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株式会社ノークリサーチ

2011年3月11日に発生した東日本大震災から早くも半年余りが経過した。 だが、依然として日本各地で中小規模の地震が多発しており、今後も油断はできない状況といえる。

前回はクライアントPCを主な対象とした「節電対策」が重要であることを述べた。中堅・中小のユーザ企業が節電と同程度に重視しているのが、業務システムを担うサーバの保全である。

そこで今回は災害対策を考慮したサーバ管理のあり方について考えていくことにする。

「サーバをクラウドに移す」を選ぶユーザ企業はそれほど多くない

まず以下のグラフをご覧いただきたい。
これは前回取り上げたものとほぼ同様のデータだが、年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「東日本大震災を踏まえて新たに実施/検討または関心のあるIT投資項目」を尋ねた結果の一部である。

東日本大震災を踏まえて新たに実施/検討または関心のあるIT投資項目

一部のメディアでは「東日本大震災を機に中堅・中小企業でもクラウドへの移行が進む」「BCPへの取り組みの一環としてのデータセンタ活用が今後急速に増える」といった見方もある。
確かに、大企業や中堅の上位企業では中長期的な観点での運用コスト削減を目的としたクラウド移行やデータセンタ活用への機運が高まっている。だが、それは震災以前から検討されていたことであり、震災をきかっけとして新たに始まった取り組みとは区別しておくべきだろう。
上記の結果が示すように、自社内設置サーバの対障害性を高めるという対策を講じようとするユーザ企業の方が多いのが現実だ。

中堅・中小企業におけるクラウド活用は初期ブームを過ぎ、冷静な判断が下される段階へと進んできている。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「クラウド活用状況」を尋ねた結果を2010年2月時点と2011年2月時点とで比較したものだ。

クラウド活用状況の遷移

いずれの年商帯でも、2010年から2011年にかけて「情報収集のみ」が大幅に減少し、逆に「興味関心がない」が増加している。これにはクラウドへの過剰な期待が大きく関係している。
クラウドが喧伝された時期には「クラウドという『モノ』を用いれば、手元の情報システムの運用コストを削減できる」という期待がユーザ企業の間で広まった。だが、現実には自社固有のカスタマイズ、セキュリティへの配慮、他システムとの連携など乗り越えるべき障壁が多々あり、決して手軽に行えるコスト削減策ではないことが次第に判明してきた。
上記のグラフは「クラウドは思っていたほど簡単でない」というユーザ企業の再認識をまさに表した結果といえる。

この状況は震災後であっても変わらない。相応の時間と費用をかけてクラウド活用へと取り組む別の理由がない限り、次にいつ起きるかもわからない災害対策のためにコストを費やすことはできない。その結果、冒頭のグラフが示すようにサーバを社外に移すよりも社内に置いた状態で対障害性を高めるという手段を選ぶユーザ企業が多くなっているわけである。

遠隔でサーバの状況を把握/操作できる手段が求められる

では、免震装置や電源装置による対障害性を高めておけば、社内設置サーバの災害対策は十分だろうか?ここで東日本大震災がもたらした影響の特徴をもう一度振り返っておきたい。

前回にも述べたが、2007年の中越沖地震などと今回の東日本大震災が大きく異なる点は極めて広い範囲に影響が及ぶ広域災害であったことである。その結果、首都圏の交通網は麻痺し、多くの帰宅難民を生む結果となった。
こうした状況下ではサーバ管理の担当者がオフィスへ辿りつけなくなる可能性が高い。サーバは無事なのか?障害が発生していたとすればその原因は何か?どのような対処をすべきか?それらの情報収集を行う手段がなければ、サーバ機器自体が免震装置や電源装置で守られていたとしても、業務を継続させることは難しくなってしまう。

つまり、サーバ管理担当者がオフィスの外からでもサーバの稼働状況を確認できる手段が必要になってくる。具体的にはインターネットを介してWebブラウザ上でサーバの状態を把握し、必要に応じてシステム再起動や業務システムを稼働させるサーバ機器の変更といった操作を行えることが望ましい。自社内設置のサーバ管理を遠隔から行うという発想は一見すると馴染みにくいが、東日本大震災の経験を踏まえた重要なポイントなのである。

「初心者でもわかりやすい操作画面」も大規模災害では必須事項

災害発生時を踏まえたサーバ管理において、見落としがちな点がもう一つある。

それは「サーバ管理担当者以外の一般社員であっても最低限の状況確認を行えるように、簡易なユーザインターフェースを備えている」という点だ。先に述べた遠隔操作の手段を講じていたとしても、広域災害発生時にはインターネットの断絶や帯域縮小といった事態も十分発生しうる。
難しい操作はできないにしても、一般社員が「正常か、異常か」を画面上で直感的に判断できるかどうかの差は大きい。もしコンソールにコマンドを打ち込むことでしか操作できないユーザインターフェースだったとすると、サーバ管理担当者がオフィスに到着するまで「業務を再開して良いのか?」の判断すらつかないことになってしまう。

サーバ管理の導入検討時に考慮すべき二つのポイント

 このように東日本大震災の経験を踏まえて、自社内設置のサーバ管理においても従来と異なる要件を加味する必要が生じてきた。上記に述べた通り、重要ポイントは以下の二点となる。

  • サーバ管理担当者が遠隔でサーバの状況を確認/操作できる手段を備えているか?
  • 技術スキルを持たない一般社員でも最低限の状況把握が行えるような簡易なユーザインターフェースを備えているか?

いずれも、これまでのサーバ管理の視点だけでは見落としてしまいがちな要件といえる。

東日本大震災を踏まえたサーバ管理に求められる新たな要件

これらの要件を満たしたサーバ管理ソフトウェアの一例が日立製作所の「Hitachi IT Operations Analyzer(新規ウィンドウを開く)」だ。上記のポイント二点を満たしていることに加え、サーバだけでなくストレージ機器やネットワーク機器なども対象とした統合的なIT機器稼働監視が実現可能だ。中堅・中小企業ではIT機器間のネットワーク構成を手作業でExcelシートなどに記入しているケースも少なくないが、それらを直感的な画面で把握/確認することもできる。

これまでサーバを含むIT機器管理を本格的に行っておらず、震災を機に何らかの対策を施しておきたいと考える中堅・中小企業にとっては検討すべき選択肢の一つとなるだろう。

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