原子の配列や原子レベルの微小領域にある電磁場を観察・計測できる世界で唯一のホログラフィー電子顕微鏡の開発と、それを利用した応用研究に取り組んでいます。ホログラフィー電子顕微鏡の開発では、2014年に世界最高*1の43pm(ピコメートル)の分解能を有する装置を完成させました*2。応用研究では、理化学研究所をはじめ外部機関とともに各種材料内部の量子現象の実験検証や、革新的な新材料の機能発現メカニズムの解明に向けた研究を推進しています。
ホログラフィー電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡をベースに、高輝度で高い干渉性を持った電子を放出する電界放出電子銃と、電子を屈折させる電子線バイプリズムを備えることによって、電子線の波動性を最大限に活用することを可能とした特殊な電子顕微鏡です。電磁場を通過することで電子線の位相が変化することを利用して、原子レベルの分解能で電磁場などを高感度に計測できます。
日立のフェローであった外村彰が1970年代に世界で初めて実用的な装置を開発、その後、より高性能な装置開発を今に至るまで中断することなく進め、それらの装置により物理学における重要な成果をあげてきました。例えばその成果には、電子線の波動性を実証する二重スリット実験、ベクトルポテンシャルが荷電粒子線に作用することを予測したアハラノフ・ボーム(Aharonov.Bohm)効果の実証、超伝導体を貫く微弱な磁束(磁束量子)の観察などがあげられます。今後も、新しいサイエンスの発見を通じて、磁石、電池材料、超伝導材料など、グリーン社会を実現する革新的な機能性材料の開発を推進します。