製造業が生産や物流、要員シフトといった事業活動を行う際に必要になるのが「計画」だ。日立は、激化する社会環境の変化に合わせて最適な計画の立案を自動化するための「計画最適化ソリューション」を展開している。同ソリューションの強みについて4人の担当者に語ってもらった。
企業経営の基本が「計画」だ。特に製造業においては、生産や物流はもとより要員シフトなどを含むさまざまな場面で計画を立案し、その計画に沿って現場を動かすことが重要になる。ただし市場や流通、調達などの環境は日々変動しており、固定化された計画を長年にわたって適用するのは無理がある。無駄や無理がない業務を常に効率良く実行するには、変化する環境に合わせて計画を最適化する必要がある。
この“計画最適化”を可能にするソリューションを展開しているのが日立製作所(以下、日立)だ。本稿では、日立の計画最適化ソリューションを強力に推進する中堅〜若手の気鋭メンバーに、その魅力や日立の強みを語ってもらった。
参加者は、コンサルティング担当の齋藤美沙紀氏、システムエンジニアの西田裕貴氏と塚越祥美氏、技術開発担当の木内敦規氏の4人だ。
日立コンサルティング 社会イノベーションドメイン 社会DXディビジョン シニアコンサルタントの齋藤美沙紀氏
日立が提供する計画最適化ソリューションとはどのようなものですか。
齋藤氏
例えば製造業のサプライチェーンには多様な工程があり、さまざまな意思決定が行われています。その意思決定は、「ここではこれだけしか作れないが、これだけの数を出荷しなきゃいけない」といった多くの要素や理由により生産や調達などのさまざまな計画を立てた上で行われています。
ただし従来の計画は、さまざまなスキルや考えを持った人が理由を人の力で考えて立てており、いわゆる属人化した状態でした。これをAI(人工知能)などに任せて「自動で計画を立てられないか」というのが日立の計画最適化ソリューションの軸になっています。
日立製作所 インダストリアルデジタルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 エンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第一システム部の西田裕貴氏
西田氏
製造業では、この属人化の問題がかなり深刻になっています。特にSCM(サプライチェーンマネジメント)領域では、計画を立てる際の場所や数量などの決め方一つ取っても業態によってかなり考え方が異なります。
これまでは、各業界の熟練の担当者が気合と根性と経験に基づいて頑張っていた部分があります。しかし、いろいろな課題が複雑に絡み合っている現代では、人の力だけで対応するのは無理な状況になりつつあります。また属人化した計画では、人が変わると計画の質が落ちるという危険性も見えてきました。
であれば、まずお客さまの業務や計画に寄り添って、属人化したノウハウをきちんと整理して明文化しましょうと。そこで明文化できたものは、数式に変換できる可能性があります。数式に変換できれば、それを数理最適化のモデルに落とし込むことで、AIやコンピュータで課題を解決できる世界につなげられます。
こういう形にすることで担当者の業務負荷を大きく下げられ、人が変わることによって生じていた質のブレも減らせます。これが計画最適化ソリューションが狙っているところです。
日立製作所 研究開発グループ コネクティブオートメーションイノベーションセンタ 産業オートメーション研究部 研究員の木内敦規氏
「技術の日立」と呼ばれることもありますが、日立の計画最適化ソリューションの技術的な強みはどこにありますか。
木内氏
強みという意味では、計画最適化に関わる技術全体を理解しているという点でしょうか。日立が扱う計画最適化ソリューションには、日立が独自に作っているものと外部から調達しているものがあります。作ろうと思えば日立社内で全てを作れなくはないのですが、コストや技術的な制約などに応じて外部から調達することがあります。
ただ、調達したものがお客さまにとって最適ではない場合もあります。何かに特化したシステムの場合、調達したそのままの状態ではお客さまに提供できないことがあります。自転車で例えるなら「ロードバイクはすごく速いんだけど、荷物を載せられないので一般生活では使いにくい」、みたいな。
日立の強みは、そこで「荷物が載るようにカゴを後ろに付けましょう」や、「荷物が重い場合に備えて電動アシストを付けましょう」など、主目的以外の要件を考慮できるカスタマイズをやれるというところでしょうか。やはり技術そのものを理解していないとカゴや電動アシストをどこにどうやって付けたらよいかが分からないと思いますし。
それから、外部から調達したものがライセンスをはじめとする要因などで使えなくなっても、日立なら別のものに組み換えたりオリジナルで作れる部分と組み合わせたりできる。そういうことに対応できるのが日立の技術的な価値、強みかなと考えています。
日立製作所 インダストリアルデジタルビジネスユニット デジタルソリューション事業統括本部 産業デジタルソリューション開発本部 ソリューション開発部 技師の塚越祥美氏
ソリューション提供においては、技術だけでなくユーザーの要望に対応するためのナレッジや人財も必要です。
塚越氏
日立は計画最適化のソリューションを数多く手掛けており、いろいろな分野、業種や業態での多くのナレッジを蓄積しています。
これらのナレッジは、もちろんただ蓄積するだけではありません。コンサルティングではそれをフレームワーク化してもいます。お客さまにソリューションを提案するときには、過去にどういう形態でどういう技術を使ったらうまくいったか、という経験がとても役立ちます。実際の経験から出来上がったフレームワークがあると、お客さまの要望を実現するソリューションを無駄なく短時間で提供できます。
齋藤氏
私が最適化の業務についた5年ほど前は、私の部署には最適化の人財がそんなにそろっていたわけではありませんでした。上長もそこまで詳しいわけではなくて「一緒にやっていこう」みたいな感じで。
今は、最適化の実績が積み重なって知見も多く得られています。そこで、それらの知見を整理して最適化ができる人財を社内教育で作っていく取り組みが始まっています。コンサルティング人材としては、豊富な業務知識を生かし、お客さまの業務・意思決定の理由を明文化するところに強みを持って、お客さまに寄り添って最適化を推進できる人財を育成する動きが盛んになっています。
西田氏
日立はいろいろな業種や分野で計画最適化ソリューションを提供しています。ナレッジや人財も、それぞれの分野で充実している状態だと思います。ただこれまではそうした知見が各業界に点在していましたが、今は全社で統合して連携しようという形になり、ちょうどプラットフォームとして出来上がってきています。
最近の動きとして面白いと思うのは、お客さまに近いフロントにいるコンサルタントやシステムエンジニアと、その裏でモデルを構築するプログラマーの3層のレイヤーで知見が混ざり合ってきていることですね。中心とする担当業務はそれぞれ違うんですが、メンバーの誰がお客さまのところに行ってもお客さまの業務の話もできるし、全体としてどういう形でモデル化して最適化しましょうという話もできます。