サポートサービスの重要な要素である「人」。その中にも様々な役割が日立には存在する。エンジニアが障害解決のエキスパートなら、今回紹介するアカウントマネージャーはお客さま視点での問題解決のエキスパートだ。アカウントマネージャーは、技術的なことだけでなく、お客さまに実際にお会いして、わかること、伝わることに重きを置き、お客さまの状況を理解して問題解決を図ることを使命とする。そして、製品ごとのプロフェッショナルを、有機的に顧客システムの構成に応じて、案件をとりまとめ、綿密な連携を可能にする仕事人がアカウントマネージャーでもある。
今回は、自らもアカウントマネージャーとして陣頭に立ち、日立のアカウントマネージャーの仕掛け人である深石雅弘がその使命を説き明かす。
日立サポート360は、様々な事象を製品の切り口からではなく、システム全体の視点で判断/対応することに重きを置く商品です。
アカウントマネージャーは、お客さまに対しては、お客さまシステムを把握した親身なサービスを提供する専従者として、そして日立内部では、製品に熟知した技術者たちが、より案件に集中できるよう取りまとめる中軸として機能しています。
ホテルで例えるなら、バトラーの役割に近いと私は考えています。コンシェルジュはホテル利用のお客さまの全てを対象とし、サービスを提供しますが、バトラーは、お客さまのお部屋に専属でサービスを提供します。よりお客さまの状況・要望を理解して、サービスを提供します。私たちは、自分たちをサポートサービスのバトラーだと考えています。
サポートサービスのバトラーとして、私たちはお客さまと接するうえで心がけていることがあります。それが「正確性」「迅速性」「マナー」「説明のわかりやすさ」「情報提供の十分性」の5要素です。
「マナー」については、また別の機会にお話しできればと思いますが、「正確性」「迅速性」「説明のわかりやすさ」「情報提供の十分性」については、お客さまをどれだけ深く理解するかが鍵となってきます。お客さまの状況を真に理解することで、正確・迅速な回答ができるわけですし、お客さまの業務を理解すれば、お客さまにとってわかりやすい説明ができます。そして、お客さまが必要としている情報を十分に提供することができるのです。
それでは、私たちが普段取り組んでいることをご紹介します。アカウントマネージャーの仕事は、実際にお客さまにお会いする前から始まっています。
オール日立で一体感のあるサービスを提供するため、お客さま担当の営業、SE、設計部門、品質保証部門、そしてアカウントマネージャーでお客さまシステムの事前把握を実施します。お客さま業務の概要、お客さまシステムの構成、お客さまシステムでの製品の使用用途、パラメータ設計書、運用方式など、お客さまを支援するために必要な情報を把握します。
お客さまシステムでの障害を想定しリハーサルを実施します。リハーサルを通して、作業手順の問題点を摘出します。
サービス開始前に、アカウントマネージャーがお客さま先に出向き、ご挨拶とアカウントマネージャーのサービス内容についてご説明します。ここでお客さまに納得いただけるサービスの形をすり合わせします。
サービス開始前に、アカウントマネージャーがお客さま先に出向き、ご挨拶とアカウントマネージャーのサービス内容についてご説明します。ここでお客さまに納得いただけるサービスの形をすり合わせします。
お客さまシステムが開発環境から本番環境に移行する場合、円滑に本番環境に移行できるよう、アカウントマネージャーの支援が必要となることもあります。支援範囲は、製品のベターユースから、設定・運用方法にまで踏み込む場合もあります。
万一、お客さまのシステムに障害が発生した場合、アカウントマネージャーが第一にすることは、お客さまのビジネスインパクトを判断することです。例えば、いつまで障害回避しなければいけないか、障害がお客さまの業務に与える影響などを正確に把握し、応じたスピード感を持って対応します。
そして、日立内で関係者を召集してアカウントマネージャー主導の対策会議を開催します。お客さまのビジネスインパクトを参加者で共有して、どのようにすれば最善の解決を図れるか検討します。さらにアカントマネージャーは、調査における日立内の指揮、調査状況を正確に把握し、お客さまのご希望に応じて、進捗状況や中間報告を実施します。また、現地での障害対策作業、障害解決までお客さまシステムを監視します。
障害調査のために、大規模な再現テストが必要な場合は、お客さまシステムを模した再現環境を用意します。再現テストはいくつかのフェーズにわけて、作業実施者と分析・解析者をアサインし実施することが多いですね。
システムが起動しないなどの現象で、お客さま業務の稼働が見込めない場合や、お客さまの業務に支障をきたしていて、現地対応が必要な場合など、アカウントマネージャーが現地にてサポートを実施します。実際の調査支援はもちろんのこと、アカウントマネージャーは、肌で感じた状況を日立内で調査にあたる技術者たちに伝え、お客さまの業務にとって最適な解決策を見いだせるよう指揮をとります。
お客さまのシステム運用を考慮したうえで、アカウントマネージャーが調査結果を報告します。ご希望に応じて、現地での報告も実施します。
お客さまシステムが安定して稼働している状態においても、アカウントマネージャーはシステム構成製品の品質状況の報告、お客さまシステムの運用イベントの把握、製品やサポートに対するお客さま要望のヒアリングなどを、お客さまとface to faceで実施します。
アカウントマネージャーは、日立が2000年にサポートサービスの提供を開始した3年後の2003年に誕生しました。これ以前は、お客さまのビジネスインパクトを理解した迅速な対応が求められる場合は、お客さまは営業・SEにご要望いただくのが、世上として一般的でした。日立はそうしたご要望に迅速に対応するため、サポートサービスが認知され始めた早期からアカウントサービスに着目しました。
2003年の発足当初は、お客さまシステムに問題が発生したら現地に駆けつけてがむしゃらに対応するといった、手さぐり状態でした。この時に、お客さまにご迷惑をお掛けしてしまった経験が、アカウントマネージャーの基盤である「お客さまビジネスを理解する」にはどうしたらいいのか、気付くきっかけとなりました。
あるお客さまで週に2〜3回、プログラムのエラーが発生するトラブルがありました。私たちはエラーが発生するたびに現地へ駆けつけ、トラブル対応に全力を尽くしました。しかし、根本原因をとらえることがなかなかできず、解決までに多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
この貴重な体験を通して、当時のアカウントマネージャーに不足していた知識に気付きました。それは「お客さま業務の運用」「製品の使われ方」を理解していないことでした。これが理解できていなかったから、発生したエラーに根本的なアプローチができず、対症療法的な対応に終始してしまったのです。結果、運用パターンによって発生するエラーであることがわかりましたが、解決までに1か月程度を要してしまいました。お客さまの運用を理解することが重要であると、最初から気付くことができたらと今でも悔やまれます。
そして私たちは、お客さまシステムの理解の一歩を進めるため、次の情報を事前に収集するように改善しました。
日立は、これらの情報をUSP(User System Profile)として、お客さまのシステムを構成する情報を管理し、お客さまを理解するために役立てています。
万が一、お客さまのシステムに問題が発生した場合、日立には、技術的な障害を解決するエンジニアにくわえ、よりお客さま視点で対応するアカウントマネージャーがいます。お客さま視点で問題解決にあたるには、お客さまのビジネス、お客さまシステムがビジネスに果たす役割や重要性を理解することが、第一歩だと思っています。 日々、ビジネスの形態や、そのビジネスを実現するためのシステムの技術は変化していきます。
私たちはそうした流れを追随し、さらに予測する努力を継続するとともに、お客さまの気持ちを本当に知るためのさらなる取り組みを進めていく所存です。