このような状況をふまえ、日立はリテールビジネスに取り組む企業の皆さまに何ができるのかーー。ここでは、日立リテールビジョン2030でかかげる「需要と配送の"自律化"」「サプライチェーンの"つながり"」「生活者の"幸せ"」の3段階の取り組みについてお伝えいたします。
まずは「需要と配送の"自律化"」です。サプライチェーンの最適化を図るため、日立はこれまでリテールビジネスを展開する数多くのお客さまをご支援してきました。例えば、三井物産株式会社とは、AIを活用した配送の最適化を実現しています。ドライバー不足による配送ルートの効率化や自動化を実現すべく、配送計画の自動化やドライバーの帰り便の有効活用、ドライバーの働き方にマッチした計画立案を実現し、トラック台数を最大で10%*削減しました。
また、合同会社西友では、弁当・惣菜売場での最適な発注数をご提案し、自動発注による省力化と食品廃棄ロス削減に寄与しています。AIを活用した需要予測システムにより、今後は対象となる商品をさらに増やしていく予定です。
このようなAIを活用した需要予測や配送最適化は今後ブラッシュアップを重ね、リテールビジネスを手がける企業さまに価値を提供し続けます。そして、この段階をクリアした先に「サプライチェーンの"つながり"」を生み出します。
サプライチェーンが抱えている問題の1つに「物流データの分断」が挙げられます。どこでリソース不足が発生して、逆に余っているのか。物流データの分断が発生すると、地域のサプライチェーンですら、どこにボトルネックを抱えているか見えません。そこで日立が持つ「データをつなげる」という強みを生かして、物流データを共有する「物流連携プラットフォーム」を構築し、物流に関わる企業や個人事業主のデータをつなげてシェアできる環境を開発します。これにより、サプライチェーンの先にいる消費者も欲しいものが早く確実に手に入る状態になり、満足度がさらに向上するでしょう。
最後の段階は「生活者の"幸せ"」です。スマートフォンの普及などでデジタル化が進み、消費者のタッチポイントやサービスの利用方法はますます多様化しています。これに伴い、消費者のニーズも多様になり、需要予測はさらに難度を増すでしょう。そこで、第2段階までに築いた物流連携プラットフォームをベースに、生活者の行動データなどを加えて「嗜好(しこう)インサイト分析」を行い、潜在需要を見出していきます。この潜在需要をサプライチェーン上の各サプライヤーと共有することで、生活者を「察するマーケティング」が実現し、生産や物流のムリ、ムダが解消されて環境や社会に優しい未来が訪れます。また生活者にとっても、自分では気づかないニーズが発見できてQoL向上につながるでしょう。
ここでお伝えしたことは、日立がかかげるビジョンです。日立リテールビジョン2030 に込めた想いが伝わりましたら、うれしく思います。
2030年に向けたリテールビジョン
QoL:Quality of Life
SDGs:Sustainable Development Goals