機械製造業A社(テーマ2) 役職:設計部門 部長
A社では設計不良の根絶に向けて、研修の拡充や検査の強化など教育と運用の両面から取り組むが、思うような成果が上がらなかった。
設計環境統合基盤の構築により、多拠点およびサプライヤーとの協調設計の円滑化を成し遂げた機械製造業A社(※)。設計リードタイムの短縮も実現し、次の攻めの一手として設計者を大幅に増員した。
しかし、その設計部門に新たな課題が浮上する。QA部門から設計不良の増加を指摘されたのだ。ここ最近歩留まり率が低下しており、調査によると、設計不良に起因するものが多いという。重大インシデントにつながる前に、早急な対策が必要だ。
設計部 部長のT氏は、設計不良の根絶をめざし、動き始める。まずは教育の徹底だ。ミスはやはり経験の浅い設計者が、知識不足から起こすケースが多かった。そこで重要な設計ルールを学ぶための研修を拡充した。さらに運用面も見直し、成果物の検査工程を強化した。設計者同士でのチェックなど検査回数を増やし、検査項目も追加したのだ。
しかし、思うように設計不良は減らなかった。
設計は、適正な材料、適正な工法をさまざまな影響因子を考慮しながら、膨大な選択肢から選び続ける作業であり、研修で代表的なルールをいくつか学んだだけでミスを見落とさない知見が身に付くものではなかった。また、講師を務めるベテラン設計者にかかる負担が業務を圧迫するというデメリットも見られた。
同様に検査工程の強化も設計者への負担を増やし、例えば業務に追われていたりするとチェックがおざなりになるケースが少なくなかった。
教育でも運用でも結果が出ない。T氏は、設計不良の根絶へ他にどのような手段があるのか、模索していた。
設計不良は多くの場合、経験の浅い設計者の知識不足が原因
一朝一夕の教育ではミスに気付けるスキルの獲得は困難
検査の強化は工数の増大を招き、本来業務を圧迫