グローバル製造業G社 役職:SCM統括部長
顧客ニーズの多様化や不測の事態などを背景にした急激な需要変動の中でG社では実際の在庫・販売状況と事前の供給計画の間に大きなズレが発生。SCM*1の指揮を執るT氏には、環境変化に迅速に追随できるサプライチェーンの実現という使命が託されていた。
製品ライフサイクルの短期化や多品種化などにより、全国に千数百ある販売店に商品を供給するG社のサプライチェーンは年々複雑化の一途をたどっていた。
「当社では、サプライチェーンがまだシンプルだったひと昔前からの慣習で、在庫配置に関しては月に一度、過去の実績値をベースにした大まかな数量で計画していました。しかし実際の販売量と計画にはどうしても誤差が生じてしまい、ある供給経路では余剰在庫が積み上がる一方で、別の経路の先につながるお客さまの小売店では欠品が多発する、といった相反的な現象が生じていました」。
そう振り返るのは、G社のSCM統括部長を務めるT氏。コスト増大と機会損失が利益を圧迫する厳しい状況を打開するには、変化に追随できるサプライチェーンが必要だった。
しかし、幅広いカテゴリーで多彩なブランドを展開するG社の製品数はバリエーションなどを含めると数千におよび、多数の拠点が結ばれるそのサプライチェーンも高度に複雑化している。
供給量や在庫の即時的な調整はもはや不可能に等しい中、T氏は経営陣から事態の解決を指示されていた。
製品の多品種化やサプライチェーンの複雑化に加え、課題解決を困難にしていたもう1つの背景が、日本の生産年齢人口の急減の中で、いまやあらゆる業界・業種が直面している慢性的な人手不足だ。入念な需要予測に基づく供給計画の立案をはじめ、製品の供給プロセス全般を管理するSCM部門の仕事は多岐にわたる。加えて近年加速するサプライチェーンの複雑化でSCM部門の業務負担は増大しており、G社のSCM統括本部もまた例外ではなかった。多拠点・多品目のサプライチェーンを抱えていたG社が、人手による精緻な需要予測やシミュレーションを諦め、過去の実績値で大まかに供給計画を立案していたのも無理からぬことだったのだ。
「このひっ迫した状況下で、変化に追随するサプライチェーンの高精度な運用管理など果たしてできるのか・・・」とT氏は不安を募らせていた。
需要変動などの環境変化にサプライチェーンが追従できない
増え続けるSCM関連業務が現場の大きな負担になっている