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2021年2月18日
8方向の隣接チップ接続技術により、世界最大のマシン規模*1となる144kビットを実現
図1 9チップ接続CMOSアニーリングマシンのプロトタイプ(左:ボード、右:16kビットのCMOSアニーリングチップ)
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、上下左右斜めの8方向にCMOSアニーリングチップを隣接して接続することで、実装体積を抑えながら大規模な「組合せ最適化問題」を解く計算機技術(以下、本技術)を開発しました。本技術では、1枚のボードにCMOSアニーリングチップを縦横3列の合計9枚配置することで、世界最大のマシン規模となる、144kビットを実現しました(図1)。
本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の委託業務(PJ番号:JPNP16007、研究テーマ名「組み合わせ最適化処理に向けた革新的アニーリングマシンの研究開発」)の結果得られたものです。
2月15日から、本技術を活用したCMOSアニーリングマシンのプロトタイプを、NEDOの委託業務成果を活用して株式会社フィックスターズが運用するクラウド型計算サービス「Annealing Cloud Web」で公開しました。
今後、日立は本技術を交通渋滞解消などの大規模で複雑な社会課題解決に向けたキー技術とし、お客さまとの協創を通じてさらなる社会実装を進めて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
デジタル技術の普及によってさまざまな社会課題が解決されている一方、より大規模で複雑な問題の解決が社会から望まれています。この問題に対し、日立は膨大な計算量となる「組合せ最適化問題」をより短時間で処理することができるコンピュータとして、2015年にCMOSアニーリングマシンの試作に成功しました。CMOSアニーリングには、スケジューリング最適化などの問題に適した全結合型*2と、交通渋滞削減などの問題に適した疎結合型*3の2種類の実装方式があります。日立は2020年に全結合型の実装方式を用いて、損害保険ポートフォリオ最適化の実証実験*4や、休暇希望、勤務頻度、通勤時間などの複雑な条件に対応して数百人規模の勤務シフトを作成する「勤務シフト最適化ソリューション」*5の提供を開始しました。
多様化するお客さまのニーズに対応し、問題を解くマシンのさらなる規模拡大のために、チップを接続して拡張し、CMOSアニーリングマシンの計算能力を向上させることが課題となっています。今回、日立が疎結合型の実装方式において開発した本技術は、計算情報を隣接チップに転送するためのチップ間データ転送で、上下左右方向と、斜め方向で異なるインターフェースを採用することにより、高い転送速度と実装体積の抑制を両立しています(図2)。この技術を活用したプロトタイプでは、縦横3列に合計9枚のチップを接続して配置することで、世界最大のマシン規模となる144kビットを実現し、CMOSアニーリングマシンの動作を確認しました。本技術により、お客さまのニーズに応じてマシン規模をフレキシブルに拡大することが可能となります。
図2上下左右方向と、斜め方向で異なるインターフェースを採用したCMOSアニーリングマシンの構成
日立は、本技術を活用したCMOSアニーリングのプロトタイプを、研究開発グループの協創活動拠点「協創の森」(東京都国分寺市、中央研究所)に設置し、お客さまやパートナーとの協創に活用していきます。CMOSアニーリングの計算機技術をさらに発展させて、より大規模で複雑な社会課題の解決に貢献するとともに、人々が安心安全に暮らせる社会の実現をめざしていきます。
なお、本成果の一部は、2021年2月13日〜22日にオンラインで開催される「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)」にて発表します。
日立は、OT(Operational Technology)、IT(Information Technology)およびプロダクトを組み合わせた社会イノベーション事業に注力しています。2019年度の連結売上収益は8兆7,672億円、2020年3月末時点の連結従業員数は約301,000人でした。日立は、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5分野でLumadaを活用したデジタルソリューションを提供することにより、お客さまの社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値向上に貢献します。
株式会社日立製作所 研究開発グループ
以上