2018年7月
各国の政府や中央銀行が、金融機関にAPIの公開を求め始めている。
金融機関におけるAPIの公開とは、銀行と外部のサードパーティーとの間の安全なデータ連携を可能にする仕組みを指す。
日本においても、2017年に銀行法が改正され、外部のアイデアを活用して新たなサービスを生み出そうという、いわゆるオープンイノベーションを推進するための法律が整備されている。銀行は、安全かつスムーズにAPIが提供できることで、Fintech企業との連携が加速され、新たなサービスが生み出しやすくなるのである。
そこで注目されているのが、銀行が保有している顧客の資産残高情報や入出金履歴情報を外部のサービスで活用する「オープンバンキング」である。
すでに、メガバンクや一部の金融機関で先行して取り組んでいるが、地方銀行がオープンバンキングに取り組むことへの期待は大きい。なぜならば、地方銀行におけるオープンバンキングは、地方創生のひとつのカギであり、各地域で推進することが日本全体の活力を上げることにつながるからである。
しかしながら、いま地方銀行を取り巻く環境は厳しい。
地域の人口減少、低金利の長期化による収益悪化、資金需要の伸び悩み…。こうした逆風が吹き続ける中、地方銀行の未来を切り拓き、地域経済を活性化させるのに必要なのは、従来にはない新しいビジネスモデルの創出である。その糸口となるのが、地方銀行によるオープンバンキングだ。
APIを公開することで、Fintech企業と連携して新サービスを展開したり、地域に密着したサービスを提供したりすることが可能となるのである。
オープンAPIの必要性に迫られているものの、実際には「セキュリティが不明瞭」「活用方法がわからない」という課題も耳にする。
長年にわたり金融機関のシステム構築・運用を支えてきた日立では、2016年からオープンAPI化に向けたサービスを提供し、オープンイノベーションに積極的に取り組んでいる。
例えばインターネットバンキングをオープンAPI化するサービスでは、お客様のネットバンキング用ID/パスワードをFintechサービスに登録することなく預金口座残高や入出金履歴などのデータ連携をセキュアに実現できる。これにより、銀行側は一部のインターネットバンキングの機能をよりお客様にフォーカスしたユーザインタフェースで提供することができるのだ。多くの金融機関で採用しているオープンAPIは、こうしたインターネットバンキングの機能を活用したものである。
しかし、地方銀行のオープンバンキングが、単なるFintech企業とのサービス連携に留まってはならない。日立では、インターネットバンキングの機能に留まらず、銀行の基幹系システムや関連システムにおける取引全般のオープンAPI化に取り組んでいる。これにより、銀行が保有する地域企業や地方自治体などの情報、あるいはAPI連携先が保有する情報といった、あらゆる情報を銀行が扱えるようになるのだ。そして、それらの情報を活用したサービスの提供が可能となり、さらなるビジネスの発展が期待できる。
地方銀行の強みは地元企業との強い信頼関係とネットワーク力である。この強みを最大限に生かしたサービス提供こそが、地方創生へとつながり、地方銀行の未来を切り拓く活路となる。
例えば、ネットショップと連携して地域の特産品を紹介したり、ネットワーク力を生かして地域企業の課題を解決してくれる企業を紹介する「ビジネスマッチング」などにも力を入れられる。
また、オープンAPIの利用で登場する新たなオンラインチャネルと、レガシーチャネル(ATMや営業店舗)の情報を連携することで、例えばローンや資産運用でお悩みのお客様をオンラインチャネルのサービスから営業店にご案内することも可能となる。
新たなサービス創出の可能性は無限大だ。お客様は利便性が向上し、銀行はお客様との対話による収益機会の増大が見込める。地域企業は、銀行との協業により収益機会を増大でき、地域経済の発展にもつながっていく。
日立が提供するオープンAPI化のサービスは、これらのことを可能とするサービスである。地域の独自性を生かせる自由度の高いサービスであり、Fintech企業との協業はもちろんのこと、銀行自身が地域の多種多様な業種と連携してあらゆるサービスを生み出すことを可能としている。
こうしたエコシステムの形成は新たなビジネスモデルを創出し、ビジネス戦略を大きく加速させていくであろう。
地方銀行の未来を支えるベストパートナーとして、地域経済を活性化するイノベーションの創出に貢献していきたいと日立は考えている。