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2017年4月25日
日本電信電話株式会社
株式会社日立製作所
沖電気工業株式会社
慶應義塾大学
株式会社KDDI総合研究所
古河電気工業株式会社
2030年以降のサービス多様化を見据えた、通信速度・光周波数帯域が伸縮自在なネットワーク
日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)、株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、執行役社長兼CEO:東原 敏昭、以下 日立)、沖電気工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:鎌上 信也、以下 OKI)、慶應義塾大学(東京都港区、塾長:清家 篤、以下 慶應)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中島 康之、以下 KDDI総合研究所)、古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小林 敬一、以下 古河電工)の6機関は、2030年以降を見据えた先進的な研究として、「エラスティック光アグリゲーションネットワーク(EλAN*1:エラン)技術」の研究課題に取り組みました。
EλANとは、光周波数の利用効率を向上する適応変復調*2OFDM*3伝送方式を用いながら、アクセス(加入者−局舎間)・メトロ(局舎間)ネットワークを波長選択スイッチ*4を介して光信号のまま伝送するネットワークであり、インターネット・ビジネス向け回線・モバイルなど複数のサービスで利用される異なる性質のトラフィックに対し、伸縮自在(エラスティック)な通信速度・光周波数帯域の割り当てを行うことができます。
また、このような革新的なネットワークに必要となる信頼性を光伝送路の制御方式やスイッチ技術の検討を通して追求し、検証機を用いて実験を行いました。局舎装置が故障しサービスが断絶しても、故障した装置から10km離れた別の局舎装置が自動的に10秒以内にサービス断絶前と同じ通信速度で再接続する実験に世界で初めて成功しました。
本技術は、2030年以降に訪れるサービスの多様化に適応できるアクセス・メトロネットワークの基礎技術として期待されています。なお、本成果については、光通信に関する国際学会iPOP2017(The 13th International Conference on IP + Optical Network、神奈川県川崎市で6月1日〜2日開催)の展示会にて出展発表します。
今回の研究開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構の委託研究課題「エラスティック光アグリゲーションネットワークの研究開発」を受託し、実施したものです。
FTTH(Fiber to the Home)サービスの普及に伴い、光アクセスネットワークへの期待として、従来のFTTHサービスに加えてビジネス向け回線およびモバイル向けサービス、高精細映像伝送サービスや将来的にはIoT(Internet of Things)への対応など、様々なサービスの提供が求められることが想定されています。
このようなマルチサービス収容を実現するためには、これまでのようにサービス毎に独立したネットワークを構築するのではなく、一つのネットワークで様々なサービスを効率良く提供することが求められます。また、サービス毎に異なるネットワークへの要求条件に柔軟に対応することや、災害発生時などに残されたネットワークリソース*5を柔軟に組み替えてサービスを継続することも必要となります。さらに、提供サービス数増加に伴う光周波数の将来的な資源リスクに対応するために、単位光周波数当たりの通信速度(光周波数利用効率)を向上することも求められます。
このような背景から、2030年以降を見据えた先進的な研究として、NTTのアクセスサービスシステム研究所、日立、OKI、慶應、KDDI総合研究所、古河電工の6機関は、アクセス・メトロネットワークにおける設備・運用の効率化、光周波数利用効率の向上、柔軟なマルチサービス収容および高信頼性の実現をめざし、EλAN技術の研究課題に取り組むに至りました。
EλANは、加入者に近いアクセス局舎に配置している局内装置(OLT)を、メトロネットワークの回線を集線(アグリゲーション)するコアネットワークに近いメトロ局舎に配置し、加入者からメトロ局舎を光信号のまま伝送するネットワークです。光ファイバ伝送路網には波長選択スイッチを配置し、光信号の経路を冗長化し自律的に変更可能とすることで信頼性を確保します。また、光-電気-光変換処理が不要となり、ネットワーク全体の低伝送遅延化や低消費電力化の効果も期待されます。
またEλANでは、極めて優れた光周波数利用効率を実現できるデジタルコヒーレント*6OFDM伝送方式を用いるとともに、適応変復調技術を活用することにより、大規模なマルチサービス収容および伸縮自在(エラスティック)な通信速度・光周波数帯域の割当を行います。さらに、世界で初めて、デジタルコヒーレント適応変復調OFDM伝送方式に、OLT内動的帯域割当アルゴリズム技術を適用することにより、メトロ局舎からの宅内装置(ONU)までの距離(収容距離)に依存せず、どのユーザにも公平な通信速度を割り当てるよう制御します。
今回、NTT、日立、OKI、慶應、KDDI総合研究所、古河電工の6機関が取り組んだEλAN 技術は、下記6項目の要素技術から構成されます。
6機関はこれらの新規開発した革新的技術を結集し、EλANの有用性・信頼性について機能検証機で実験を行いました。具体的には、最大伝送距離40 km、1波長当たりの最大通信速度10 Gbit/s、最大収容端末数512を模擬した実験系において、伸縮自在な通信速度・光周波数帯域割当機能を確認するとともに、あるメトロ局舎が被災したことを想定したユースケースの検証を行いました。その結果、10km離れた場所に残された別のメトロ局舎が、被災したメトロ局舎に接続されていたサービスを、10秒以内に自律的にサービス断絶前と同じ通信速度で再接続する実験に世界で初めて成功しました。
今後は、開発したEλANのさらなる技術成熟度および信頼性向上をめざすと共に、成果のプロモーション活動を実施していきます。
<用語解説>
以上