ロボティクス
日立は、豊かなコミュニケーション能力を持ち、人にとって必要なサポートを行い、さらに人と安全に共存できるサービスロボットの開発を進め、「EMIEW2」を開発しました。
機敏に動作しつつ、安全性を確保するために、「EMIEW2」はオフィスでの使用を想定した場合の最適な身長として、高さを80 cmに設定し、重さを14 kgとしました。また、人と協調したサービス作業を行うためには人と同等の移動スピードと停止時の安定した動作が必要です。そこで、移動時は「EMIEW」で開発した二輪による時速6 kmの高速移動動作を継承し、また、停止時や作業時は安定な四輪姿勢に変形できる「脚車輪型移動機構」を開発しました。
オフィスビルの床面に存在する、敷居や、マット等の段差や、床面を這うコード類を安全に乗り越えるために、EMIEW2の足回りに「アクティブサスペンション」と「空転制御技術」を組み込みました。「アクティブサスペンション」は、段差に乗り上げる時の大きな衝撃をやわらかいバネで吸収し、さらにバネの変形に伴うロボットの傾斜をアクチュエータの伸縮で補正し安定な姿勢を維持する仕組みです。また「空転制御」は、EMIEW2が段差を乗り越えたさいに車輪が浮いた場合にも、制御不能による車輪の過剰空転を抑制し、着地後に安定な走行を継続させる機能です。
オフィスビルの実環境で人と対話するためには、上下左右の様々な方向からやってくる雑音や、ロボット内部のメカが発する雑音などが存在する状況でも、人間の声を正しく認識しなければなりません。今回、EMIEW2の頭部に搭載された14本のマイクを用いてこれらの雑音を高精度に除去する技術を開発しました。EMIEW2で実績のある左右方向の音の聞き分け機能を、上下方向も含めた立体的なものに進化させるとともに、ロボット体内で発生する音専用の除去機能を加え、音声認識性能を飛躍的に向上させました。
「EMIEW 1」に搭載されていた音声コミュニケーションや歩く人の間を縫って移動できる技術(障害物回避技術*)に加えて、自ら生成した地図を用いて目的地へ自動で到達する「自律移動技術」を搭載しました。これによって、オフィスの通路や机の配置に応じて自分で経路を見つけ、行きかう人の間を縫って訪問者を目的地に案内したり、飲み物や書類を届けることが可能になります。
*障害物回避技術は、筑波大学-日立連携事業実施協定の一環として推進している坪内教授・油田産学リエゾン共同研究センター長の研究グループとの共同研究の成果を活用したものです。
項目 | 内容 |
---|---|
寸法 | 幅300 mm、奥行き250 mm、高さ800 mm |
重量 | 14kg |
移動機構 | 二輪・四輪変形 脚車輪移動機構 アダプティブサスペンション機構 |
最大速度 | 6 km/h |
最大加速度 | 2 m/s2 |
自由度 | 25自由度 |
電源 | リチウムイオン電池(動作時間:約1.5時間) |
音声認識 | 14チャンネル マイクアレイによる遠隔音声認識 |
環境認識 | レーザーレーダを用いた地図生成、位置認識 |