株式会社ノークリサーチ
中堅・中小企業においても会計、販売/購買、人事/給与など何らかの業務システムを導入しているはずだ。
こうした業務システムの停止はビジネスに多大な影響をもたらす。そのため、業務システムを稼働させるサーバは常に安定した状態で稼働させなければならない。
そのための取り組みが「サーバ管理」だ。
だが、昨今ではサーバの性能や品質が向上し、ハードウェア面での故障が発生するケースはかなり減ってきている。業務システムの土台となるミドルウェアやソフトウェアも改善を積み重ねており、データの不整合が極力生じない設計となっている。
そうした背景もあって、「サーバに何か問題が生じたら再起動する。それで正常に稼働をしていれば問題ない。」といった認識を持つユーザ企業も少なくない。だが、そういった場当たり的なサーバ管理を続けていては、IT活用の効果を大きく損ねることにもなりかねない。
そこで今回は「なぜ、場当たり的なサーバ管理はダメなのか?」を述べ、サーバ管理において見直すべきポイントについて解説する。
以下のグラフは年商5億円以上〜500億円未満の中堅・中小企業に対して、「現在抱えているサーバ管理の課題」を尋ねた結果である。
単体の項目では「運用管理担当者の不足」「サーバの負荷増大」「サーバの耐用年数超過や保守期間切れ」といった項目が目立つ。少ない人員とITリソースで業務システムの安定稼働を実現しなければならない状況があらためて確認できる。この点は中堅・中小企業が慢性的に抱える課題として既に多くのユーザ企業も自ら認識しているところだろう。
ここで注目したいのは上記以外に新たに発生している課題である。
まず目に留まるのは「サーバ障害発生時の対応」だ。年商帯によっては上記三項目と同等の割合を示している。また、「ソフトウェア関連作業の複雑さと増大」や「ハードウェア関連作業の複雑さと増大」も無視できない。これら二つを合わせると、「サーバ障害発生時の対応」とほぼ同等になる。さらに「サーバに格納されたデータの保全」「サーバのセキュリティ確保」といった項目も15〜20%程度の割合で挙げられている。
実はこれらの項目は互いに密接に関係している。昨今では中堅・中小企業においてもサーバ仮想化への取り組みが進み、サーバ環境はその複雑さを増しつつある。「1物理サーバに1システム」という状況とは違い、「トラブルが発生したら物理サーバを丸ごと再起動すれば良い」というわけにはいかないのだ。 また、情報漏洩やマルウェアによる攻撃は企業規模に関係なく襲ってくる。もし顧客情報が外部に漏れてしまったり、自社システムが何らかの攻撃の踏み台にされるようなことがあれば、多大な信用失墜を招くことになる。
それを防ぐためにはどのサーバにどのようなデータが格納されており、どういった形で守られているか?を把握した上で、もしトラブルが発生した場合には「その根本原因は何なのか?」を知っておく必要がある。「結果として動いていれば問題ない」という考え方ではサーバ仮想化によるIT運用の効率化や企業の信頼/存続に不可欠なセキュリティ面での対策を実現することはできないのである。
さらに調査データを幾つか見てみよう。以下のグラフは年商5億円以上〜500億円未満の中堅・中小企業に対し、「サーバ仮想化への取り組み状況」を尋ねた結果を2009年と2010年とで比較したものである。いずれの年商帯においても「サーバ仮想化を活用または検討中」と答えた企業の割合が大きく増加していることがわかる。
中堅・中小企業は大企業と比べて物理サーバの台数は確かに少ない。だが、サーバ仮想化の用途は物理サーバ台数の削減だけではない。OSや業務システムを物理サーバから切り離すことで「トラブルが発生した業務システムを別の物理サーバ上で新たに稼働させる」といったことが可能になる。高い可用性を実現しようとした場合、従来は業務システム毎にクラスタ構成を組む必要が生じることも少なくなかった。(業務システムが3つあれば、待機系も含めた物理サーバの合計台数は6台)
一方で、サーバ仮想化環境では「3つの業務システムを4台のサーバでカバーする」といった発想になる。平常時には1台の待機系サーバを負荷の低いファイルサーバとして利用し、業務システムのいずれかにトラブルが生じた場合は当該の業務システムをファイルサーバと同じ物理サーバに同居させるといったことも可能だ。
ITに投じる費用が限られる中堅・中小企業にとってサーバ仮想化は有効な手段といえる。だが、それを十分使いこなすためにはサーバ仮想化環境に対応したサーバ管理の仕組みが必要となる。「物理サーバで稼働している仮想化されたサーバ環境を手軽に監視/管理できる」仕組みが求められてくるわけだ。
以下のグラフは年商5億円以上〜500億円未満の中堅・中小企業に対して「ストレージ活用における現状の課題」を尋ねた結果である。ストレージ機器の導入や増強に際しての課題を除いた運用管理に関わる項目が列挙されている。
この中で注目すべきなのが「予算が確保できないため、障害発生時の対策を講じていない」「担当人員が確保できないため、障害発生時の対策を講じていない」といった項目だ。
サーバと同様に、ストレージも業務システムを支える不可欠な要素である。だが、サーバと比べて障害発生時の対策が手薄になってしまいがちな状況がうかがえる。投入できる費用や人員はサーバ管理で既に手一杯で、ストレージまで回せないというのが実情だろう。しかし、だからといってストレージ管理をおろそかにするべきでないことは言うまでもない。さらに、サーバとストレージを結ぶネットワーク機器(スイッチなど)も管理すべき対象となってくる。
このように中堅・中小企業におけるサーバ管理は「物理サーバを再起動して動けば良い」という段階ではもはやなくなっており、以下のような取り組みが求められている。
まさに「従来のサーバ管理の枠を越えたサーバ管理」が必要とされる局面といえるだろう。
こうしたニーズに応える具体例として挙げられるのが日立製作所の「Hitachi IT Operations Analyzer(新規ウィンドウを開く)」である。
中堅・中小企業でも無理なく導入できる価格とシンプルな構成でありながら、トラブルの根本原因を特定する「RCA(Root Cause Analysis)」や仮想化されたサーバ環境やストレージ、ネットワーク機器といった様々なハードウェアの接続状況をビジュアルで直感的に把握できる「トポロジカルリスト」などといった多彩な機能を備えている。
「サーバ管理」というと個々の物理サーバのみを管理するものというイメージが未だに強い。だが、実際には仮想化環境やストレージ/ネットワーク機器なども含めた統合的な機器管理ツールが既に登場してきているのである。こうした状況を踏まえ、ユーザ企業としても「これまでのサーバ管理を越えたサーバ管理」に取り組むべき時期に来たと言って良いだろう。