定・管理していくことで、シミュレーション精度の向上とともにデータ管理の一元化が図れます。また、これまで作成した浸水想定区域図と同じ条件を取込・設定すると、過去の検討プロセスの把握や条件変更による影響範囲のシミュレーションが可能です。
任意の降雨や堤防決壊の条件を設定して、河川氾濫と内水氾濫を同時にシミュレーションすることが可能です。また、一級河川の水位が上がることで、これに合流する二級河川の水位が上がり発生する氾濫(バックウォーター現象)もシミュレーションすることが可能です。
田んぼダムの取り組みは日本各地で行われており、青森県でも中村川の緊急治水対策の一つになっています。本システムでは地図上で遊水地や田んぼダムの適用範囲を指定してシミュレーションすることで、河川が氾濫した場合のこれらの治水効果を事前に検証できます。
中村川では、緊急治水対策における内水被害軽減の一つとして、雨水排水施設の整備に取り組んでいます。本システムでは、排水機場の条件と河川の水位を併せてシミュレーション設定することで、樋門開閉のタイミングを検討することが可能です。
本システムのシミュレーションのリアルタイム実行には、日立の特許技術Dynamic DDM*13が適用されており、浸水領域の広がりに応じて計算領域を自動的に拡大・縮小させることで計算量を減らし、シミュレーションの高速化を実現しています。
従来方式とDynamic DDMを使った場合の計算方法の違い
今後、本システムは、山形県東根市との共同研究で開発した避難アプリと連携が可能なインターフェースを使い、各種施設情報を浸水予測と合わせて流域自治体関係者で共有することにより、避難・緊急活動を支援し、「逃げ遅れゼロ」をめざします。
本システムは、青森県職員自身が自ら操作・活用できることや、外水氾濫と内水氾濫を一体的にシミュレーションできることが採用のポイントでした。実際に、令和4年8月に甚大な被害を受けた中村川(鰺ヶ沢町)において外水・内水による氾濫を再現し、流域の関係者で組織された「中村川流域治水緊急対策推進会議」の場で共有することで、緊急対策を検討するにあたっての重要な情報の一つとして活用することができました。
今後は、青森県の「流域治水」を推進していくために、中村川だけでなく県内の他の河川においても本システムでリスクマップなどを作成することで、関係者や地域住民の合意形成に活用していきたいと考えております。
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2022年度(2023年3月期)の連結売上収益は10兆8,811億円、2023年3月末時点で連結子会社は696社、全世界で約32万人の従業員を擁しています。
株式会社日立製作所 水・環境ビジネスユニット
以上