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ガバナンス

リスクマネジメント

リスクと機会への対応

考え方・方針

急速なデジタル化の進展やグローバルでの複雑な政治・経済情勢の変化により、事業環境は日々変化しています。日立では執行役社長を議長、CRMO(Chief Risk Management Officer)を副議長とした「リスクマネジメント会議」において、事業環境を定量面・定性面から把握・分析し、日立として備えるべき「リスク」への対応とさらなる成長「機会」の両面からリスクマネジメントを実施し、リスクをコントロールしながら収益機会を創出しています。
2024中計期間においては、経営・事業を取り巻く環境変化のスピードが上がる中、早期にリスクに対応するなどリスクマネジメント体制を強化することで、損失低減を図り、当期利益の安定を実現してきました。具体的には、為替や金利の変動などの経済環境変化やパンデミック、地政学、サイバー攻撃・情報セキュリティなど、経営に影響を及ぼしうる重大なリスクを捉え、迅速に対策を講じてきました。また人権や環境などのサステナビリティに関するリスクについても、適切な管理を行っています。
2024年度も、グローバル経営で直面するさまざまなリスクに対して、リスクマネジメント体制の強化を継続し、利益のさらなる安定化および拡大を図ります。
また、デジタル・グリーン・コネクティブの各分野において、数多くの成長機会が各地域に広がっています。このような成長機会に対し、2024年度からCSO(Chief Strategy Officer)兼CRMOに就任したブリス・コッホ執行役副社長が、各地域の成長機会を取り込んだ全社の地域戦略やグローバルリスクを捉えた経営戦略を担当し、グローバルでの事業成長を加速していきます。

リスクへの対応策

日立のリスクマネジメント体制

体制

日立では、リスクマネジメント会議のもとに、リスクに応じたワーキンググループ(WG)を設置しています。各WGでは関連するグループコーポレート機能を活用しながら、それぞれ適切なリスク管理を実施しています。

リスクマネジメント体制

図:リスクマネジメント体制

AIガバナンスに関する取り組み

活動・実績

AI利活用による生産性向上などの成果を得ることが企業にとって極めて重要となる事業環境において、日立が競争優位性を維持強化するためには、AIを積極的に利用すると同時に、AIの利活用に係るクリティカルなリスクを回避する高度な管理が求められています。
日立は2021年2月にAI倫理原則を定め、AI倫理の観点からリスク管理を図るAIガバナンスの仕組みの整備を推進しています。また、生成AIについても2023年8月に社内利用に係るガイドラインを整備するとともに、2024年3月には社外への提供用途においてもガイドラインの拡大を図るなど、AIガバナンスの継続的な進化に取り組んでいます。

グループガバナンスに関する取り組み

活動・実績

日立のグループガバナンスの在り方を明確にし、グローバル企業として各組織の責任・役割を明示することを目的に2023年4月にグループガバナンスポリシーを制定しました。
「グループ内シナジーの追求に向けたグループ戦略の立案・遂行」「共通の規律・ルールの制定による経営基盤の強化」「グローバルオペレーションの共通化による経営の効率化」を実現するグループ一体経営を推進し、経営の透明性・公平性を確保することで、日立ブランドの価値を守るとともに、社会イノベーション事業のグローバル成長を加速します。
本ポリシーの定着に向け、グループガバナンスの状況や課題の見える化を各BUにて行うためのツールを整備するなど、グループガバナンス強化の取り組みを進めています。

コンプライアンスに関する取り組み

活動・実績

2023年度の取り組みとして、倫理・コンプライアンスに関する「ビジネスパートナーの皆さまへのお願い」の策定・展開を行いました。一部の従業員に対するコンプライアンス意識調査も開始し、ベンチマーク分析等をはじめとする内部モニタリングを強化しています。また、毎年10月の「日立グループ企業倫理月間」の取り組みの一環として、経営陣メッセージの発信や従業員向け教育を実施しました。さらに、世界内部通報者デーにあわせて、さまざまなチャネルを通じ日立グローバルコンプライアンスホットラインのPRを行い、Speak Up(声を上げる)文化の醸成に努めました。
2024年度は、利益相反規則等のコンプライアンス規則の策定・強化を行うとともに、全従業員に対するコンプライアンス意識調査や倫理・コンプライアンス教育を継続して実施します。また、コンプライアンス独自監査、取引先審査プラットフォームの強化、M&Aコンプライアンスデューデリジェンスガイドラインの策定等を通じて、法令・社内規則違反を抑止する組織風土の確立に向けた活動を推進していきます。

クライシスマネジメントに関する取り組み

活動・実績

クライシスマネジメントでは危機発生時の迅速な対応をはじめとしたレジリエンスの高度化をめざしています。重大リスクテーマごとに平時から準備体制を構築し、有事の際の態勢や対応の整備を推進しています。
2023年度は、地政学的なリスクが懸念される国・地域からの退避、および事業継続に関する方針や情勢モニタリング方法の検討を実施しました。また、大規模自然災害に対する日立グループでのBCP(Business Continuity Plan)の整備・見直し支援や、サイバーセキュリティリスク事案発生時の対応指針・プロセスの明確化などコーポレート施策の強化・見直しを行い、グループ・グローバルでのさらなるレジリエンス強化を図りました。
2024年度は、大規模自然災害や国家間・地域紛争事案発生時の対策本部の設置基準の明確化など、さらなるレジリエンスの強化と実効性向上を図ります。

クライシスマネジメントに関する取り組み

図:クライシスマネジメントに関する取り組み

投融資等リスクへの取り組み

活動・実績

日立では、リスクへの適切な対応を図りながら成長機会を確保するため、投融資等(M&A・売却、受注など)の各局面において適切な意思決定の枠組みを設けています。投融資等実行時は、取締役会、経営会議、BUの3階層での審議体制の中で、案件規模やリスク内容に応じて権限委譲を行い、適切かつ機動的な意思決定を行っています。投融資戦略委員会は、グローバルな視点も踏まえて選定されたコーポレート部門の委員で構成され、重要案件については、案件が抱えるリスクと対応策、事業性等を多方面から審議し、諮問機関として執行役社長を含む経営会議へ答申(賛否含む)を行っています。実行後は、計画の達成状況を定期的にモニタリングし、計画どおり進捗していない案件では撤退を含む事業継続の是非を判断する社内制度を設け、資本効率の向上にも寄与しています。経済・金融・地政学・顧客などの日立を取り巻く事業環境(リスクと機会)の変化に対応して、投融資等案件の実行判断基準および実行後のPMIやモニタリング体制などについて継続的に強化を行い、中期経営計画の達成に向けて取り組んでいます。

意思決定の枠組み

図:意思決定の枠組み

リスクの定量的把握

活動・実績

日立は、グループ連結ベースのバランスシート上で保有する資産の種類に応じて、統計的手法により想定される最大リスク(バリュー・アット・リスク)を算出しています。また2022年度より、増大している長納期品の受注残についても、同様にリスクを定量化しています。連結純資産合計なども踏まえ、成長投資の余力などを見える化することで、成長機会を逃さず、かつリスクが日立連結の経営体力と比較して過度にアンバランスとならないよう、定期的にモニタリングを実施するなどリスクマネジメントを推進しています。また、地域・セクター別のリスクや収益性の状況についても定量的に分析・把握を行っています。

情報セキュリティに関する取り組み

活動・実績

日立は、巧妙化するサイバー攻撃によって増大する情報漏えいや操業停止などのリスクを踏まえ、価値創造とリスクマネジメントの両面からサイバーセキュリティ対策に努めることを重要な経営課題の一つと位置づけ、情報セキュリティ、サイバーセキュリティ、データプロテクションに取り組んでいます。

情報セキュリティ

気候変動によるリスクと機会への対応

活動・実績

日立は2018年6月に金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明しました。

気候変動による財務関連情報開示(TCFDに基づく開示)

これらのほか、事業等のリスクの詳細については、第155期有価証券報告書P.33をご参照ください。

第155期有価証券報告書 P.33