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Hitachi

量子コンピュータ研究

新しいコンピューティングの力を、
次の社会のために

新着ニュース

シリコン量子コンピュータ

現在のスパコンやスマホなどに使われている古典コンピュータの中で情報は「ビット」という情報の最小単位で処理が行われます。
携帯電話の通信容量でよく使われる「何ギガ」という表現も、正確には「何ギガバイト」という単位であらわされ、1ギガバイトは80億ビットという情報量を意味します。
一方、量子コンピュータでは、「量子ビット」という単位で情報を処理します。
シリコン量子コンピュータは、その量子ビットをシリコン半導体中の電子のスピンを用いて実現する技術になります。産業上、熟成した技術であるシリコン半導体技術を用いることで開発コストが抑えられ、さらに量子コンピュータの大型化に必須な高集積化が可能なことが特長です。

政府・JSTが推進する「ムーンショット型研究開発事業」の研究開発プロジェクトに
「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」が採択

政府・国立研究開発法人科学技術振興機構(略称:JST)が推進する「ムーンショット型研究開発事業」の目標6「2050 年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」(構想ディレクター:大阪大学 大学院基礎工学研究科 北川 勝浩教授)の研究開発プロジェクトのひとつとして「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」が採択されました。このプログラムマネージャを、日立製作所研究開発グループ 基礎研究センタ主管研究長の水野弘之が担当します。
本プロジェクトでは、シリコン半導体技術を駆使して大規模なシリコン量子コンピューティング技術の研究開発を行います。これにより、2030年に一定規模のNISQ*1量子コンピュータを開発、量子誤り訂正の有効性実証し、2050年には誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現をめざします。

*1)Noisy Intermediate-Scale Quantumの略称。量子ビット数が数十~数百個程度の量子コンピュータ。

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CMOSアニーリング

CMOSアニーリングは、日立が研究開発を進める組合せ最適化技術です。様々な種類の組合せ最適化問題を統一的に扱うために、イジングモデルと呼ばれる統計力学の分野で用いられてきた数理モデルを使って解きたい問題を記述し、その上で、イジングモデルの計算に特化したハードウェアを使って問題を効率的に解いていきます。2015年に最初のCMOSアニーリングマシンを発表して以来、いくつかの実装方式を開発しています。

Annealing Cloud Web

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社会への適用/実証実験事例

数理による実問題の
オープンプロブレム化

日立北大ラボが中心となって、社会課題という現実の事象を数式で表現し、マシンに入力できる形に変換するためのソフトウェア技術の開発に、世界中から組織や世代を超えて、長期間アイデアを競いながら開発する「実問題プログラミングマラソン」というアプローチで取り組んでいます。単純なベンチマークではなく、実際の問題を取り扱うことで、実用につながる高性能なアルゴリズムが考案され、量子コンピュータやCMOSアニーリングマシンの社会実装を促進します。

2019年度は、地域における買物支援サービスを、道路状況や顧客の需要変化も考慮して定式化し、従来アルゴリズム*1対して、顧客の平均待ち時間を30%以上短縮可能なアルゴリズム*2を開発しました。

*1)Lin-Kernighan-Helsgaun (LKH) アルゴリズム(巡回セールスマン問題の効率解法)
*2) H. Uchigaito, T. Shirai, Y. Iwata, N, Mertig, Y. Sugie, T. Oizumi, H. Teramoto, A. Nakamura, S. Minato, T. Komatsuzaki, and T. Takemoto, "Minimizing customer waiting time with a new delivery-tour planning algorithm based on tour
division and dynamic route optimization," In Proc. of 2020 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA 2020), Nov. 2020.

2020年度は、電気自動車等を用いて分散型小型グリッド間の電力需給安定化と人・モノの輸送を両立する新電力サービスを提案、定式化しました。これは、北海道岩見沢市で開発中の、低炭素化社会の実現と地域産業発展をめざした地域エネルギーシステムの一部となるものです。
一か月間のコンテストを通じて、参加登録者数は世界各地から1700名を超え、200を超える解答プログラムが提出されました。

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研究の歩み

2020

12月
日立北大ラボ×北海道大学コンテスト2020「未来の自律分散型まちづくり」を開催
10月
CMOSアニーリングを用いた「最適勤務シフト作成ソリューション」提供開始
9月
政府が推進する「ムーンショット型研究開発事業」の目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」に研究開発プロジェクト「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」(プロジェクトマネージャ:日立製作所 水野 弘之)が採択
4月
東京工業大学と共同で2次元シリコン量子ビットアレイの基本構造の試作に成功

2019

11月-12月
日立北大ラボと北海道大学は共同でマラソン型プログラミングコンテスト(Hitachi Hokudai Labo & Hokkaido University Contest 2019)を開催
8月
CMOSアニーリング向けの最適化アルゴリズムを拡充してGPUへ実装し、従来比250倍の高速化を実証
7月
第33回(2019年度)独創性を拓く 先端技術大賞(フジサンケイ・ビジネスアイ賞)を「大規模最適化問題を高速に解くCMOSアニーリングマシンの先駆的開発」が受賞
6月
日立ケンブリッジラボがケンブリッジ大学、CEA-LETIのパートナーと共同で、量子コンピューター向けのハイブリッド回路の動作検証に成功

2018

9月
NEDOと共同で、クラウド型計算サービス「Annealing Cloud Web」を公開
7月
日立ケンブリッジラボがケンブリッジ大学、CEA-LETIのパートナーと共同で、 Si-CMOSベースの量子ビットから情報を読み取る高感度検出器を実証

2015

2月
20,480パラメータを入力可能なCMOSアニーリングコンピュータの試作に成功
7月
日立ケンブリッジラボのチームが、Probing the limits of gate-based charge sensingを発表

2005

8月
日立ケンブリッジラボのチームが、ガリウムヒ素系半導体で、-269℃の極低温において上向き・下向きスピン観測(スピンホール効果観測)に成功