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2018年5月10日
地域ごとの燃料供給量に応じてバイオ燃料や水素を組み合わせた発電が可能に
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、このたび、発電用エンジンのシリンダー内の圧力に関するデータ(以下、筒内圧データ)を利用し、燃料の状態に即した点火タイミングや空気量などの指令値(以下、燃焼制御値)の調整方法(以下、燃焼制御方法)の学習と、学習用の筒内圧などのデータ収集を自ら繰り返す自己学習により、燃料の種別や混合状態に応じたエンジン制御を行うAI*1
(人工知能)技術を開発しました。
本技術を活用することで、発電用エンジンの燃料として、バイオ燃料(エタノール、メタンなど)や水素などを組み合わせた効率的な発電が可能となります。今回、本技術を搭載したエンジンシステムを試作し、トルエンやエタノール、メタン、水素を燃料として混合燃焼させたところ、安定的な燃焼の基準とされる燃焼変動率3%以下*2での制御が可能なことを確認しました。
近年、低炭素社会の実現に向けて、バイオ燃料や再生可能エネルギー由来の水素の利用が進められています*3。これらの燃料は、利用する地域や季節によって供給量が変動するため、複数の燃料を組み合わせて利用することが想定されています。しかしながら、発電用エンジンの点火タイミングや空気量などの燃焼制御値を、事前に燃料ごとに調整することが困難なことから、複数の燃料に対応するエンジンの実用化は限られていました。
そこで日立は、エンジンの燃焼データの収集とそれを用いた燃焼制御方法の学習を自動的に繰り返すことで、燃料の種別や混合状態に応じた燃焼制御方法を自己学習するAI技術を開発しました。
開発した技術の特長は以下の通りです。
燃焼状態を高精度に把握できる筒内圧データを用い、エンジンの点火タイミングや空気量などをニューラルネットワーク*4により学習します。この学習結果を用いることで、燃料の種別や混合状態に応じた最適な燃焼制御値の算出が可能となります。
(1)で算出された燃焼制御値の周辺で次の制御値候補を生成して、それらの候補で実際に熱効率の評価を行い(図1-a)、熱効率が高くなる制御値のもとで(図1-b)、実際にエンジンを運転しながら学習用データを自動的に収集します(図1-c)。これにより、投入された燃料のもとで、熱効率が高くなるような燃焼制御方法の学習(図1-d)につながります。
今回、本AI技術を搭載したエンジンシステムを試作し、トルエンやエタノール、メタン、水素を用いて混合燃焼させたところ、エンジン出力15kWの条件で熱効率は34〜41%となり、かつ安定的な燃焼の基準として知られる燃焼変動率3%以下での制御が可能なことを確認しました。
今後、日立は、本技術を活用し、低炭素社会に向けた地域エネルギーシステムの早期実現をめざします。
図1:燃料混合量の変動下でのAIの学習イメージ
株式会社日立製作所 研究開発グループ
以上