ページの本文へ

概要

世界的なネットワーク環境の普及は、1企業内のサブシステム連携のみではなく、複数企業間のM&Aが発生した場合においても、ネットワークを介したシステム統合を可能にしました。従来、このようなシステム連携を設計する際、連携対象のシステム同士で申し合わせメッセージ形式を独自に定義することで、ネットワーク通信のための帯域確保やターンアラウンドの性能向上を図ってきました。このようなメッセージ形式は、ネットワーク環境が通常業務のボトルネックにならないように最適化された代わりに、可読性や汎用性を犠牲にしました。そのため、

  • 通信メッセージ変更の際は、連携対象の全システムの見直しが必要となる
  • 連携対象のシステムを増減する際、対象システム間でのメッセージ形式の調整によりプログラムを変更する必要が生じ、莫大なコストや期間が必要となる

などの問題が発生しました。
昨今、高性能コンピュータの普及やネットワーク性能の向上により、これらの問題の多くが解決されつつあります。XMLメッセージ形式は、個々のデータ項目に対して、可読性が高いタグを付加でき、かつ、コンピュータシステムが処理しやすいツリー構造の文章構造を持つことで、システム開発の短期間/低コスト化が可能になります。

金融機関における動向

金融業界においても、銀行間の支払い指示や証券取引におけるISO20022、デリバティブ取引分野におけるFpML(*1)、損保業界におけるACORD(*2)など、XMLメッセージ形式の標準化が進められています。特にISO20022は、欧州におけるユーロ圏での域内の小口金融決済を国内決済と同様に行うことを可能とするSEPA(Single Euro Payments Area、単一ユーロ支払地域)決済のメッセージ形式に採用されました。日本においてもISO20022は、全国銀行協会の2011年11月稼動予定の第6次全銀システムにおいての採用が決定され、(株)証券保管振替機構の決済照合システム・振替システムにおいても2014年を目標に導入が検討されています。

XMLメッセージ形式利用のメリット

メッセージ連携を必要とするシステムでは、多くの場合、メッセージ設計とシステム設計を極力独立して設計し、それぞれに冗長性を持たせることで、外部環境の変化による影響を抑えます。XMLメッセージ形式を採用した場合、以下のような利点が考えられます。

  • XMLメッセージ形式は、外部要因に基づくデータ項目の追加変更に強く、連携対象システムへの影響が少ない
  • 各プラットフォームで提供されているXMLパーサは、XMLメッセージ形式の読み取りや解析、変換に利用可能であり、個別作り込みの必要がない
  • MDA(モデルドリブンアーキテクチャ)との親和性が高いため、多くのツールがXMLメッセージ形式に関わる処理の一部を自動生成可能な機能を提供している

日立の対応について

今後金融機関のシステムは、外部メッセージにおけるXMLメッセージ形式の普及に伴い、XMLへの対応を迫られることも予想されます。その際、日立においては内部システムのXML対応は勿論のこと、XMLメッセージ形式と従来のフォーマットの変換を提供することにより内部システムの変更を行わずに対応することも可能です。また、XMLは人間にも理解しやすいために、そのトレードオフとしてセキュリティが脆弱化する場合があるというデメリットもありますが、日立はSOA基盤におけるXMLメッセージへの暗号化や電子署名の付与など、セキュリティの面でも十分な対策が提供可能です。日立ではコンサルテーションからXMLの処理基盤の構築、アプリケーションの開発まで、XMLシステムの開発に一貫して対応いたします。

*1
FpML :Financial products Markup Language
*2
ACORD :Association for Cooperative Operations Research and Development