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2022年7月20日
ジェノバで都市のマルチモーダル交通を実現し、ハンズフリー決済やデジタルツインを提供、世界初
ジェノバ市のGoGoGeアプリ
株式会社日立製作所(以下、日立)の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レールは本日、スマートモビリティの統合ソリューション「Lumada Intelligent Mobility Management」を用いて、イタリア・ジェノバで公共交通とカーシェアなどの民営交通といった都市全体の交通網をデジタルで接続したことを発表します。これは都市内移動の方法に変革を起こすきっかけとなります。Lumada Intelligent Mobility Managementでは、ブルートゥースセンサーを使用したモバイルアプリ360Passで、バス、電車、ケーブルカーなどを接続し、都市内のあらゆる公共交通に乗客が「ハンズフリー」でアクセスすることを可能にします。電気自動車のレンタル、駐車場料金の支払い、電動スクーター(二輪車の一種)の位置の確認も360Passアプリ上で行えます。実際の交通機関の利用状況に基づいて、1日の終わりに一番安い価格で利用料金が自動で算出される仕組みです。この他、都市の交通網全体の「デジタルツイン」を作成し、人流・運行データをリアルタイムで把握できるようにする交通事業者向けのソリューションもあります。
これは、世界中の他の都市にも展開できる技術です。イタリア・ジェノバでの実証試験では、バス(663台)、バス停(2,500カ所)、地下鉄(年間利用者数1,500万人)、ケーブルカー(2基)、登山鉄道(1路線)、公共エレベーター(10基)、郊外バス(2路線、全長50km)をデジタルで接続しました。また、利用者は携帯のボタンを押すだけで、電気自動車のレンタルや、駐車場料金の支払い、電動スクーターがどこにあるかの確認などもできます。
世界初の試みの一部であるスマートチケッティングアプリ「360Pass」の利用により、乗客はクレジットカードやチケットを財布から取り出す必要なく、ハンズフリーで交通機関を利用できるようになります。ICカードやQRコードをリーダーにかざしたり、異なる交通機関ごとにいくつものアプリを携帯にダウンロードしたりする必要もありません。
360Passモバイルアプリは、ブルートゥースセンサーと接続し、乗客がいつ乗車して/どこまで移動し/いつ下車したのかを記録します。360Passアプリの利用者には、1日が終わった時点で、複数の交通機関の合計費用が最も安い価格で請求されます。
360Passアプリは、公共交通での移動のためのカスタマイズ情報を乗客に提供します。例えば、複数の交通手段を乗り継ぐ場合の最も速くて便利な移動経路の選択肢や、リアルタイムの交通情報を提供できます。
また、360Passアプリを通じて、乗客はどのバスが混雑しているかを確認でき、より混雑していない他の交通手段を選ぶことも可能になります。この機能は、新型コロナウイルス感染症流行後の混雑への不安を和らげることに役立ちます。最近の研究でこの手の不安解消が乗客満足度の第二位の決定要素1)であることが分かっています。
ジェノバ市および同市の公共交通事業者であるAzienda Mobilità e Trasporti SpAとのパートナーシップのもと、360Passは現在ジェノバで「GoGoGe」という名称で提供されています。この技術は、公共交通および民間のシェアードモビリティ(電気自動車や、電動スクーターのシェアリングサービスなど)の利用を促進するためのジェノバ市の取り組みの一環です。この革新的なプロジェクトは、世界中の乗客や公共交通当局が直面している「ラストワンマイル問題」に対して、より簡単にラストワンマイルの移動のための交通手段を見つけられるようにするソリューションを提供することをめざしています。
ジェノバは、人口約60万人の都市で、渋滞、温室効果ガス・排気ガス、サービスの質など全世界共通の交通課題に直面しています。同市のリーダーシップの目標は、都市全域での持続可能な大量輸送の利用の実現に向けて、段階的な変化を促すことです。
この技術は、自家用車への依存を減らす選択肢を提供します。地方自治体の渋滞緩和や温室効果ガス・排気ガス削減といった目標の達成を支援するとともに、コストや地域全体の交通計画を最適化します。マルチモーダルな公共交通とシェアードモビリティを最適化することで、都市での渋滞による時間の浪費を減らすことが可能になります。イスタンブールやロンドンのような都市では、運転手の貴重な時間が渋滞によって失われています。失われている時間は、イスタンブールでは年間平均142時間、ロンドンでは年間平均227時間に及びます2)。
Lumada Intelligent Mobility Managementの一部である「360Motion」は、交通事業者が、都市の全交通網をリアルタイムで接続し、必要なサービスやデータを適宜追加して、公共交通サービスを最適化することを可能にします。
ジェノバに張り巡らされた7,000個以上のブルートゥースセンサーによって、乗客のドア・ツー・ドアのマルチモーダル移動の状況と交通機関の運行状況の「デジタルツイン」を作成できます。これは、ジェノバでのリアルタイムの移動情報を示す電子地図とも言い表せます。このリアルタイムの地図は、サービス・運行ダイヤの最適化や、ピーク・オフピークといった移動需要の変化により柔軟に対応できるシステムの構築などを可能にする交通事業者向けの強力なツールです。また、公共交通機関の利用の妨げとなっている要因(渋滞、排気ガス、混雑、サービスの質など)を特定することが可能になります。
Lumada Intelligent Mobility Managementは、複数のソリューションを組み合わせることで、交通事業者が交通流・運行ダイヤをリアルタイムで制御できるよう支援することも可能です。交通事業者は、運行ダイヤの乱れや、大規模イベント(コンサートやスポーツ試合)開催時の平常時と異なる移動需要に、より効率的に対応できるようになります。さらに、さまざまな地域での温室効果ガス・排気ガス排出量や渋滞状況に関する情報を組み合わせることで、交通サービスの電化に最初に取りくむべき地域の選択や、電動バスや電気自動車の充電スタンドの設置場所の優先順位付けについて、交通事業者がより適切な判断をできるようにします。
「Lumada Intelligent Mobility Managementは、スマートモビリティとして世界初の試みで、世界中の都市の交通を改善することができます。乗客は初めて、ポケットから携帯を取り出すことなく、最も便利なマルチモーダルでの移動を最も安い料金で計画・利用できるようになりました。
現在、都市は、温室効果ガス・排気ガスの削減、渋滞緩和、新型コロナウイルス感染症拡大による落ち込みからの経済活動の回復のため、公共交通の利用を拡大させなければならないという課題に直面しています。ジェノバで実証されている私たちの新しい統合ソリューションは、世界中の交通事業者にユニークで強力なプラットフォームを提供します。デュッセルドルフからドバイ、イスタンブールからトロントまで、世界中のあらゆる都市で、単一のプラットフォームで全交通網を接続し、必要なソリューションを追加して、最適化できるようにすることを支援します。」
「GoGoGeはジェノバで日立の360Passアプリにつけた名前です。GoGoGeは革新的なハンズフリー技術で乗客に素晴らしい移動を提供します。私たちは、乗客による全ての交通機関の利用を追跡して、ドア・ツー・ドアの移動の詳細を明らかにできます。日立の技術を導入することによって、AMTとジェノバ市はスマートモビリティにおけるリーダーとなり、世界の都市での移動を大きく変える革新的技術の実験を行う機会を得ました。」
交通とテクノロジーにおけるグローバルリーダーである日立のスマートモビリティのビジョンは、さまざまな種類の公共交通横断で、移動のあらゆる部分をデジタル化し、最適化することです。Lumada Intelligent Mobility Managementは、日立レールのスマートモビリティに関する全体的なビジョンを包含し、3つの重要な分野にわたるソリューションを備えています。それは、スマートチケッティング、フローマネジメント、eモビリティ(電動モビリティ)ソリューションの3分野です。日立は新幹線を含む鉄道車両や鉄道インフラを世界中で提供する企業として知られていますが、重要な成長分野として交通システムのデジタル化に注目しています。
Lumada Intelligent Mobility Managementは都市、交通事業者、乗客向けのスマートモビリティ分野での日立の新しい統合ソリューションです。
この統合ソリューションは、よりスマートなモビリティの実現に向けた、日立レールの360°ビジョン(全方位ビジョン)を象徴しており、以下の3つの重要な分野にわたるソリューションを包含しています。
この一部である「360Motion」プラットフォームはリアルタイムの分析ツールで、都市の全交通網のデジタルツインを作成します。交通事業者は、あらゆる組み合わせの交通サービスを接続し、必要な交通サービスを適宜追加して、最適化することが可能です。360Motionは柔軟性の高いプラットフォームで、他社の既存の技術や日立グループの他の幅広いソリューションと組み合わせることもできます。
都市、交通事業者、乗客のより持続可能な交通への転換の加速を、日立レールは「アズ・ア・サービス」型のソリューションの提供によって容易にすることをめざしています。
日立レールは新しく、乗客向けモバイルアプリ「360Pass」の提供を開始します。Lumada Intelligent Mobility Managementのスマートチケッティングのソリューションの一部です。iOS・アンドロイドのスマートフォンで使用できます。今後、地元の交通当局や交通事業者と協力して、本アプリを都市ごとに展開していく予定です。なお、ジェノバでは既に利用可能です。
ブルートゥースセンサーは取り付けが容易で、約5年持つ電池を用いています。ジェノバでは、センサーとの通信インフラの整備には6カ月もかからず、完全に運用可能状態になりました。複雑多様な公共交通が混在し、かつ地理条件も厳しい都市であるジェノバ(人口密度が高く、坂が多く、連続する湾岸や谷間に築かれた都市)での実証に成功したことで、日立レールは、この技術は世界中のどの都市にも適用可能であると確信しています。
電子チケッティングやQRコードといった従来のモバイルチケッティング機能に加えて、360Passは、革新的なハンズフリーでの運賃の支払いを可能にします。「ビーイン・ビーアウト(Bein Beout)」技術で、複数の交通機関におけるチケットレスでの移動を実現します。
この技術は、鉄道、バス、停留所や駅の駐車場など交通の要所に張りめぐらされたセンサー網を使用しています。センサーは乗客向けアプリ360Passと、ブルートゥースで接続しています。
乗客が移動を開始すると、360Passアプリは移動経路上に設置された各センサーとつながり、複数の交通機関を利用した移動の全行程を記録します。その記録を基に、一日の終わりの時点での最も安い料金を算出し、翌日の午前3時に料金請求のレシートを発行します。
また、360Passアプリは、各乗客の移動の状況に応じて、よりカスタマイズされた情報を提供します。例えば、目的地に到達するまでに通過するであろう次駅・次々駅などの混雑予報や、目的地接近アラート通知などがあります。
乗客へのシームレスな移動の体験に加えて、この技術は交通事業者にも大きな利益をもたらします。乗客のマルチモーダルな移動の全容に関するより詳細なデータで、交通事業者の運行ダイヤの最適化を支援します。また、駅の改札口や車両乗降口でこの技術を使用することで、改札口・乗降口付近の長い行列やボトルネックを解消できる可能性があります。
日立レールのジェノバでの新しい試みと、数十年にわたるこれまでのチケッティングでの経験は、都市全体もしくは地域全体の複数の交通機関を接続する技術が実現可能であることを示しています。
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。金融・官公庁・自治体・通信向けITサービスやお客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通、水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」と、自動車・二輪車の分野で先進技術を提供する「オートモティブシステム」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。グリーン、デジタル、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は10兆2,646億円、2022年3月末時点で連結子会社は853社、全世界で約37万人の従業員を擁しています。
以上