世界を震撼させた新型コロナウイルスの蔓延、金融分野の規制緩和による異業種参入、スマートフォン決済の普及をはじめとするFinTechなど、さまざまな物事の予測不可能性が高まっていることを示す例は、枚挙に暇がありません。
このようにビジネス環境が目まぐるしく移り変わるVUCAの時代を生き抜くためには、ITシステムにも変化に柔軟に対応できる「アジリティの高さ」が不可欠です。しかし、長年の運用で複雑化・肥大化・ブラックボックス化してきたレガシーシステムを、一挙に刷新することが容易でないことは明らかです。
そこで本稿では、日立が推奨する実現性の高いモダナイゼーションの手法「ハイブリッドアーキテクチャー」について、ご紹介したいと思います。
モダナイゼーション(Modernization)を直訳すると「近代化」や「現代化」であることから、レガシーシステムを、最新の技術に適合した現代的なシステムへと刷新することを示すようになりました。
かつて構築されたレガシーシステムは、何十年にもわたって手が加えられてきたなかで、複雑化・肥大化・ブラックボックス化が進んでいます。
社会情勢の急変により新たなITサービスを投入しようと思っても、レガシーシステムを改修するには、かなりの時間とコストを要します。あるいは、競争環境が急変して対抗サービスを開発しようと思っても、ビジネス側が求めるスピード感でレガシーシステムを改修するのは非常に難しい作業になります。同様に、サブスクやシェアリングエコノミーのような破壊的ビジネスモデルの誕生を受け、自社のビジネスモデルを変えざるをえなくなったときでさえ、レガシーシステムが足かせとなり、ビジネス機会の損失につながることにもなりかねません。
また、ハードウェアやミドルウェアの保守期限切れに迫られているケースも散見され、レガシーシステムを利用し続けるリスクは、高まる一方です。経済産業省が公表した「DXレポート」で、レガシーシステムの課題を克服できない場合、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると指摘されていた「2025年の崖」が目前に迫る今、モダナイゼーションはもはや待ったなしのところまで来ているのです。
そうは言っても、モダナイゼーションにかけられる時間やコストは、無尽蔵にあるわけではありません。しかもレガシーシステムは企業の基幹業務を担っていることがほとんどですから、もし移行に失敗してしまったら本業のビジネスに多大な影響を及ぼす危険があります。
そこで日立では、闇雲にレガシーシステムからの脱却をめざすのではなく、現実的な制約を考慮したうえで、「レガシー資産を有効活用する部分」と「モダンに作り替える部分」を切り分け、適材適所で組み合わせた「ハイブリッドアーキテクチャー」の実現を推奨しています。
実現性のあるモダナイゼーションを計画するには、まず現状把握をしっかり行うことが重要です。現状から想定される課題を踏まえたアーキテクチャーでなければ、実現性のない絵に描いた餅になりかねないからです。
そして、モダナイゼーションの手法には一般にさまざまな定義がありますが、日立では、5R(Rehost・Revice・ReArchitecture・Rebuild・Replace)と呼ぶ定義で分類しています。これらの手法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。一般に、大きな作り替えを伴う手法ほどメリットとともにリスクも大きくなりますが、ビジネス面の要求やコスト制約、その他個々の状況によって生じるさまざまな要素によって、どの手法が最適となるかはケースバイケースです。これらを正しく評価し、メリットがデメリットを上回るように適切な手法を選択していくことで、モダナイゼーションの価値を最大化することができます。
このように、一見すると、良いこと尽くめに思えるハイブリッドアーキテクチャーですが、実は一筋縄ではいかない側面があります。ハイブリッドアーキテクチャーを実現するには、押さえておくべき技術分野がとても広範であり、それらの技術をバランスよく組み合わせなければならない難しさがあるのです。
次に、ハイブリッドアーキテクチャーの実現に向けて課題となり得る3つのポイントと、それらを解消するために日立がご提供しているサービス・ソリューションをご紹介します。
<課題1:現実に即したアーキテクチャーのグランドデザインを描くのが難しい>
長期的かつ大きな構想(グランドデザイン)を描く際に、理想的なToBe像やめざすべきゴールから逆算で考えるだけでは、予算を大幅に超える非現実的なものになりかねません。現実的なハイブリッドアーキテクチャーの青写真を描くには、相応の高度な知識と経験が求められることから、次のサービスをご用意しています。
お客さまのビジネス課題に対するToBe像の検討支援から、モダナイゼーション実施までの支援を、業務を横断して経験豊富なコンサルタントが行います。
■このようなお客さまに最適
お客さまが保有するプログラム資産を独自ツールなどで解析し、プログラムレベルの仕様情報を可視化します。この解析結果をもとに、現状使用されている範囲を明らかにして、資産のスリム化を図ります。
■このようなお客さまに最適
<課題2:マイクロサービスの適用領域、実現方法が分からない>
ハイブリッドアーキテクチャーの実現をめざすにあたり、ひとつの有効な選択肢となるマイクロサービス化。しかし、マイクロサービス開発には特有の技術的な難しさがあり、エンタープライズシステムとして求められるさまざまな要件を満たしたアーキテクチャーを設計するのは、容易なことではありません。そこで日立では、次のソリューションをご提供しています。
従来型のシステムアーキテクチャー(モノリシック)からマイクロサービスアーキテクチャーへのシフトを支援します。マイクロサービスアーキテクチャーの設計支援に加えて、クラウドやコンテナなどのインフラ環境の設計・構築のほか、アジャイル開発やDevOpsなどの開発プロセスの策定や開発環境の設計・構築といった、マイクロサービスアーキテクチャーの導入時に必要となるさまざまな技術支援を行います。
■このようなお客さまに最適
<課題3:マイクロサービス実装の難易度が高い>
マイクロサービスの開発においては、複雑で高度な専門知識や技術力が必要です。ひとつのアプリケーションを複数のサービスに分割するため、サービス間の通信制御やログ、トレースなどの開発量が増えてしまいます。また、サービスによって通信やデプロイの方式が異なり、ログやトレースの使い分けも難しいことから、変更に工数が掛かってしまうことがあるのです。そこで日立では、次のような開発基盤をご用意しています。
アジャイル開発やクラウドを駆使した開発を得意とする日立のグループ会社GlobalLogicで用いられているマイクロサービスのフレームワークを日本向けに整備・強化した「Hitachi Microservices Platform」と、国内の大規模プロジェクトへのマイクロサービスの適用を支援する開発ツール「Justwareマイクロサービスフレームワーク」をご提供しています。
これらをご活用いただくことで、難易度の高いマイクロサービスの共通機能の作り込みを大幅に簡素化し、マイクロサービスに精通していない技術者の方でも、容易かつスピーディーに開発することが可能となります。
■このようなお客さまに最適
今回の語り手:アプリケーションサービス事業部 APモダナイゼーション推進部 木村誠さん
語り手より
このように、日立ではお客さまのモダナイゼーションを支援するサービス・ソリューションを体系的に提供しており、コンサルティング(計画)から開発〜運用まで一貫してご支援することが可能です。「ちょっと相談したい」というレベルで構いませんので、ぜひお声がけいただき、お客さまにとって最適なモダナイゼーションを一緒に検討させていただければと思います。