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企業情報ニュースリリース

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2021年7月8日
株式会社日立製作所
株式会社三井住友銀行
Polskie Sieci Elektroenergetyczne S.A
ENERGA-OPERATOR S.A.
Energa OZE S.A.

ポーランドにおけるスマートグリッド実証事業の完了

系統安定化システムと蓄電池システムの本格運用に向けた有効性を確認

  株式会社日立製作所(以下、日立)、株式会社三井住友銀行(以下、三井住友銀行)、Polskie Sieci Elektroenergetyczne S.A(以下、ポーランド・パワーグリッド社)、ENERGA-OPERATOR S.A. (以下、エネルガ・オペレータ社)、およびEnerga OZE S.A. (以下、エネルガ・リニューアブルエナジー社)は、このたび、昭和電工マテリアルズ株式会社(以下、昭和電工マテリアルズ)と推進していた、ポーランド共和国(以下、ポーランド)におけるスマートグリッド実証事業*1(以下、本実証事業)を、6月30日に完了しました。ポーランドの再生可能エネルギー導入拡大に向け、2020年9月から段階的に系統安定化システムとハイブリッド蓄電池システムの実運転がそれぞれ開始されており、両システムは今後も引き続きポーランド国内の送電系統の高度化に向けて活用される予定です。

  本実証事業は、ポーランドにおける再生可能エネルギー比率の引き上げに向けた風力発電の大量導入のため課題となる送電系統の設備の更新や増強、ならびに容量不足の解消を目的としています。
  2017年3月に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)とポーランド気候環境省(Ministry of Climate and Environment、旧エネルギー省)との間で、ポーランドにおける再生可能エネルギーの導入拡大に向けた「スマートグリッド実証事業」に関する基本協定書(MOU)が締結*2されました。当該MOUの下、NEDOの委託先である日立と三井住友銀行、そして昭和電工マテリアルズは、ポーランド唯一の国営送電会社であるポーランド・パワーグリッド社とポーランド北西部の配電会社であるエネルガ・オペレータ社、ポーランド北西部の発電会社であるエネルガ・リニューアブルエナジー社の3社と協力し、系統安定化システムと、ポーランド北部グダニスクのビストラ発電所に設置されるハイブリッド蓄電池システムの技術検証を開始しました。さらに、日立と三井住友銀行、そして昭和電工マテリアルズは、両システムの事業化に向けたビジネスモデルと、その普及の可能性やファイナンススキームの検討を共同で推進してきました。

  日立は、ポーランド・パワーグリッド社に納めた系統安定化システムの効果検証を進め、実証運転を完了し、実運用を2020年9月30日に開始しました。また、日立と昭和電工マテリアルズは、エネルガ・リニューアブルエナジー社のビストラ風力発電所に納めたハイブリッド蓄電池システムの効果検証を進め、実運用を2021年4月初旬に開始しました。
  系統安定化システムについては、ポーランドの北部電力系統を実証範囲として、自然災害などに起因した系統事故発生時における送電系統への負荷解消に向けた実証を行いました。具体的には、リアルタイムの系統状況をもとに、系統事故発生を想定したシミュレーションによる最適な対策の立案と、系統事故発生時における風力発電の自動抑制など、制御方法の検証を行いました。同時に、系統事故時に備えて確保している送電容量の余力を、通常時に有効に活用することで再生可能エネルギーの接続可能量を引き上げる検証も実施しました。
  ハイブリッド蓄電池システムについては、ポーランド北部グダニスクのビストラ発電所に設置し、風力発電による発電量の短期的な変動に備えた送電容量の確保や、需給バランスを踏まえた送電容量の調整について検証を行いました。
  また、技術検証と並行して、三井住友銀行は日立と昭和電工マテリアルズと共同で、事業化に向けたビジネスモデル、ファイナンススキームの検討を実施しました。NEDOの委託を受けて開発された両システムは、本実証事業を通じてポーランド側ともその有効性と事業性を確認したことで目的を達成し、実証終了に至りました。

  本実証事業にて用いられた系統安定化システムとハイブリッド蓄電池システムは、引き続きポーランド側で活用される予定です。現在、ポーランドでの両システムの実運用が始まっており、日立と三井住友銀行、そして昭和電工マテリアルズは、本実証事業で得られたノウハウを通じて、事業の支援ならびにポーランドの送電系統の高度化に貢献していきます。

*1
スマートグリッド実証事業
案件名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/ポーランド共和国におけるスマートグリッド実証事業
事業期間:2016年度〜2021年度
*2
基本協定書(MOU)を締結
参考:NEDOニュースリリース 2017年3月17日「ポーランドで再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証事業を開始」

本発表に関するポーランド・パワーグリッド社からのコメント

ポーランド・パワーグリッド社 CEO エリック・クロスオキシー 氏

  エネルギーミックスにおける風力発電や太陽光発電の増加は送電運用者にとっての課題であり、私たちは送電系統の安全性向上に寄与するソリューションを探求し続けていきます。本実証事業で開発した系統安定化システムとハイブリッド蓄電池システムは、風力発電が増加する環境において、送電系統の運用向上に寄与するものです。この理由で、私たちが本実証事業に参加できたこと、高度な系統運用技術を持つ系統安定化システムを欧州で初めて導入することができたことに満足しています。

本発表に関するエネルガ・リニューアブルエナジー社からのコメント

エネルガ・リニューアブルエナジー社 CEO ピオトラ・メイラー 氏

  ポーランドにおける再生可能エネルギー導入を牽引するエネルガグループは、再生可能エネルギーの増加に伴う技術的課題と電力品質および信頼性向上の必要性を指摘してきました。私たちは、電力貯蔵を目的とした現代的なインフラ構築をする中で、それら課題の解決を達成したいと考えています。エネルガグループは、本実証事業に積極的に参画したことで、世界最高峰レベルの技術的ナレッジを手に入れるとともに、他に例をみないコンピテンスを取得するに至りました。本実証事業における蓄電池の検証により、私たちはこうした技術の経験を積み、さらなる「green」な将来性を見出すことができました。これはポーランドの電力および産業分野にとって有益なものとなるでしょう。

本実証事業における系統安定化システムとハイブリッド蓄電池システムについて

1. 系統安定化システム

  本実証事業で検証した系統安定化システムは、Ras EngineとRas Agentという2つのユニットから構成され、ポーランド・パワーグリッド社の施設に導入されました。継続的な運用を保証するため、システムの重要な要素は全て冗長性をもたせた構成になっています。
系統安定化システムは、ポーランド・パワーグリッド社の電力系統監視制御システムから送られるリアルタイムのデータに基づき、周期的な分析を行い、風力発電所の発電抑制を最適に行うことで、電力系統における過負荷を軽減します。これにより、予防的な発電抑制を減らします。

2. ハイブリッド蓄電池システム

  本実証事業においては、ハイブリッド蓄電池システムをビストラ風力発電所に設置し、同発電所から送電される電力系統に接続しました。高出力リチウムイオン電池(1MW-0.47MWh)と大容量鉛蓄電池(5MW-26.9MWh)および2種類の蓄電池をハイブリッド制御する監視制御装置(BESS-DCS[Distribution Control System])とパワーコンディショナー(6MW)(PCS[Power Conditioning System])から構成され、高性能と低コストを両立させた、ポーランド最大規模の蓄電池システムとなります。

3. 系統安定化システムとハイブリッド蓄電池の機能

  系統安定化システムとハイブリッド蓄電池システムは、以下の機能により、系統運用を最適化し、事故時の過負荷を軽減すると同時に系統の周波数調整をサポートします。
(1)中圧または高圧の電力系統に接続する風力発電所の発電を制限し、220kV、440kVの送電網、110kVの配電網の過負荷の軽減
(2)送電系統運用者に対する事故時の最適な対応策の示唆
(3)風力発電の短周期変動緩和
(4)周波数制御用予備力の提供
(5)需給バランス調整用予備力の提供
(6)電力需要シフト対応

実証事業の実施体制

(1) 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じてイノベーションを創出する、国立研究開発法人。ポーランド気候省と締結した「スマートグリッド実証事業」に関する基本協定書(MOU)に基づき、実証事業の推進を担う。

(2) ポーランド気候環境省(旧エネルギー省)

NEDOと締結した「スマートグリッド実証事業」に関する基本協定書(MOU)に基づき、本実証事業を支援。

(3) ポーランド・パワーグリッド社

ポーランドの送電運用者。プロジェクトリーダーとして、様々なコーディネートを担当。実運用における系統安定化システムの所有者かつ使用者となる。

(4) エネルガ・オペレータ社

ポーランド北部の配電運用者。系統安定化システムによる、エネルガ・オペレータ社管轄の110kV配電系統に接続した風力発電所の発電抑制の検証に参画。

(5) エネルガ・リニューアブルエナジー社

ポーランド北部の発電事業者。ハイブリッド蓄電池システムが接続するビストラ風力発電所の所有者。蓄電池システムの施設の建設およびシステムの試験、試運転を担当。実運用における蓄電池システムの所有者となる。

(6) 日立製作所、昭和電工マテリアルズ

系統安定化システムおよびハイブリッド蓄電池システムの設計、製造、据付、試験を担当。

(7) 三井住友銀行

系統安定化システムおよびハイブリッド蓄電池システムの、ビジネスモデルおよび普及展開をめざしたファイナンススキームの検討を担当。グローバルな金融機関として、三井住友銀行は、実証参画企業と共に、持続可能な社会の発展に貢献する。

以上

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