ページの本文へ

Hitachi

徹底解説!一歩先のストレージ管理

確実なデータ保護を実現するコピー機能を使いこなす

②リモートコピー機能の特徴 その1 ― TrueCopy, Universal Replicator ―

国府津さん

リモートコピーは、ディザスタリカバリを目的として、遠隔地にあるストレージシステムにデータのコピーを作成することですよね

「TrueCopy」と「Universal Replicator」の違いを教えていただけますか?

長江
まずTrueCopyからご説明しましょう。一言でいうと、「正ボリュームのデータを遠隔地にあるストレージシステムにコピーし、正ボリュームと副ボリュームの同期を維持する機能」です。同期を維持するとは、正ボリュームと副ボリュームに常に同一のデータが存在することを保証するということです。

リモートコピー機能 1TrueCopy

正ボリュームのデータを遠隔地にあるストレージシステムにコピーし、正ボリュームと副ボリュームの同期を維持する機能

国府津
正ボリュームと副ボリュームが同期されていれば、正サイトで災害が発生しても、副サイトのボリュームを使って業務を再開できるので安心ですね。どのような仕組みでデータの同期を維持しているのですか?
長江
次の図をご覧ください。正サイトのストレージシステムは、ボリュームに書き込まれたデータを副サイトのボリュームにコピーします。副サイトからコピー完了の通知を受けた後、ホストサーバに書き込みが完了したことを通知します。

TrueCopyのイメージ

国府津
コピーが終わってから次のI/Oを受け付けることで、正サイトと副サイトのデータの同期を維持しているのですね。TrueCopyでデータが同期されることは嬉しいのですが、正サイトと副サイトの距離が長くなると、レスポンスが返ってくるまでの待ち時間が長くなりますよね?
長江
おっしゃる通りです。TrueCopyは、目安として100km以内の利用を想定しています。
万が一この状況で大規模な災害が発生し、正サイトも中距離にある副サイトも被害を受けると、データの保護が難しくなります。これを回避する手段として、データのコピーは非同期ですが、長距離遠隔地へのコピーを可能にした機能がUniversal Replicatorです。

リモートコピー機能 2Universal Replicator

正ボリュームのデータを長距離遠隔地にあるストレージシステムへ非同期にコピーする機能

国府津
TrueCopyとUniversal Replicatorも、お互いを補完し合う関係にあるのですね。
Universal Replicatorは、具体的にどのような仕組みなのでしょうか?
長江
次の図でご説明しましょう。ホストサーバから正ボリュームに書き込まれる更新データがコピーされ、マスタジャーナルボリュームに格納されます。このデータは、正ボリュームのI/Oとは非同期に、副サイトのリストアジャーナルボリュームにコピーされます。
リストアジャーナルボリュームから副ボリュームにデータを書き込むことで、コピーが完了します。

Universal Replicatorのイメージ

国府津
データに番号が振られているようですが?
長江
これは、データの更新順序を表しています。Universal Replicatorではデータの更新順序を維持した状態でコピーできるため、データの一貫性が保証されます。
国府津
Universal Replicatorで長距離間のデータコピーができるのは嬉しいのですが、その分、ストレージ間をつなぐFibre Channelも距離の長さに応じて必要になるため、コストがかかりそうですね…
長江
ご安心ください。日立のミッドレンジファミリー(VSP Gx00モデル)はiSCSIをサポートしています。これまでは、高価なエクステンダを用いてFibre ChannelをIPに変換していましたが、iSCSIを利用すれば、エクステンダが不要でそのままIPネットワークに接続できるため、コストを削減できます。
国府津
コスト削減はいつも頭を悩ませる問題ですので、iSCSIのサポートは嬉しいです。

応用編

TrueCopyとUniversal Replicatorを組み合わせたディザスタリカバリ

長江さん

データの同期を維持する中距離用のTrueCopyと、非同期で遠距離用のUniversal Replicatorは、お互いを補完し合う関係にあります

つまり、両方の機能を組み合わせて使えば、より万全なディザスタリカバリを実現できるのです

国府津
組み合わせて使う場合、具体的にどのような構成になるのでしょうか。
長江
基本的に2つの構成があります。1つは「3データセンターカスケード構成」、もう1つは「3データセンターマルチターゲット構成」です。下の図をご覧ください。
3データセンターカスケード構成

TrueCopyの副ボリュームを、Universal Replicatorの正ボリュームとする構成。

3データセンターカスケード構成のイメージ

正サイトが被災した場合
同期データを持つ中間サイトで業務を再開でき、副サイトへのバックアップも継続できる。
中間サイトが被災した場合
正サイトで業務を継続できるが、副サイトへのバックアップを構築する必要があるため、バックアップが中断される。
3データセンターマルチターゲット構成

正サイトのボリュームを、TrueCopyおよびUniversal Replicatorの正ボリュームとする構成。

3データセンターマルチターゲット構成のイメージ

正サイトが被災した場合
同期データを持つ副サイト1で業務を再開できるが、副サイト2へのバックアップを構築する必要があるため、バックアップが中断される。バックアップを継続する方法として、以下で説明するデルタリシンクへの対応を推奨。
中間サイトが被災した場合
正サイトで業務を継続でき、副サイト2へのバックアップも継続できる。
長江
3データセンターマルチターゲット構成で、正サイトが被災した場合でもバックアップを継続できる「デルタリシンク」についてご説明します。
3データセンターマルチターゲット構成 デルタリシンク対応

マルチターゲット構成において、副サイト1から副サイト2へ、Universal Replicatorでコピーできるように備えた構成。ただし通常運用時は使用していない。

3データセンターマルチターゲット構成 デルタリシンク対応のイメージ

国府津
この構成であれば、正サイトで災害が発生して副サイト1で業務を再開した場合でも、あらかじめ用意しておいた副サイト1から副サイト2へのUniversal Replicatorをアクティブな状態にして、バックアップを取得できますね。
長江
ここでのポイントは2つあります。第1に、業務を再開した副サイト1でデルタリシンク処理を実行すると、通常運用時は使用していなかったUniversal Replicatorが自動的にアクティブな状態になり、コピーを実行できること。第2に、副サイト1から副サイト2へのデータのコピーは、災害によって正サイトから副サイト2へ送信し切れなかった差分データだけをコピーするため、迅速にバックアップデータを復旧できることです。
国府津
なぜ、そのようなことが可能になるのでしょうか。
長江
事前に、各サイトのストレージシステムでリモートコマンドデバイスを設定しているためです。通常、サーバがストレージと通信する際には、ストレージシステム内にあるコマンドデバイスという特殊なボリュームを使用します。このコマンドデバイスを、他のストレージシステムからリモートで操作できるようにしたのが、リモートコマンドデバイスです。例えば、正サイトが使えなくなった場合に、副サイト1と副サイト2の間で、リモートコマンドデバイスを通してお互いが保有しているデータの差分をチェックします。これによって、差分データだけを副サイト2へ送信できるのです。
国府津
マルチターゲット構成を使う場合は、ぜひデルタリシンク対応にしたいですね。

次ページは最新の機能であるglobal-active device(GAD)の説明