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2018年6月26日
センサーの導入コストを抑え、機器の保守コスト削減に貢献
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、工作機械の内蔵モーターをセンサーとして活用した、消耗品の劣化検知技術を開発しました。モーターの駆動電流に基づいて、モーターの回転数やトルク電流*1などを把握し、工作機械で利用される消耗品の劣化を検知することが可能となります。モーターに既設の電流センサーを用いる場合、ソフトウェアの追加で消耗品の劣化を推定することができるため、センサーの導入コストを抑えつつ、工作機械の保守コストやダウンタイムコストの削減に貢献します。
IoTの進展に伴い、さまざまな機器から取得したデータを活用して、工場の生産性向上や業務効率を改善する取り組みへの関心が高まっています。工作機械に対しては、画像センサーや振動センサーなどを機器に取り付け、切削加工に用いるエンドミルなどの消耗品の劣化をモニタリングする方法がありますが、導入コストや保守コストが増えるという課題がありました。
これまで日立は、モーターをセンサーとして、回転子*2の位置を推定する位置センサーレス制御技術を開発*3し、家電、産業機器、鉄道などモーター組み込み機器の小型・低コスト・高信頼化に貢献してきました。今回、このセンサーレス制御技術を発展させ、モーター制御技術と多変量解析*4などの分析技術を取り入れることで、工作機械の保守コストを削減可能にする消耗品の劣化検知技術を開発しました。
開発した技術の特長は以下の通りです。
工作機械では、精密な動作をモーターにより高精度に制御するため、モーターには微小な負荷変動が生じます。この特性を利用し、モーター駆動電流から得られる回転数やトルク電流、励磁電流や回転子位置などの内部情報をソフトウエアを用いて収集し(図中(a))、工作機械の状態を推定します。
エンドミルなど消耗品の形状が劣化により変化すると、モーターにかかる負荷が変わるためにトルク電流の挙動が変化します。たとえば掘込時においては、エンドミルの摩耗により刃が滑りやすくなり、その結果、トルク電流が小さくなります。このように本技術では、摩耗に応じて変化する特徴として、位置決めのトルク電流、および掘込の回転数とトルク電流をそれぞれ抽出し(図中(b))、多変量解析を実施することで(図中(c))、高精度な劣化の検知を可能としました。
開発した技術を検証するために、工作機械である切削装置、およびサーボプレス機*5で試験を行い、モーターを制御する過程で演算される回転数、トルク電流を利用して、エンドミルや金型などの消耗品の劣化検知が可能であることを実証しました。さらに、本技術を応用することで、消耗品の劣化のほか、生産品の重量の均一性や金型に発生するバリの有無など、品質推定も行うことが可能になります。今後、日立は、産業機器や自動車、鉄道などの社会インフラ分野で使用されている、さまざまなモーター組み込み機器に対して本技術の展開を図ることで、各分野での生産性向上に貢献していきます。
図. 劣化検知技術を用いた工作機械の構成例
株式会社日立製作所 研究開発グループ
以上