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2016年6月14日
株式会社日立製作所
住商ファーマインターナショナル株式会社
住友商事株式会社
誰もが簡便にがん検査を受けることができる技術の確立をめざす
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)、住商ファーマインターナショナル株式会社(代表取締役社長:須藤 龍也)および住友商事株式会社(代表取締役社長:中村 邦晴)(2社を総称して以下、住友商事グループ)は、尿中の代謝物を網羅的に解析することにより、健常者、乳がん患者および大腸がん患者の尿検体を識別する基礎技術の開発に成功しました。本開発では、尿検体から1,300以上の糖や脂質などの代謝物を検出し、そこからがん患者の尿を識別するバイオマーカー*1候補となる物質を10個程度まで絞り込みました。特定したバイオマーカー成分の含有量の違いから、健常者とがん患者の尿を識別することに成功しました。今後、がんとバイオマーカー候補となる物質との関連を詳細に調べ、尿を用いて簡便に受けることができるがん検査方法を確立することで、より健康で豊かな社会の実現に貢献します。
本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業、産学連携医療イノベーション創出プログラムの支援によって実施されたものです。
現在、日本では少子高齢化が進む中、医療費を含めた社会保障費の増大が大きな社会問題になっており、がんに罹った場合、医療費のほか、早期死亡によって生じる労働価値の損失を含めた経済的疾病費用は、約10兆円規模になると算出されています*2。今後、労働人口の減少が予測される中、医療費のみならず労働損失を低減するためにも、がんの早期診断、早期治療の実現が重要です。しかし、血液検査など腫瘍マーカー検査に代表される現在のがん検査は、医療検査機関での受診が必須であることや、全身のがんを一度に検査できる技術が確立されていないことから、受診者にとっては時間的、経済的な負担が多くなっています。また、医療機関の少ない地域では、受診機会を得難いことが、がんの早期診断、早期治療の妨げとなっています。そのため、誰もが簡便にがんの検査を受けることができる技術の確立が求められています。
そこで日立は、受診者自身で採取することができる尿を用いた検査方法に着目し、尿検体を用いた新たながん検査方法とそのプロセスを確立するため、基礎技術の研究を推進してきました。
今回、住友商事グループが協力し、健常者とがん患者の尿検体に含まれる糖や脂質などの代謝物を網羅的に解析したところ、両者の尿中代謝物の間に、含有量が大きく異なる代謝物が存在することがわかりました。そこで、これらの代謝物をがんの有無を判別するバイオマーカー候補として絞りこみ、主成分解析*3を行った結果、特定したバイオマーカー成分の含有量から、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の尿検体を識別することに成功しました。
今回得られた成果は、将来、受診者自身が尿検体を採取し、これを医療検査機関に送ることでがん検査を可能とする新しい検査スタイルの確立に道を開くもので、がん検査の受診機会の増大に寄与する可能性があります。今後、日立と住友商事グループはバイオマーカー候補物質の構造解析を行い、大腸がん、乳がん以外のがんの識別および実用化に向けた研究を推進します。
年齢、性別、がんの有無などの情報が付与された、健常者、乳がん患者、大腸がん患者の市販の尿検体各15検体を対象に、液体クロマトグラフ/質量分析計を用いて、尿代謝物の詳細解析を行いました。代謝物の水溶性や脂溶性の違いに着目して測定条件を最適化することで、それぞれの尿検体から、従来の2倍以上となる、1,300を超える代謝物を検出することができました。
健常者群、乳がん患者群、大腸がん患者群の尿中代謝物を比較したところ、含有量が大きく異なる代謝物があることがわかりました。これらの代謝物を乳がん患者、大腸がん患者の尿検体を絞り込むバイオマーカーとし、主成分解析を行った結果、健常者、乳がん患者、大腸がん患者それぞれの尿検体を識別できることがわかりました。
健常者、乳がん、大腸がん患者の尿検体の識別結果
研究開発グループ 研究管理部 [担当:小平、安井]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-323-1111(代表)
創薬支援部 [担当:米川]
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以上