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2022年1月21日
国立大学法人 神戸大学
株式会社日立製作所
神戸市における保健・介護政策づくりでの活用を期待
国立大学法人神戸大学(以下、神戸大学)大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座 AI・デジタルヘルス科学分野の榑林陽一特命教授らと、株式会社日立製作所(以下、日立)は、神戸市が構築したヘルスケアデータ連携システム*1を活用した取り組みとして、神戸市民の健康・医療情報を対象に、AI(人工知能)技術による要介護リスクの解析研究を行います。
本研究は神戸大学が主体となり、日立が開発した独自の説明可能なAI技術を活用することで要介護リスク予測のブラックボックス化(解析根拠が不明)の解消をめざし、神戸市民38万人の健康・医療ビッグデータから、住民一人ひとりに対する要介護リスクの予測及び予測根拠を提示する方法を開発します。研究成果の要介護リスク個別予測モデルは神戸大学から神戸市に提供され、神戸市の保健・介護政策づくりに活用されることが期待されます。
超高齢社会を迎え、市町村が中心となって高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施を推進するための体制整備が進められています。このたび、神戸市保健事業にかかる研究倫理委員会*2承認のもと、平成27年度から令和元年度までの計5年間の介護保険被保険者の医療・介護データなどの連結データセット(約3000項目/人)が、神戸市より神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座 AI・デジタルヘルス科学分野に提供されました。
データ提供は令和6年度まで継続し、最終的に計10年間の連結データセットが提供される予定です。データは、神戸市において個人や住所が特定されることのないよう匿名化され、神戸大学に提供されます。さらに、神戸大学において希少疾患などから個人が特定されることがないよう、同じ特徴を持つ人が10人以下のデータ項目を削除するという再匿名化を実施します。
神戸大学と日立は共同研究契約のもと、日立の独自AI技術を用いて要介護リスク個別予測モデルを開発します。要介護リスクは個人ごとに異なるため、最先端の説明可能なAI技術を適用することで、精度の高い予測モデルの作成が期待できるほか、要介護のリスク要因の解析根拠を把握することができます。本研究は、政府が進めるデータヘルス*3政策に貢献する、社会的意義の高い先進的な研究です。
研究の解析対象は、65才以上の神戸市民38万人の医療情報、介護情報、健診情報などを連結した継時的データセットであり、これをAIの学習データとして用いて、一人ひとりに対する要介護リスクを予測するモデルを研究します。継時的なビッグデータ解析により、個人ごとに異なる介護リスク要因の特定に向けて予測性能を検証する研究が、政令指定都市規模の大規模なコホート*4で実施されることは、本邦初*5となります。また、開発された要介護リスク個別予測モデルは神戸市の保健・介護政策づくりに活用されることが期待されます。
本研究の成果は、神戸市をはじめ全国の自治体において保健事業と介護予防の一体的実施に従事する専門職員の作業の負荷軽減や、適切なリスク個別予測による介護予防事業の質の向上につながることが期待できます。
今回用いる日立が開発した説明可能なAI技術は、デジタルイノベーションを加速するLumada(ルマーダ)*6で展開する技術の1つです。本AI技術は、高精度な予測モデルを構築するための深層学習(ディープラーニング)*7において、従来は困難だった「予測に寄与する要因の抽出」を行うことができるとともに、特許取得済みの日立独自の「根拠データ管理技術」*8により、予測要因を生成した根拠データまで遡ることができるため、高い予測精度とその根拠の説明性を両立することが可能です。既に医療、創薬分野において実績があり*9、価値ある製品・サービスの開発期間の短縮などに貢献しています。
本研究では、自治体が持つ膨大な健康・医療ビッグデータに日立のAI技術を適用し、要介護リスク個別予測モデルの作成に取り組みます。本研究を通じ、日立は社会保障費増大の抑制に貢献するとともに、人々のQuality of Life(QoL)向上に寄与することをめざします。
代表研究者
分担研究者
今後、本研究成果をもとに、神戸市においてAIを活用して開発した要介護リスク個別予測モデルを用いた要介護に関する行政政策が行われ、より根拠ある情報をもとに多くの高齢者の方々への迅速なサービス提供に寄与します。今回のように大規模かつ長期にわたる自治体の健康・医療データが、大学主体の産学連携で行う要介護リスク解析研究において、提供されたケースはなく、日本で初めての取り組みです。同様のモデルが今後、他の市町村においても展開されることにより、地域の健康寿命延伸に大きく貢献することが期待できます。
現代社会が直面する様々な健康・医療上の課題を最新情報科学技術の活用により、解決するため健康や暮らし情報などのビッグデータを格納するPHR(Personal Health Record)基盤を整備し、人工知能(AI)やデジタル関連技術を活用して新たな個別予防・先制技術の開発や医薬品開発手法などの実証を行っています。本研究を含め当分野が行う研究事業の資金の一部を兵庫県が負担しています。
日立は、データとテクノロジーで社会インフラを革新する社会イノベーション事業を通じて、人々が幸せで豊かに暮らすことができる持続可能な社会の実現に貢献します。「環境(地球環境の保全)」 「レジリエンス(企業の事業継続性や社会インフラの強靭さ)」 「安心・安全(一人ひとりの健康で快適な生活)」に注力しています。IT・エネルギー・インダストリー・モビリティ・ライフ・オートモティブシステムの6分野で、OT、ITおよびプロダクトを活用するLumadaソリューションを提供し、お客さまや社会の課題を解決します。2020年度(2021年3月期)の連結売上収益は8兆7,291億円、2021年3月末時点で連結子会社は871社、全世界で約35万人の従業員を擁しています。
AI・デジタルヘルス科学分野 [担当:内村]
TEL : 078-304-6034
カスタマ・リレーションズセンタ [担当: 森下]
〒140-8512 東京都品川区南大井六丁目23番1号 日立大森ビル
以上