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2021年3月23日
テンプレートやAI精度の劣化を防ぐ独自機能などにより、
高い信頼性が求められるエンタープライズ領域でのAIシステムの開発・運用を効率化
Justware AIアプリケーションフレームワークを使った開発イメージ
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、企業の基幹システムや社会インフラシステムなど、ミッションクリティカルで高い安定性・信頼性が求められるエンタープライズシステムへのAIの普及を加速するため、新たにAI専用のフレームワークを開発し、4月1日より、「Justware AIアプリケーションフレームワーク」として販売を開始します。
本フレームワークは、日立がこれまで幅広い業種で手がけてきたAI導入案件でのノウハウや技術を標準化し、汎用テンプレートや、AIの精度劣化を防ぎ維持する機能、エンタープライズ向けの共通部品群などを取り揃え、AIを実装するアプリケーション(AIシステム)の高効率な開発・運用を実現するものです。プログラミング言語の一つであるPythonに対応したAIエンジンであれば、お客さま任意のエンジンを利用することが可能です。
日立は、本フレームワークを、AIシステムの受託開発案件に適用するほか、自社で開発を行う企業にも提供し、ビジネスや社会の変革ドライバーとして重要性が高まるAIの利用促進に貢献します。
IoT技術の進展により、社会で生み出されるデータが加速度的に増加する昨今、社会インフラや基幹ビジネスに直結するエンタープライズ領域においても、日々扱う膨大なデータから、新しい価値や変革を創出するため、その手段として、AIの活用ニーズが急速に高まっています。
一方、エンタープライズシステムにAIを導入するためには、AIの特性を考慮しながらミッションクリティカルな作り込みや運用設計が必要であるため、開発・運用には時間や手間、コストを要するといった課題があります。たとえば、開発においては、PoCのパイロットシステムでAIの効果を見定めた上で本番導入するという2段階開発となるケースが多く、また、本格導入にあたっては、PoCの成果物に、稼働時の安定性や信頼性を確保する機能や、既存システムとのスムーズなデータ連携を可能にする仕組みが必要となり、開発期間が長期化する傾向にあります。さらに、稼働後も、データ分布の変化や想定外のデータの出現により、学習・設計時点の想定と異なる結果を示す可能性があるため、AIの精度を維持する運用設計が求められます。
日立は、これまで、社会イノベーションの中核ドライバーとしてLumada*1事業を推進する中で、金融機関や公共・社会インフラ、製造、ヘルスケアなど幅広い分野で数百件を超える案件において、AIを用いた課題解決に取り組んできました。昨今では、2020年1月に「AI導入・運用支援サービス」を提供開始*2し、2020年4月にはデータサイエンティストのトップ人財を結集した専任組織「Lumada Data Science Lab.」を設立*3するなど、AIに関する技術やノウハウを成熟させてきました。
今回販売を開始するフレームワークは、これらのAIに関する日立の開発・運用ノウハウを結集したものであり、高度な知見と専門性が必要とされるエンタープライズ領域において、高効率かつ高品質なAIシステムの開発・運用を支援します。具体的には、AIのユースケースとしてニーズの高い汎用テンプレートを取り揃えたほか、稼働後におけるAIの学習・分析精度のメンテナンスを自動化する機能などを実装しています。また、ミッションクリティカルなシステムにおいて多数の導入実績のある日立アプリケーションフレームワーク「Justware」*4をベースとした、安定性・信頼性を確保するための共通部品も提供します。
なお、本フレームワークの開発方法論や品質保証は、社会イノベーション事業で培ったノウハウをもとに策定した日立の「AI倫理原則」*5に基づいています。日立は、本フレームワークを研究開発や顧客協創のフェーズから利用することで、AIに関する最新の研究成果の社会実装をさらに迅速化し、安全かつ快適でレジリエントな社会の実現を加速させます。
今後、AIシステム開発のさらなる効率化に向けて、本フレームワークをLumadaソリューションの導入を迅速化する「Lumada Solution Hub」*6に登録し、テンプレートの拡充や、より高精度な日立独自の学習エンジンを追加するなど、AIによる社会やビジネスの変革に貢献していきます。
本フレームワークでは、日立がこれまで携わってきた多種多様なAIシステムの開発ノウハウをもとに汎用化したテンプレートを用意し、AI導入までの開発期間の大幅な短縮を支援します。
今回、利用ニーズが高く、さまざまな案件に活用できるテンプレートとして、機械学習の標準的な分析モデルを利用した、「コールセンター業務量分析」、「人財マネジメント(従業員行動予測)」、「マーケティング(リピーター予測)」の3つのテンプレートを用意しており、今後順次拡充する予定です。
テンプレートを利用することで、すぐにPoCとして試すことができるほか、開発者のスキルに依存した設計になりやすいPythonベースのAIシステムにおいて、同じアーキテクチャーに基づいてPoCからアプリケーション実装まで、統制の取れた開発が可能となります。また、入力データの変更やAIエンジンの差し替えなど、テンプレートは自由にカスタマイズすることができます。
AIは入力データのパターンの変化や想定外のデータにより、推論結果の精度が劣化し正しい結果とならない場合があるため、稼働後も継続的に入力データや推論結果を監視する必要があります。
本フレームワークでは、管理画面を通じてAIモデルの挙動管理などを行う「開発・運用支援基盤」を提供します。本基盤上で、入力データやAIの推論結果を常時監視し、予め設定したルールに基づいて異常なデータや結果を自動検知するため、予測精度の劣化を防止します。
また、精度が劣化した場合、管理画面から新たに再学習を行ったモデルを呼び出しすることができるほか、学習結果のバージョン管理により、過去のモデルを選択することも可能です。
社会的・経済的な影響が大きいエンタープライズシステムでは、通常、フレームワークに備わる機能を利用し、稼働時の安定性や信頼性を確保する作り込みを行いますが、AIシステムの開発言語として一般的なPythonのフレームワークには、それらに対応した機能はまだ十分に存在しません。
本フレームワークでは、「Justware」で従来提供してきたエンタープライズシステム向けJava共通部品群をベースとした、Python対応の共通部品群を提供します。具体的には、ログ出力部品や業務処理の呼び出し順序制御、トランザクション制御などエンタープライズシステム向けのAIアプリケーションに必要不可欠な機能を用意するとともに、既存システムとの連携機能も提供し、他の業務システムとAIシステムを容易につなぐことができます。
エンタープライズシステムで実績のある共通部品群を利用することで高い品質を確保し、開発の効率化を実現することが可能です。
名称 | 価格 | 提供開始日 |
---|---|---|
「Justware AIアプリケーションフレームワーク」 | 個別見積 | 6月1日 |
日立は、IT(Information Technology)、OT(Operational Technology)およびプロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業に注力しています。2019年度の連結売上収益は8兆7,672億円、2020年3月末時点の連結従業員数は約301,000人でした。日立は、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5分野でLumadaを活用したデジタルソリューションを提供することにより、お客さまの社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値向上に貢献します。
株式会社日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部
アプリケーションサービス事業部 事業企画部 [担当:藤野、南]
以上