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2019年12月3日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社日立製作所
日立化成株式会社
株式会社三井住友銀行
ポーランド・パワーグリッド社
エネルガ・オペレータ社
エネルガ・リニューアブルエナジー社
―電力インフラへの投資抑制と再生可能エネルギーの導入拡大に貢献―
NEDOは、委託先である(株)日立製作所、日立化成(株)、(株)三井住友銀行と推進する、ポーランドにおける再生可能エネルギー導入拡大に向けたスマートグリッド実証事業について、ポーランド国有資産省と共同で、電力系統の安定化システムの実証運転を開始し、12月2日(現地時間)にポーランドにおいて記念式典が行われました。
実証運転では、系統事故発生時における送電線への過負荷の解消に向け、リアルタイムの系統状況をもとに、系統事故発生を想定したシミュレーションによる最適な対策の立案と、系統事故発生時における実際の制御(主に風力発電の自動抑制)方法の検証を行います。また、これにより、系統事故時に備えた送電線の余力を有効に活用することで引き上げられる再生可能エネルギーの接続可能量についても検証します。
今回の実証運転を通じて、日本の系統安定化技術を活用し、ポーランドにおける電力インフラへの投資を抑制しつつ、再生可能エネルギーの導入拡大に貢献します。
ポーランド共和国(以下、ポーランド)は、EU指令を受け、再生可能エネルギー比率を引き上げることを計画しており、特にポーランドの北部地域は、風況に恵まれることなどから風力発電の大量導入を志向しています。一方、電力インフラ設備の多くが、すでに建設から長期経過しているほか、風力発電を大量に導入するためには送電系統の余力が不足していることから、設備の更新や増強が急務となっています。このため、経済的な負担を抑えながら、風力発電をはじめとした再生可能エネルギーの大量導入にも耐えうる電力系統の安定化システムが求められています。
このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年3月に、ポーランドにおける再生可能エネルギーの導入拡大に向けた「スマートグリッド実証事業※1」に関する基本協定書(MOU)を、ポーランド国有資産省(Ministry of State Assets、旧エネルギー省)と締結※2しました。同時に、委託先として選定した株式会社日立製作所(以下、日立製作所)、日立化成株式会社(以下、日立化成)、株式会社三井住友銀行(以下、三井住友銀行)は、ポーランド唯一の国営送電会社であるPolskie Sieci Elektroenergetyczne S.A.(以下、ポーランド・パワーグリッド社)とポーランド北西部の配電会社であるENERGA-OPERATOR S.A.(以下、エネルガ・オペレータ社)、ポーランド北西部の発電会社であるEnerga OZE S.A.(以下、エネルガ・リニューアブルエナジー社)の3社と協力し、実証期間3年半の予定で、これまで現地調査、設備の設計、設備機器の製造および輸送、据え付け・試運転を進めてきました。
今般、NEDOは、これらの委託・協力企業とともに、日本独自の技術である系統安定化システム(Special Protection Scheme)の導入を完了し、ポーランド国有資産省と共同で10月1日より実証運転を開始し、12月2日(現地時間)に、ポーランド・パワーグリッド本社で、関係者出席のもと、系統安定化システム運転開始の記念式典が行われました。
本実証運転を通じて、既設の送電系統が系統事故時に備えて残している送電線の余力を有効活用することで、電力系統への再生可能エネルギー接続可能量の引き上げを可能とし、ポーランドにおける電力インフラへの設備投資を抑制しつつ、再生可能エネルギーの導入拡大に貢献していきます。
また、日立製作所と日立化成、三井住友銀行は、システムのビジネスモデルとその普及の可能性やファイナンススキームの検討を共同で推進しており、今後も継続していきます。
なお、系統事故時における制御方法は、日本でも同様に、電力広域的運営推進機関※3において「日本版コネクト&マネージ※4」として議論されています。本実証事業での取り組みは、制御対象が日本の考え方とは異なるものの、その先駆けとなるものです。
実証運転では、日立製作所がポーランド・パワーグリッド社、エネルガ・オペレータ社と協力して、系統事故の発生に起因する送電線への過負荷の解消に向け、系統安定化システムを導入し、系統事故発生を想定したシミュレーションによる最適な対策の立案と、系統事故発生時における実際の制御方法の検証を行います。常時、電力系統からのオンライン情報を基に演算を行い、系統事故が発生した場合の系統状況をシミュレーションした上で対策を立案します。また、実際の系統事故発生時には、事前のシミュレーション結果に基づいて自動制御することにより、送電線への過剰な負荷を防止します。
図1 系統事故発生時における送電線の過負荷解消 イメージ
また、これにより、既設の送電系統が系統事故時に備えて残している送電線の余力を有効活用することで、再生可能エネルギーのさらなる系統接続が可能となります。実証では、系統安定化システムを用いて引き上げられる再生可能エネルギーの接続可能量についても検証していきます。
図2 送電線の余力の活用イメージ
日立製作所、日立化成は、エネルガ・リニューアブルエナジー社と共同で、本実証事業のもう一つのテーマである、「風力発電に対応したハイブリッド蓄電池システム(Battery Energy Storage System)」の据え付け工事を進めています。据え付け完了後、高出力のリチウムイオン電池と大容量の鉛蓄電池を組み合わせたハイブリット蓄電池システムを系統安定化システムと組み合わせて使用することにより、予備力の提供や送電線への過負荷解消への活用について検証していきます。また、風力発電と蓄電池システムの組み合わせにより、風力発電の導入拡大を後押ししつつ、将来的により広い範囲で蓄電システムを活用する可能性もあわせて検証していきます。
【注釈】
(株)日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部
エネルギーソリューション本部 電力システム設計部 担当:丹宗
以上