これまでに展開してきた計画最適化ソリューションにはどのような導入事例があるのでしょうか。
塚越氏
家電メーカーのPSI(生産、販売、在庫)計画で、実際のお客さまのデータを使って生産計画を検証した事例があります。お客さまの要件を満たすためのアルゴリズムは木内とともに検討、開発しました。
お客さまが生産計画を作るときは、生産能力のキャパシティーと需要から毎日の生産量を調整しなければなりません。需要が多い場合は生産能力を超えた生産量を求められるので、それをどうやって前後に振り分けてならすのか、といったアルゴリズムの開発が難しかったですね。もちろん1製品だけを生産しているわけではないので工場のラインの段取り替えも必要になりますが、これもできるだけやりたくないという思いもあります。そういった制約の中で最善を尽くすのが難しかったですね。
木内氏
そういった開発においては、計画最適化ソリューションとしての専用品と汎用(はんよう)品のトレードオフがあります。ベースラインとしてクリアするところは達成して、そこから先は個別のカスタマイズを入れて要件を達成しよう、といった話を開発の定例会議の場でやっていましたね。
齋藤氏
現在進行形の事例ですが、私が関わっている飲料メーカーの案件と西田が担当している容器メーカーの案件をサプライチェーンで連動させる取り組みがあります。それら2社で終わらせるつもりもなくて、小売や包材メーカーなどバリューチェーン上のステークホルダー全体に広げて、ゆくゆくは競合も含め業界全体に広げられればと考えています。
西田氏
特に飲食品業界はそうなのですが、発注元とサプライヤーの関係が多対多になっているんですね。そうであれば、サプライチェーン上のさまざまな企業をつなぐことで、より高度な次元で最適化できるんじゃないかと思っています。
一定の成果を収めつつある計画最適化ソリューションについて、今後のどのような取り組みを進めたいと考えていますか。
齋藤氏
SCM全体を最適化しようという中で、今まではちょっと実現が難しかった価値の創出に着眼したいと思っています。社会価値や環境価値って、経済価値とは違って一社だけでは出しにくいところがあります。CO2の排出量削減もサプライチェーン全体の最適化によって実現できるんじゃないかと。全体でやっていくことで生み出せる価値があるはずなので、その部分に取り組んでいきたいと思っています。
西田氏
先ほど挙げた企業間連携の事例で言えば、これまで日立は個々のお客さまそれぞれのSCM業務を最適化しましょう、という取り組みをしてきたと思います。これからはさらに視座を高くして、業界におけるSCM全体の最適化を求める取り組みをしたいですね。そうした場所でこそ、日立の強みを発揮できると思っています。
木内氏
今興味があるのは、人と対話できるような最適化ソリューションですね。今われわれが提案しているのは、どちらかというとスイッチを押すとガラガラポンと計画が出てくるものです。出てきた計画案をどう使うかは人が判断するんですが、お客さまの意図をくみ取り、計画立案するサイクルが必要ではないかと。経営やビジネスの状況は変化します。それに合わせてお客さま側で見直せる仕掛けを作りたいなと思っています。
塚越氏
計画業務と一口に言っても、生産や要員シフトなどいろいろな計画があります。技術にもいろいろなものがあって、その計画の実現にどの技術を使ったらよいのか判断するのは結構難しいんです。私はまだ一つの技術の理解で手いっぱいなのですが、将来的にはお客さまの困り事を聞いて日立の技術のどれが適しているのか、どれを組み合わせることで課題解決できるか判断して提案できるようになりたいと思っています。
転載元:MONOist
MONOist 2024年1月31日掲載記事より転載
本記事はMONOistより許諾を得て掲載しています。