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企業情報ニュースリリース

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2021年1月12日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社日立製作所

タイ初、送電系統の電圧・無効電力オンライン最適制御システムの実証事業を開始

-電力系統運用の高度化・効率化を通じて温室効果ガス排出量削減を目指す-

  NEDOはタイのエネルギー省(MOEN)と電力系統運用の低炭素化・高度化を目的とした実証事業を行う協力合意書(LOI)を取り交わし、委託先である(株)日立製作所はタイ発電公社(EGAT)と電圧・無効電力オンライン最適制御システムの実証事業を12月から開始しました。
  本実証事業では、EGATの送電系統に、電圧・無効電力オンライン最適制御システムを導入し、電力系統運用の高度化・効率化を通じて温室効果ガス排出量の削減を目指します。また、二国間クレジット制度(JCM)活用による温室効果ガス排出削減効果の定量化を図ります。

[画像]図1 実証システムの概念と期待される効果
図1 実証システムの概念と期待される効果

1. 概要

  近年、タイでは経済発展に伴う電力需要量の伸長により、送電系統の電力損失(以下、送電ロス)の抑制が課題となっています。また、タイ国内の主要な電源が火力発電所であることから天然ガスなどの化石燃料使用量が増加しており、環境負荷の低減を考えた電源構成の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が求められています。
  そうした中、本実証事業を実施するタイ北東部では、一部の火力発電所で老朽化などの理由により2025年以降の運用停止が計画されており、今後その代替として、隣国からの電力購入や、水力および太陽光発電所などの新たな電源の新設が検討されています。これら複数手段による電力供給を実現するためには送電可能容量を増やす設備の増強が必要ですが、多額の投資を要するため計画通りには進んでいないという状況にあります。加えて、現状の系統運用では、さまざまな電源が接続した送電系統の電圧を最適化する仕組みがないため、送電ロスの抑制と安定的な電力供給の両立が難しいという課題があります。
  このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、タイのエネルギー省(MOEN)と電力系統運用の低炭素化・高度化を目的とした実証事業を実施することに合意し、協力合意書(LOI:Letter of Intent)を取り交わしました。これと同時に、本実証事業※3を実施する委託先の株式会社日立製作所(日立製作所)と、タイの発電・送電事業を担う国営電力会社であるタイ発電公社(EGAT)は、プロジェクト合意書(PA:Project Agreement)を締結しました。
  今般、NEDOは、これらの委託・協力企業とともに、EGATがタイ北東部に所有する送電系統を対象とした電圧・無効電力オンライン最適制御システム(以下、OPENVQ:Optimized Performance Enabling Network for Volt/var(Q))の実証事業を12月から開始しました。
  本実証事業では、EGATの送電系統にOPENVQを導入し、電力系統運用の高度化・効率化を通じて送電ロスを抑制することにより、温室効果ガス排出量の削減を目指します。また、併せて二国間クレジット制度(以下、JCM:Joint Crediting Mechanism)※4活用による温室効果ガス排出削減効果の定量化を図ります。

2. 実証事業の内容

  導入予定のOPENVQは、系統制御システムから電力系統の設備データや計測データを取り込み、発電計画や気象予測などの外部情報と組み合わせることで、将来の系統潮流・需給バランスを予測します。さらに電圧安定度を確保した上で、電圧・無効電力をオンラインで最適制御することにより、送電ロスの抑制をはじめとした電力系統運用の高度化・効率化を実現するシステムです。
  本実証事業では、OPENVQとEGATが運用する給電指令所のSCADA※5システムを連携させ、送電系統の計測データ、高精度需要予測技術および高信頼の最適潮流計算を用いて送電系統の電圧・無効電力を最適化することにより、送電ロスを抑制します。これにより、送電ロス抑制分に相当する火力発電所の燃料調達費および系統運用に関わるCO2排出量の削減に貢献します。また、送電系統の電圧の最適化により送電可能容量が増えることから、送電設備の増強に多額の投資を行うことなく、再生可能エネルギーから供給される電力の安定送電を実現できるため、タイ国内における再生可能エネルギーの導入拡大への貢献も期待できます。
  さらに、JCMのMRV※6方法論を開発し、実証事業におけるCO2排出削減量をクレジット化することにより、日本とタイ両国のCO2削減に貢献することを目指します。今回の実証事業においては、送電ロス抑制に伴い、年間1〜2万トン程度のCO2排出量削減※7が見込まれています。
  また、日立製作所は本実証事業の分析・評価結果をもとに、OPENVQを差別化技術とし、タイと同様のニーズが見込まれるASEAN諸国をはじめとするアジア市場を中心に、グローバル市場への水平展開を検討していきます。

【実証事業の実施体制】

委託先 株式会社日立製作所
サイト企業 タイ発電公社(Electricity Generating Authority of Thailand)
実施場所 タイ発電公社 北東地域制御所管轄範囲

[画像]図2 実施体制
図2 実施体制

【注釈】

1  OPEX
Operating Expenseの略で、本実証事業では系統運用に関わる支出を意味します。
2  CAPEX
Capital Expenditureの略で、本実証事業では系統設備や制御機器などを含む資本的支出を意味します。
3  実証事業
事業名:民間主導による低炭素技術普及促進事業/低炭素技術による市場創出促進事業/ICTを活用した送電系統の電圧・無効電力オンライン最適制御(OPENVQ)による送電系統運用の低炭素化・高度化事業(タイ)【委託事業】
事業期間:2020年度〜2022年度
4  二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)
JCMパートナーの途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度です。
5  SCADA
Supervisory Control And Data Acquisitionの略でコンピュータによる電力系統の監視と制御を行うシステムです。
6  MRV
Measurement, Reporting and Verificationの略で、本実証事業では温室効果ガス排出量の測定、報告および検証を意味します。
7  年間1〜2万トン程度のCO2排出量削減
タイ政府機関が公表するCO2排出原単位(carbon dioxide emission factor)を適用した試算値です。

お問い合わせ先

(株)日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部
エネルギーソリューション本部 電力システム設計部 担当:丹宗、土屋

以上

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