多くの生活者がスマートフォンを使ってネットショッピングやSNSなどを楽しむようになり、デジタルで情報収集や情報発信を行うのが当たり前になっています。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって、リモートワークが普及したことで、これまで以上にさまざまなデジタルツールを使いこなす人も増えたのではないでしょうか。
このような生活者の行動の変化を迅速に察知し、多様化するニーズに的確に応えていくには、デジタル上に溢れる人々の声を集め、サービス向上や商品開発に生かすことが大切になります。加えて、お客さまにせよ、従業員にせよ、対面する機会が減ったことによるエンゲージメントの低下を防ぐ手段を検討する必要もあります。
そこで昨今、注目されているのが、「CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)」や「EX(エンプロイーエクスペリエンス:従業員体験価値)」の向上を図るアプローチです。本稿ではCX/EXの向上を実現する方法について、ご紹介します。
まずはCXについて見てみましょう。成熟した日本社会では、「モノ消費からコト消費へ」と、人々の消費傾向が移り変わったと言われています。生活者は単にモノを所有することに価値を見出しているのではなく、その商品・サービスとの出逢いから検討、購入、使用までを含めた、一連の“体験”を手に入れることに重きを置いているのです。
そして多くの場合、その体験に満足した人は、SNSで自身の感動をシェアします。SNS上で「いいね」をもらったり、コメントでやりとりをしたりしながら、その感動を分かち合うことで、体験価値はさらに高まることになります。
このようにSNSの普及により、デジタル上には“生活者が自ら発信したリアルな声”で溢れるようになりました。せっかくあるこの宝の山を有効に使わない手はありません。そうして生活者のニーズを反映した良質な体験を提供することで、生活者が企業の代弁者となって、その価値を発信してくれる好循環を生み出すことが可能となります。
他方、EXについては、どうでしょうか。総務省の「2021年労働力調査」 *によると、2016年からの5年間で転職等希望者数は1割ほど増えており、約900万人に上ることがわかりました。人材の流動化が高まることは、一見いいことのように思えるかもしれませんが、労働力市場が縮小の一途を辿る日本では、優れた人的資本を外部から調達するのは容易なことではありません。
また、昨今、人的資本経営への注目が高まる中、従業員が恒常的に高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが、重要な経営課題として捉えられるようにもなっています。
そのためには、今いる従業員エンゲージメントの向上を追求しながら、一人ひとりの能力を最大限に引き出し、企業のミッション・ビジョン・バリューに対する共感度を高めていくことが不可欠です。
では、CXやEXを向上させるには、どうすれば良いのでしょうか。どんな施策を打つにせよ、最初にすべきことは現状の可視化です。
SNSをはじめとするデジタルデータを収集・蓄積し、その中からお客さまや従業員の“感情”や“共感度”を見える化します。その上で、自社にとって有効なデータを抽出して、定量的に分析できる環境を整えましょう。そして、そこから導き出した課題を洗い出し、具体的な施策へと落とし込んでいくのです。
これらを実現するには、膨大なデータを処理するテクノロジーの力が欠かせません。そこで日立の「感性分析サービス」と「共感モニタリングサービス」を活用することで、CX/EX向上のために何ができるのかを、具体的に見ていきましょう。
Twitterなどで収集したテキストデータを、約1,300種類の話題・感情・意図に分類できるAI技術を適用した感性分析サービスを使うことで、生活者がどのような感情を抱いているのか、高度に分析できるようになります。玉石混交のテキストデータから不要データを除去した上で、満足・賞賛・落胆など81種類の感情に分類。このうち「要望」を軸にお客さまの声を整理することで、新たなニーズや市場で不足しているものが浮かび上がり、次の商品企画に活用することができます。
ESG投資の隆盛により、投資家が非財務情報を評価する傾向が高まる今、企業は人権やモラルに配慮したビジネスプロセスが求められるようになっています。同時に、生活者が企業を見る目も日に日に厳しくなっており、SNS上で炎上の兆候をいち早く検知できるようにしておくことがリスクヘッジとなります。そこで有効なのが、日立の感性分析サービスに搭載された「モラル分析」機能です。学術的に裏付けられた道徳基盤辞書を用いて「擁護・公正・内集団・権威・純潔」のいずれかに分類することで、炎上の兆候を時系列推移から読み取ることが可能です。感情の裏に隠された道徳的な価値観を可視化することで、いざというときに迅速な対応を取るための備えとなります。
共感モニタリングサービスでは、任意の文書を対象者に送付して、“どこがどう感じたか”をタグ付けしてもらうことで、共感度合いを可視化することができます。企業理念や会社パンフレットなどを従業員の方々に提示してサーベイを行うことで、従業員が企業のメッセージをどう受け止めているのかを把握できるほか、サーベイに回答する行為そのものがメッセージの理解・浸透を促進することになることから、従業員エンゲージメントが高まり、一体感のある強い組織づくりにつながるメリットがあります。
このようにCX/EX向上に向けた取り組みを行うことは、さまざまな側面において、企業に対するエンゲージメントを向上させ、“選ばれる企業”になることを後押しします。そこで改めて、日立が提供するCX/EX向上を実現する2つのサービスについて、それぞれご紹介します。
SNSや口コミサイトの情報、マスメディアの情報、コールセンターの会話記録などから、企業や商品に対するお客さまの声や感情を高精度に可視化するサービスです。
感性分析サービスでは、「感情分析」「モラル分析」「意外性分析」を組み合わせることで、組織の強みを活かした商品企画やプロモーションだけでなく、ネガティブな情報をいち早く汲み取ることで、炎上の検知にも役立てることが可能。日立では、データの収集・分析・可視化から、絞り込み条件の自動メンテナンスといった運用保守までをトータルでサポートします。
マーケティング・ブランド論・消費者心理学などを専門とする一橋大学大学院 阿久津研究室と共同で開発した本サービスは、マーケティングなどで使われる調査手法を応用した独自のサーベイ・分析手法を用いています。企業が届けたいメッセージ性のある文書や動画、セミナーなどに対する、受け手の「共感度合い」とその背景にある「原因構造」を可視化・分析し、改善に向けた施策立案までをトータルでサポートするものです。
インターナルブランディングへの活用のみならず、企業が社外に発信するコンテンツや商品ブランドイメージへの共感度合いの分析など、マーケティングやブランド戦略に向けたサーベイに活用することで、商品・サービスのブランド力や価値向上にもお役立ていただけます。
優れたCX/EXの実現に向けた取り組みは、お客さまや従業員のリアルな声に耳を傾けるところから始まります。日立の感性分析サービスや共感モニタリングサービスにご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。