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社会

グローバル人財マネジメント

人的資本の考え方

考え方・方針

日立は、人的資本、すなわち人こそが価値の源泉であると考えており、世界中の従業員の力を結集することでお客さまと社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することをめざしています。
社会イノベーション事業のグローバル展開を進めるなか、日立は、多様な人財が国・地域・事業体を越えて一つのチームでプロアクティブに業務を遂行し、変化が絶えない世の中に速やかに適応できる人財・組織が必要と考えており、その実現に向けて、人財の育成と社内環境の整備に取り組んでいます。

グローバル人財マネジメント体制

体制

日立は、経営会議の中に「成長戦略会議」「リスクマネジメント会議」および「人財戦略会議」を設け、経営における重要事項について審議しています。人財については、年2回以上開催される「人財戦略会議」にて、日立グループの成長に向けた組織・文化の醸成および人財の確保・育成のために必要な事項などの人財戦略・施策について議論・決定が行われ、必要に応じて取締役会に附議されます。

グローバル人財マネジメント体制

図:グローバル人財マネジメント体制

グローバル人財戦略

戦略・目標

日立は、経営戦略に連動した人財戦略を実行しています。2024中期経営計画に基づき策定した「2024人財戦略」では、まず、人財マネジメントのMission・Visionを掲げました。具体的には、社会貢献を志向する人財が集まり、いきいきと活躍する組織となり、グローバル市場における“Employer of choice(選ばれる会社)”となることをビジョンに掲げ、その実現に向け、「People」「Mindset」「Organization」の3つの戦略の柱と「Foundation」を定めています。
日立は、本戦略に基づき、社会課題の解決に貢献する人財の育成をめざして、職場での業務を通じた育成に加え、個人の能力やスキル、専門性の向上を目的としたさまざまな施策をグループ全体に展開しています。
また、人財戦略を推進する上で、重要となるのがダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンです。多様な従業員が、お互いの違いを尊重し、イノベーションを起こすことができる組織の構築をめざします。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン

人財マネジメント変革

図:人財マネジメント変革

経営戦略に連動した人財戦略の全体像

Mission 多様な人財と公正な機会、インクルーシブな組織を通じた事業への貢献
Vision
  • 社会貢献を志向する人財が集まり、生き生きと活躍する組織となるために、グローバル市場における“Employer of choice(選ばれる会社)”を実現する
  • 変化に対応し、「事業」に貢献する“世界No.1のHR分野での先駆者”になる
Pillars Key Initiatives
HR Strategy People(Talent)
「成長」に向けたタレント(人財/個人の能力)・エンゲージメントの最大化
  1. 特にグローバルリーダーとデジタル人財を獲得・リテンション・育成・配置し、ポテンシャルを最大限に引き出す
  2. 日立グループで適所適財の配置(マッチング)を最適なタイミングで行う
  3. 従業員のウェルビーイング・エンゲージメントの向上
Mindset(Culture)
「成長」に向けたマインド・文化の醸成
  1. 持続的な成長に向けて、 日立創業の精神を体現するとともにグローバル日立カルチャーを醸成する
  2. 成長マインド(リスキリング・アップスキリングを含む継続的かつ主体的な能力開発)の促進
  3. イノベーションと変革の促進:心理的安全性の担保と挑戦への支援
Organization
「成長」に向けた部門間協働の促進とグローバルでの生産性・効率性の実現
  1. 顧客提供価値の向上のために、組織のサイロを打破し、協働する
  2. 「新しい働き方」の構築
  3. デジタル技術を活用し、よりハイクオリティなHRサービス・ソリューションを提供するHRに変革する
Foundation 心身の健康と安全の確保
リスクマネジメント(コンプライアンス・事件事故防止・災害等への対応)の強化・徹底

経営戦略と連動した定性的・定量的な施策・KPI

図:経営戦略と連動した定性的・定量的な施策・KPI

*1 MaD!: Make a Difference!(従業員提案型のアイデアコンテスト)

*2 JD: ジョブディスクリプション(職務記述書)

グローバルでの経営リーダーの選抜・育成

活動・実績

日立は、経営トップと指名委員会を中心に、変化・変革を牽引する経営リーダーの中長期的な育成(Global Leadership Development Program: GLD)に取り組んでいます。
将来のCEO、事業部門長など経営リーダー候補の育成にあたっては、そのタレントプールである「GT+」に世界中から数百人の候補者を選抜し、タフアサインメント*1を取り入れたOJT(On the-job Training)やOff-JT(社内外トレーニング)、コーチングを実施しています。選抜者における外国人・女性の割合も年々増加しています。
また、「Future 50」プログラムを通じて選抜した経営リーダーへの早期登用をめざす優秀層は「GT+」にも含まれており、経営者ポジションを含むアサインメント、社外取締役と直接議論する機会の提供などによる集中的な育成を受けています。

*1タフアサインメント:高難度の業務を割り当てること

経営リーダー候補における多様な人財の選抜状況

  GT+ Future50
(Alumniおよび現選抜者)
2016年度 2023年度
選抜者数 521人 566人 142人
外国人 25人(4.8%) 177人(31.3%) 43人(30.3%)
女性 25人(4.8%) 135人(23.9%) 31人(21.8%)

Note : 2024年3月末時点累計

図:グローバルでの経営リーダー候補の選抜・育成

経営リーダー候補向けトレーニング例(社内)

研修 対象者・内容 2023年度実績
Global Leadership Acceleration Program for Key Positions (GAP-K) 将来の経営リーダー候補の早期育成を目的に5カ月間にわたり実施される選抜研修 10カ国から25人が参加
Global Advanced Program for Leadership Development (GAP-L) 海外現地法人で活躍が期待されるローカルリーダーを対象に、日立のグローバル成長を実現する上位のリーダーシップ、マインド、スキルの開発を目的に年2回開催される研修 18カ国から48人が参加

デジタル人財の獲得と育成の強化

戦略・目標

活動・実績

マテリアリティ

日立は、デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を加速し、Lumada事業の成長(売上収益2021年度1.38兆円→2024年度2.65兆円)を実現するために、デジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引するデジタル人財の確保と育成に注力しています。デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニーであるGlobalLogicなどで事業規模の拡大に応じた機動的な採用・育成を行うとともに、市場動向や地域戦略を踏まえたM&Aによる人財強化も推進しています。また、国内においては、新卒採用におけるジョブ型インターンシップなど、候補者一人一人のキャリアニーズとジョブのマッチングを重視する「パーソナライズ採用」を推進するとともに、日立独自のDX研修体系や実務経験を通じた育成プログラムの拡充などにより、事業成長に必要なデジタル人財の獲得と育成をさらに強化していきます。

デジタル人財数推移と目標

グラフ:デジタル人財数推移と目標

Note:デジタル事業に必要な「デザインシンキング」「データサイエンス」「セキュリティ」など
12種類のケイパビリティのいずれかを有する人財を「デジタル人財」と定義。
デジタル人財数はケイパビリティごとの人財数の合計数(延べ人数。千人単位)

*1:日立Astemo除く

デジタル人財の育成手法

図:デジタル人財の育成手法

デジタル人財の育成

日立は、グループ内のコーポレートユニバーシティ(企業内大学)である日立アカデミーを中心に、DXに必要なスキル・レベル別に各種プログラムを整理したDX研修体系を構築し、運用しています。
100コース以上にわたるDX研修体系のブラッシュアップを毎年行っており、2023年度は約140のコースを延べ25,000人が受講しました。国内グループ全従業員が習得すべきDXリテラシーをまとめたeラーニングのパッケージをはじめとして、デジタル人財に必要なスキルごとにベーシックレベル・アドバンストレベルの研修を整備し、DXを自らの業務で適用できる人財の育成を強化しています。2023年度には、デジタル人財の育成をグローバルに加速するためにGlobalLogicのメソッドを活用した「垂直立上げ型コース(クラウド・アジャイル開発/データサイエンス)」を新設したほか、顧客共創・ビジネス立上げができる人財を育成するための「DXリーダー研修」を開始しました。
DXプロジェクトを取りまとめるリ-ダーなどプロフェッショナルレベルのデジタル人財については、実務経験(OJT)を積むことで育成しています。
今後も、研修の受講による知識・技法の習得を通じたアドバンスト・ベーシックレベルの人財育成と、OJTを通じたプロフェッショナルレベルの人財育成との両輪で、デジタル人財の育成を強化していきます。

適所適財の実現に向けた取り組み

活動・実績

日立は、組織目標達成のための最適な組織体制構築と組織全体のパフォーマンス最大化、フォーメーション最適化のための人財確保・配置を検討するプロセスを組織編成・人財配置ポリシーとして規定し、適所適財に向けた組織・ポジションマネジメントを徹底しています。ポジションに求められる能力要件を満たす人財配置を基本とし、年齢・性別・国籍などの属性を問わず、社外を含めた多様な人財をグループ全体においてグローバルな視点で活用しています。ジョブ型の人財マネジメント推進の一環として、職務と人財のより最適なマッチングを実現していくため、事業軸および地域軸のタレントレビューを行い、グローバル・パフォーマンス・マネジメント(GPM)、後継者計画・育成などの日立グループ共通のグローバルタレントマネジメント施策を通じて、日立グループ全体のさらなる成長をめざします。

グローバルでの日立カルチャーの醸成・従業員エンゲージメントの向上

戦略・目標

活動・実績

日立は、近年の複数の大型M&Aにより約10万人の仲間を新たに迎え入れました。新たに加わった仲間とも日立のMission・Values(創業の精神)を共有することで、One Hitachiとしてのカルチャー醸成とともに従業員エンゲージメント*1の向上に取り組み、さらなる成長・イノベーションを実現していきます。
日立は、グローバルでの従業員サーベイ「Hitachi Insights」を通じて従業員エンゲージメントを毎年モニタリングし、その向上に向けたアクションの立案・実行を推進しています。具体的には、経営層および各職場のマネージャーが、自組織のサーベイ結果をメンバーと共有して組織課題を把握し、対策となるアクションの立案・実行を通じたPDCAサイクルを継続することで、向上につなげています。

*1従業員エンゲージメント:従業員が会社の戦略や施策を理解するとともに、自身の仕事にやりがいを感じ、成果を出すために自律的に取り組もうとする意欲

企業買収後の対象組織に対するカルチャー浸透

日立にとって、GlobalLogicや日立エナジーをはじめとするM&Aで買収した企業とのシナジー創出は経営戦略上の重要な取り組みです。そしてこれらの企業と一体化(One Hitachi)を図るには、日立グループ・アイデンティティなどのカルチャー浸透が必要不可欠です。そのために日立ではリーダー層のタウンホールミーティングや、従業員向けのカルチャーディスカッションなどを積極的に実施しています。

日立グループの新たな仲間との企業文化の融合に向けたコミュニケーション

日立のモノづくり戦略本部は、2023年7月にポーランドで「One Hitachiコラボレーション・ワークショップ」を開催しました。このイベントには、日立エナジー、日立レール、日立デジタル、GlobalLogicおよび日立ヴァンタラから25人が参加し、One Hitachiに向けたシナジー創出に関する議論とベスト・プラクティスの共有が行われました。

マインドセット改革「Make a Difference!」

日立は、2015年度より「一人称のマインドセット」強化や企業文化の醸成を目的にグループ全従業員参加型のアイデアコンテストを実施しています。過去9年間で、累計4,930件以上ものアイデアが集まり、新事業の創生と企業文化の醸成に貢献しています。2023年度のコンテストでは、「~その“アイデア”いいね~ 仲間と創ろう。One Hitachiのアイデア」をテーマに掲げ、世界中から471件の新しいアイデアが集まりました。最終審査員として、社長および各事業セクターのトップである副社長が参加・評価し、最優秀賞のGold Ticketを受賞したアイデアについては、経営層のコミットメントも得ながら、事業化・実現に向けて取り組みを推進しています。

従業員エンゲージメントの向上

マテリアリティ

日立は、人的資本経営の一環として、従業員エンゲージメントスコア*2をKPIに定めています。また、グローバル従業員サーベイ「Hitachi Insights」の結果を踏まえてエンゲージメント向上に向けたアクション立案・実行を推進する上で、課題特定手段の一つとして、エンゲージメントドライバー(エンゲージメントを高める上で相関性の高い項目)を特定し、その改善に努めています。
2022年度に、2024中期経営計画に掲げた目標値(68.0%)を前倒しで達成したため、さらなる高みをめざして、新たな目標値を71.0%に設定し、2023年度は68.6%となりました。その結果を受け、日立では、エンゲージメントドライバーなどで特定した課題である「グローバルでの日立カルチャーの醸成」や「ウェルビーイングの促進」「適所適財の推進」「経営トップからのコミュニケーション強化」などに向けて日立グループ全体でアプローチし、エンゲージメント向上を図ります。

*2従業員エンゲージメントスコア:従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率(「自社で働くことへの誇り」「働き甲斐のある職場であるか」「仕事へのやりがい・達成感」「当面自社で勤務する勤続意欲」の4点から測定)

従業員エンゲージメントスコア(肯定的回答率)実績および目標

グラフ:従業員エンゲージメントスコア(肯定的回答率)実績および目標

Note:2022年度に目標を前倒しで達成したため、2024年度目標を引き上げました

日立グループ全体での取り組み事例

  • 日立グループ コア・コンピテンシー*3の浸透促進とあらゆる人財施策との連動
  • 人財流動性の向上(例:グローバルタレントモビリティ*4、ジョブ型人財マネジメント)
  • 経営のめざす方向や組織・従業員の成長に向けたコミュニケーションの促進(例:タウンホールミーティング、1on1)

*3日立グループ コア・コンピテンシー:日立創業の精神(Hitachi VALUES)と事業戦略等をもとに策定し、日立グループ全社員に期待される行動として、日立創業の精神をどのように体現すればよいかを具体的に定義したもの

*4グローバルタレントモビリティ:事業部門・国/地域を超えた人財の流動化

日立グループコア・コンピテンシー

図:日立グループコア・コンピテンシー

グループ会社における取り組み事例

  • 日立レールにおけるマネージャー層強化・育成プログラム(LEAD: Leadership Enhancement and Development)
    LEADは、日立VALUESと連動した共通のリーダーシップを育成するためのプログラムです。マネージャー層の従業員1,000人を対象に、日立VALUESや日立グループコア・コンピテンシーの理解の推進、リーダーに求められるコンピテンシーの向上、エンゲージメントの促進などに向けた研修機会を提供しています。
  • Hitachi Digital Servicesにおけるウェルビーイングの取り組み
    Hitachi Digital Servicesは、メンタルヘルスとウェルビーイングを向上するため、Mental Health First Aid(MHFA)プログラムの受講推進に取り組んでいます。本プログラムは、従業員が自身や同僚のメンタルヘルス危機の症状を認識し、適切な初期支援行動を学ぶコンテンツを提供するもので、受講した従業員はMHFAの資格を取得することができます。2023年度の資格取得者は55人で、資格取得者によるメンタルヘルスに関する意見交換会も8回開催しました。また、医療専門家によるウェビナーを複数回開催し、ストレス管理や睡眠、ホルモンなど、幅広い健康関連トピックに関してのレクチャーを実施しています。2023年度は、ウェビナーを10回開催し、ストレス管理、睡眠の重要性、家族計画・妊娠・不妊治療、更年期障害啓発、健康習慣全般などのトピックを取り上げました。

「学習する組織」の構築に向けた人財育成の取り組み

活動・実績

社会課題の複雑化・深刻化、デジタル技術の急速な進化など、予測困難で変化の激しい環境下で新たな価値を提供し続けるには、従業員一人一人が必要なスキル・ケイパビリティを獲得し続ける文化を醸成していくことが重要です。日立では、ビジネス成長のために学び続ける「学習する組織」の構築をめざし、必要な人財が必要な学習をタイムリーに行える環境を整備し、グローバルでの組織能力の向上を図っています。
具体例として、デジタル人財育成など各個人の能力やスキル・専門性の向上を目的とした研修をグループ全体に展開し、管理職向けに日立グループの成長を実現するための階層別研修をグローバル統一で実施しています。

階層別マネジメント研修

研修 対象者・内容 2023年度実績
Global Leadership Acceleration Program for Managers (GAP-M、Ready to Lead) 一般管理職や新任管理職を対象に、世界同一内容で行われるリーダーシップ研修 11カ国/地域(日本、アメリカ、イギリス、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、中国、台湾)にて開催し、3,033人が参加

各地域(統括会社)における能力開発

活動・実績

グローバルに事業を展開する日立は、各地域の統括会社を中心に、それぞれ注力する事業や地域の文化的な背景を踏まえた独自の能力開発プログラムに取り組み、グループ全体でグローバルリーダーとなりうる人財の発掘・育成に努めています。

日立アメリカ

グローバルリーダーをめざす従業員向けに、グローバル共通のマネジメント研修のほか、Hitachi Universityなどのプラットフォームを活用したさまざまな研修や個別のトレーニングを実施しています。具体的にはDXやAI/データサイエンスなどのeラーニング受講を従業員に促しています。また、日立アメリカでは特にDEIの理解向上を重視しており、DEI関連のバーチャルトレーニングを全従業員向けに実施し、研修完了率100%を達成しました。経営層育成に関しては、管理職としての経験に応じて、研修プログラムへの参加を従業員に積極的に促し、Hitachi Leadership Profile (HLPO)でのフィードバックを経て経営層候補を選抜しています。さらに、タレントレビューを実施しており、それに基づき育成計画を策定しています。この他Mentoring at Hitachiを導入しており、スキル向上と日立グループ内でのキャリア拡大を一層進める格好の機会を従業員に提供しています。

日立ヨーロッパ

日立ヨーロッパは、ヨーロッパ勤務従業員の個人としての能力とリーダー候補としての能力の向上を支援しています。特に新たなデジタルスキルの習得を重視しており、Hitachi Universityを活用したさまざまな学びの選択肢を用意しています。リーダー候補としての能力向上に関しては、マネージャー層に対してグローバルリーダーシッププログラムへの参加を積極的に促しています。これにより、EMEA地域のリーダー層の集まる機会を増やし、日立グループ内における重要なネットワークづくりを支援しています。また、日立ヨーロッパでは、特にDEIの理解促進に注力しており、全従業員向けの定期研修やセミナーを企画しています。

日立アジア

日立アジアでは、Mission、Values、Visionに沿った人財育成と地域でのシナジー創出を図るために年に2回、ビジネスリーダーが集まり、事業戦略やビジネスインサイト、成功事例などを共有しています。 また、年次でのタレントレビューと後継者育成計画における議論を徹底し、ポテンシャルのある人財のリテンションとキャリア成長を着実に実現しています。さらにグローバルでのリーダー育成計画に加えて、経営層によるコーチングやメンタリング、プロジェクトへのアサイン、ワークショップの実施などでリーダーポジション就任までの道筋をつくり、ポテンシャルのある未来のリーダー層の育成を促進しています。こうした人財育成に関する取り組みの延長として、Future Leaders ForumやYoung Talent Nexusなどの地域別施策を通じたグループ会社の人財育成支援にも取り組んでいます。2023年度からは、社会課題を解決するビジネスリーダーの育成を強化するため、ASEAN Business Leaders Programを実施しています。本プログラムでは、ASEANおよび東アジア各国より集まった日立内外のビジネスリーダー・候補者約30人がASEANにおける社会課題の発掘とソリューションについて、シンガポール政府関係者および日立経営幹部を交えた議論・検討を行いました。

日立中国

すべての従業員の成長を促進するために、階層ごとに教育体系を整備し、業務に必要な専門的な能力と包括的なスキルの向上を支援しています。 また、Hitachi Universityを活用したグローバル共通の研修や従業員向けのeラーニングプラットフォームを活用するとともに、中国における事業活動に必要なスキルや知識を習得するためコンテンツを提供しています。デジタルビジネス関連の人財育成に関する教育を強化し、社会イノベーション事業の発展を支援します。

日立インド

日立インドでは、グローバルマネジメント研修コースやeラーニングプラットフォームの活用を通じた従業員のスキル強化を図るために、経営層も参加する研修・育成委員会を2年に一回開催し、研修関連施策の審議を行っています。また、インド国内のグループ会社向けに年間育成ロードマップや教育プログラムを発信して、効率的な学習を促しています。研修プログラムのテーマは、技術系の専門的知識や、行動面やビジネススキルの育成、多様性・公平性・インクルージョン(DEI)など多岐にわたり、Hitachi Universityなどのラーニングプラットフォーム、オンラインセッション、教室型セッション、体験型海外研修プログラムなど多様な形式で実施することで、包括的な学習機会をさまざまな環境で従業員に提供しています。

ジョブ型人財マネジメントへの転換

方針・考え方

活動・実績

日立は、ジョブ型人財マネジメントへの転換を図っています。これを通じて、職務(ジョブ)と必要なスキル・経験を明確化し、その職務を担える人財を、国籍・性別・年齢などの属性によらず、本人の意欲・能力に応じて登用することができるようになり、従業員一人一人の働きがいや、会社と個人との一体感を高め、双方の成長を実現していきます。
日立では、“職務と人財の見える化”を図るべく「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の導入(2023年度末時点で国内グループ会社を含む約10万ポジションに導入)や、各従業員の適性やキャリア志向を踏まえた配置・育成を検討する「タレントレビュー」の実施などに取り組んできました。また、自律的なアップスキリング・リスキリングを支援する仕組みとして、AIが各自のキャリア志向等に合わせて社内外の学習コンテンツをリコメンドする「学習体験プラットフォーム(LXP)」を導入するなど、従業員の自律的キャリア形成支援を進めています。LXPは日立製作所をはじめとして、国内グループ会社にも順次導入しています。
さらに、2024年度をターゲットに人財マネジメントの制度・仕組み全体の見直しを進めており、一例として、2023年10月より日立製作所にて自律的キャリア形成に向けてチャレンジする従業員の支援を目的とした社内外副業制度のトライアルを開始しました。
加えて、日立製作所においては、2024年6月には非管理職(約2万人)の処遇制度を改訂(職務等級制度の導入)することを労使で合意しており、適所適財を促進するため、職務をベースとした制度へ改訂し、職務と報酬の関係を明確にします。今後は、社内外副業制度の正式導入や、福利厚生制度の再構築などにも取り組んでいきます。

日立がめざすジョブ型人財マネジメント

図:日立がめざすジョブ型人財マネジメント

キャリア形成支援研修とキャリア相談室の拡充

日立製作所では、「自らキャリアを考え、行動する」という成長マインドの醸成に注力しています。そのために、従業員の自律的なキャリア形成に直接働きかける基盤となるプログラムとして、2022年度に「キャリア研修」を導入しました。このプログラムでは、従来の「日立キャリア開発ワークショップ(H-CDW)」の自己理解中心の内容に加えて、めざすキャリアの実現に向けたアクションプラン策定の支援を強化することで、個人の主体的なキャリア形成や能力開発への具体的な取り組みを促進しています。この取り組みは、中高齢層から展開を進め、これまでに約8,700人(2024年3月末時点)が参加しました。2024年度からは対象を若年・中堅層に広げ、全世代に実施していく予定です。
また、2023年8月には、従来のキャリア相談室を拡充し、日立グループ内の公募案件に関する具体的な相談ができる「マッチングアドバイス」やキャリア形成全般に対応する「キャリアコンサルティング」を通じて、一人一人の自律的なキャリア形成の支援と公募ポジションへの適所適財配置をサポートする「キャリア相談サービス」を開始しました。
今後も、従業員一人一人の個性や志向を尊重しながら個人の自己理解やキャリアプランニングを支援することで、個人の意欲や能力をパフォーマンス・エンゲージメントの向上につなげていきます。

グローバル人財マネジメント基盤の順次導入

活動・実績

日立は、これまで各事業が海外展開において個別最適で運用していた人財施策・制度をグローバル共通・地域共通・個社別の区分に整理しました。特に、グローバル共通施策については一体で進めるグローバル共通人財マネジメント基盤の整備を進めています。2012年度より順次導入を行い、データベースなどのデータ整備や、一部のトップタレントを対象にしたグローバルリーダーシップディベロップメントの取り組みから開始し、共通のジョブグレードやパフォーマンスマネジメント、グローバル教育プラットフォームの導入やグローバル人財マネジメント統合プラットフォーム基盤の導入など、取り組みを広げています。また、新規に日立に加わった会社もこれら共通基盤の導入を順次進めています。

グローバル人財マネジメント統合プラットフォーム

本プラットフォームを通じて、従業員のスキルやキャリア志向など最新の人財情報データをクラウドシステムで共有しています。グローバルでの人財検索や情報の収集、チームマネジメントへの活用、パフォーマンス管理や育成計画・キャリア開発など、さまざまなプロセスを一元管理でき、その運用範囲をグループ全体に順次拡大しています。

人財マネジメント統合プラットフォーム導入状況

グラフ:人財マネジメント統合プラットフォーム導入状況

*12022年度からの減少は、グループ会社数の変動によるもの

ピープルアナリティクスの推進

日立は、従業員の意識と行動に関するデータを収集・分析し、経営・人財施策に活用する「ピープルアナリティクス」を推進しています。
人財、組織や文化に関する効果的かつ迅速な打ち手を実行するにあたり、担当者の経験や勘のみに頼るのではなく、データの可視化や分析によって、意思決定の精度向上や従業員一人一人の特徴や適性を踏まえた人財マネジメントの推進に取り組んでいます。

サーベイ分析結果の人財マネジメントへの活用

2023年度は従業員サーベイ「Hitachi Insights」によって得られた定量的なデータだけではなく、より深い洞察を得ることをめざした従業員からのフリーコメント(文字データ)の統計解析に取り組みました。具体的には、テキストマイニングの技術、さらには日立製作所が独自に開発した生成AIを活用した分析結果、および分析手法に関するナレッジシェアを日立グループ全体に展開し、各組織における課題特定や施策検討を支援しました。
日立ではこのように、定性的なデータも定量的なデータに変換することで、より深い洞察をもったデータ駆動型の意思決定を推進し、人財や組織の活性化、そして人的資本の強化につなげていきます。

日立グローバル・グレード(HGG)

多様な人財が事業を推進していくためには、役割・仕事基準の人財マネジメントが必要です。それを実現する手段の一つが「日立グローバル・グレード」です。すべての組織におけるポジションについて、日立グループ共通の基準に基づく職務評価を実施の上、11段階でグレード付けしています。

タレントレビュー

日立は、職務と人財のマッチング強化、育成を図る取り組みとして事業軸および地域軸でタレントレビューの導入を推進しています。各職場のマネージャーは部下との個別の面談により、パフォーマンスやキャリアプランなどを確認したのち、複数のマネージャーによる社員一人一人のレビュー機会を設けます。ここでは、社員の強みと弱み、キャリア志向を踏まえ個別の育成や職務のアサインについて検討します。これらにより、職務と人財のマッチングを促し、社員のキャリア育成と組織力の強化に結びつけていきます。

グローバル・パフォーマンス・マネジメント(GPM)

組織と個人の継続的な成長をめざす業務マネジメントおよび成果強化の基盤となるのが「グローバル・パフォーマンス・マネジメント(GPM)」です。日立創業の精神を踏まえ、日立がサステナブルな成長をめざす上で期待される行動を日立グループコア・コンピテンシー(行動目標)として設定し、全従業員に適用しています。上司は部下の目標達成に向けたコーチングやフィードバックを行い、パフォーマンスの継続的な改善を促して中長期的な人財育成につなげています。個人に求められる行動や能力だけでなく、自身の行動が事業の成功にどう寄与しているかを明確にすることで、仕事にやりがいを感じ、主体的に取り組める人財の育成を推進しています。

公正な評価・処遇の徹底

活動・実績

日立は、国籍を問わず多様な人財が活躍するには、人財を公正に評価・処遇するための仕組みをグローバルに構築する必要があると考え、報酬に関して「市場競争力の確保」「ペイ・フォー・パフォーマンス」「透明性の維持」を原則とする「グローバル報酬フィロソフィー」をグループ共通の基本理念とする仕組みを構築しています。
具体的には、報酬の決定にあたっては、各国・地域の報酬に関連する法令を遵守しています。例えば日本では、最低保障賃金等の遵守のため、システムによる網羅的かつ定期的なチェックを行い、違反のないことを確認しています。
また、国や地域それぞれの事業の労働市場に合わせた適切かつ競争力のある報酬体系を整備した上で報酬決定の仕組みを社員に周知し、毎年、すべての社員のパフォーマンスを評価した上で、報酬額を決定しています。
さらに、日立製作所では、すべての社員に対し、個人のパフォーマンスおよび会社業績に応じて報酬額が変動する仕組みを導入しており、評価結果に加え、「評価を通じて把握した各人の強みや改善すべき点」「今後の業務における課題・目標」をフィードバックし、個人の成長を促しています。