機関投資家や一部の富裕層が利用していた高度な資産運用サービスを、気軽に利用できるようにした「ロボアドバイザーサービス」が注目されています。日立は三菱アセット・ブレインズ株式会社(以下、三菱アセット・ブレインズ)と、主に投資や資産運用の初心者を対象に投資信託の運用アドバイスを行う、ロボアドバイザーサービスを共同開発。国内金融機関向けに提供を開始しました。
FinTechサービスの一つとして、日本でも普及が進んできたのがロボアドバイザーサービスです。これは、アルゴリズムを処理するコンピュータが投資家のプロファイル(人物像)に応じて自動的に資産運用を行ってくれるサービスで、これまで金融のプロフェッショナルが提供してきたサービスをシステムが代替することで、より多くの一般投資家に安価で高度な金融サービスを提供するものです。
ロボアドバイザーは、個々の利用者ニーズに沿った金融商品の提供を中立的な立場から支援する仕組みを持っているため、金融機関に求められているフィデューシャリー・デューティー*1の取り組みへの貢献や、投資経験の少ない若年層の個人投資家などにもすそ野を拡大できる効果から、多くの金融機関で注目を集めています。
そこで日立は、投資信託コンサルティング会社として豊富な実績とノウハウを持つ三菱アセット・ブレインズと、投資信託の運用アドバイスを行うロボアドバイザーサービスを共同開発。日立のインターネットバンキング共同センタサービス「FINEMAX」のサービスメニューとして提供を開始しました。
ロボアドバイザーサービスでは、日立がFINEMAXのインターネットバンキングサービスと連携するためのインタフェース開発を担当。ロボアドバイザーのエンジンは、金融商品の営業業務を支援する預かり資産営業支援システムの提供で多くの実績を持つ三菱アセット・ブレインズが設計しました。経験豊富な投資信託アナリストの知見に基づいた同社の投資信託分析データを活用することにより、「ライフプランに基づく長期投資の動機づけ」や「特定の運用会社や顧問会社によらない商品の提示」を可能とし、“真に顧客本位の業務運営”を実現する態勢構築に貢献します。
利用イメージとしては、お客さまが金融機関の専用Webページ上で目標資産額や投資リスクの許容度などを入力するだけで、適切な資産運用ポートフォリオやこれに対応する投資信託商品の組み合わせなどを提示。インターネットバンキングサービスと連携させれば、お客さまを投資信託商品の販売Webサイトへスムーズに案内することができます。
これまで投資や資産運用の経験がない方にも興味を持ってもらうため、Webページのデザインに親しみやすいレイア ウト、フォント、色づかいを採用。お客さまはWeb画面上のイラストをクリックするだけで、目標資産額、年齢、資産形成の目 標年齢、毎月の積み立て可能額、初期 投資金額など、必要な情報を容易に入 力できます(図1)。
図1 親しみやすいユーザーインタフェース
資産運用のアドバイスや分散投資の重要性など資産運用に関する基礎知識を、分かりやすい形式で提供することで、利用者の「資産運用は難しい」という心理的ハードルを下げることが見込めます。 具体的には、投資信託のアセットクラス*2別、通貨別、投資地域別の分析データや投資リスク、期待リターンなどをグラフィカルに表示。 お客さまが目標資産額を達成するために適切な資産運用方法を提案します。
分析手法にはリスク許容度と投資意向だけでなく、ゴールベースアプローチという手法を取り入れており、「老後のため」といった比較的遠い目標から、「旅行、子どもの入学金」などの身近な目標まで、重要なライフイベントがある時期に必要となる金額(目標)を設定し、目標に向けたアドバイスを行うツールとなります。
お客さまのリスク許容度などに応じた適切な資産運用ポートフォリオの提示にあたっては、三菱アセット・ブレインズの分析データを活用するなど、実績あるノウハウやデータを活用した運用アドバイスを行います。
ロボアドバイザーサービスでは、カスタマイズにより、各金融機関が販売している初心者向けなど任意の投資信託商品の情報を提示し、シミュレーション結果の資産運用ポートフォリオに沿った、適切なファンドを表示することが可能です。これにより、お客さまの投資判断と投資行動を支援し、購入を検討するお客さま層の拡大に貢献します。また、資産運用には興味があるものの、高度な金融理論に基づいた資産運用に踏み出せなかった若年層の個人投資家などに、容易にアプローチしていくための有力なツールにもなります(図2)。
今後、日立と三菱アセット・ブレインズは、インターネットを活用する本サービスと、営業店や渉外先の対面販売で利用される預かり資産営業支援システムや顧客管理システムとの相互連携を行い、ロボアドバイザーと店頭での提案履歴を相互で一元的に管理するなど、投資信託販売のオムニチャネル化の実現と顧客ロイヤルティの向上をめざしていきます。
図2 投資信託販売支援ロボアドバイザーサービスの将来構想