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2017年2月14日
処理水の水質安定化と消費電力の低減、維持管理業務の軽減を実現
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、ICT(情報通信技術)を活用した省エネ型下水処理制御システムを本日から販売開始します。本システムは、下水処理を行う生物反応タンクの2ヶ所に設置したアンモニアセンサーのデータなどから、下水処理に使用される送風機の適切な風量をリアルタイムかつ高精度に予測・制御することで、処理水の水質安定化と風量削減による消費電力の低減、さらには維持管理業務の軽減を実現します。
本システムは、国土交通省が実施する下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト*1)において、国土技術政策総合研究所(以下、国総研)から日立製作所・茨城県共同研究体が受託した「ICTを活用した効率的な硝化*2運転制御の実用化に関する技術実証研究」(2014年 7月〜2016年3月に茨城県流域下水道事務所霞ケ浦浄化センターで実施)において実証を行い、実用化したものです。本実証研究では、従来の風量一定制御運転時と比較して、送風機の風量は約38%低減、消費電力量およびCO2排出量は約27%低減、経費回収年は1.1 年と試算されました*3。なお、本実証研究の成果を踏まえて国総研が策定した「ICT を活用した効率的な硝化運転制御技術導入ガイドライン(案)*4」が本日公開されました。
下水処理施設では、赤潮などの原因となる下水中の窒素(アンモニア性窒素)を除去する際、送風機により生物反応タンク内の微生物に空気(酸素)を供給し、アンモニアを硝化させます。流入する下水の水質や量、微生物の活性度は、時間帯や季節などによって変動しますが、アンモニアを十分に処理するために、従来の風量制御では過剰に送風する傾向がありました。また、国内の下水処理事業における電力消費量は、全国の電力消費量の約0.7%*5にもおよび、下水処理場内における水処理施設の消費電力量のうち送風機が約半分を占めることから、送風機の消費電力低減が課題となっています。さらに、人口の減少などに伴い、下水処理事業に携わる職員の人材不足や料金収入の減少などにより、ICTを活用した効率的な維持管理のニーズが拡大しています。
そこで日立は、下水処理に使用される送風機の最適な風量を予測・制御するシステムを開発しました。具体的には、生物反応タンクの上流側と下流側に設置したアンモニアセンサーのデータから、目標とするアンモニアの除去に必要な風量を算出し、制御します。風量の演算には、処理したアンモニア濃度と供給した風量の関係を表した「処理特性モデル」を用います。この「処理特性モデル」は、実測値をもとに自動更新するため、必要な風量の予測精度を自動で維持するとともに、処理特性の変化を見える化できることから、維持管理業務の軽減を実現します。
日立は、水事業を「社会イノベーション事業」の注力分野と位置付け、市場やお客さまのニーズに応える「水総合サービスプロバイダー」をめざしています。今後、本システムの拡販により、下水道事業における省エネルギー化と維持管理業務の効率化を推進し、お客様の課題解決に貢献していきます。
下水を処理する生物反応タンクの上流側と下流側の2ヶ所にアンモニアセンサーを設置します。上流側のアンモニアセンサーでは、流入下水の水質変動を把握するとともに、2つのアンモニアセンサーの間で処理したアンモニア濃度と供給した風量の関係を表した「処理特性モデル」を用いて処理に必要な風量を予測します。一方、下流側のアンモニアセンサーでは、想定したアンモニア濃度と実測値とのずれを訂正するように風量を演算します。2つのアンモニアセンサーを活用した風量制御により、流入する下水の負荷変動にリアルタイムに対応して風量の過不足を抑制でき、処理水の水質安定化と風量削減による消費電力低減の両立を実現します。
「処理特性モデル」は、運転実績をもとに自動で更新されるため、水温などによる微生物の処理特性の変化にも対応し、必要な風量の予測精度を自動で維持することが可能です。また、処理特性は、グラフによって見える化されます。これらにより、維持管理業務の軽減を実現します。
株式会社日立製作所 水ビジネスユニット 水事業部 社会システム本部 [担当: 畑山]
〒170-8466 東京都豊島区東池袋四丁目5番2号
電話:03-5928-8092(直通)
以上