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株式会社ノークリサーチ

2009年も中堅企業を取り巻く経済環境は厳しい状況が続いている。多くの企業はIT投資を抑制し、少しでもコストを削減しようと努めている。しかし、コスト削減施策は自社の業績を引き上げることにはつながらない。コスト削減に固執する余り、業務効率が低下すれば、さらに業績を押し下げることにもなりかねないのである。

今回は業務効率を大きく左右する要素であるにも関わらず、中堅企業で見落とされ易いクライアントPCに着目する。そして、クライアントPC関連の課題を解決する最適な手段としての「シンクライアント」を紹介していく。

クライアントPC管理の課題

まず、中堅企業が抱えるクライアントPC管理上の課題を見てみることにしよう。

以下のグラフは年商50億円〜500億円の中堅企業に対してクライアントPC管理における課題を尋ねた結果である。
「トラブル発生時の対応」「クライアントPCのセキュリティ確保」「クライアントPCに格納されたデータの保全」の三つが特に高いことがわかる。 クライアントPCからの情報漏洩は後を絶たず、企業にとって大きな脅威となっている。「セキュリティ確保」「データの保全」が上位に挙げられているのも、そうした状況を反映したものといえるだろう。

また、運用管理負荷の増大も無視できない。

サーバの場合は障害の発生が全社的な業務停止に直結するため、多くの企業が何らかの施策を講じている。一方、クライアントPCの場合は影響範囲が個々の社員に留まってしまうため、企業全体の問題として認識されにくかった。

ところが、クライアントPCのデータ消失、アプリケーションの動作不良といった問題は日常的に発生しており、トータルで見た場合の業務効率への影響は実は大きいのである。既にそれに気づいている企業も多く、「トラブル発生時の対応」が筆頭に挙げられていることがそれを物語っている。

クライアントPC管理における課題

シンクライアントとは何か?

こうした課題を解決する手段として最も有効なのが「シンクライアント」である。

シンクライアントとは「サーバと連携することにより、ユーザが操作する端末にデータを残さないクライアントPC」と定義される。つまり、安全に管理されたサーバ内にデータを保存する仕組みを備えた特殊なクライアントPCのことを指す。シンクライアントは高価であり、導入するのは大企業のみであるというイメージが強いが、実際はどうなのだろうか?

年商50億円以上の中堅企業ではクライアントPC台数が100台を超える企業の割合が50%を超える。100台以上の台数になると、クライアントPCの運用管理負荷も高くなり、何らかの対策を講じる必要が出てくるのである。

「シンクライアント導入に着手している」または「シンクライアント導入を検討している」と回答した企業の割合は現時点では約10%とまだ少数だ。 だが上記のような背景を踏まえると、シンクライアントは必ずしも大企業のためだけのソリューションではなく、今後は中堅企業においてもニーズは高まっていくものと予想される。

シンクライアントの方式を理解する

それではシンクライアントの仕組みをもう少し詳しく見てみることにしよう。

基本的な考え方は「アプリケーションやデータをサーバ側に移し、ディスクプレイやキーボードといった入出力装置だけを手元に残す」というものである。クライアントPCの本体がサーバ側に移り、ディスプレイやキーボードのみが残った状態をイメージするとわかりやすい。このようにシンクライアントでは従来型クライアントPCの本体に相当する部分が一箇所に集まる。

その「集め方」の違いによってシンクライアントには幾つかの方式がある。

画面転送型(ターミナルサーバ型)

全社員がハードウェアを共有し、ソフトウェアも共同利用する形態である。社員の設定情報やデータは個別に管理されており、混在してしまうことはない。

長所 古くから利用されている方式で実績も多く、比較的低コストで実現できる
短所 現在利用中のアプリケーションがこの方式で利用できるかの検証作業が必要

画面転送型のしくみ

仮想PC型(センター型)

全社員でハードウェアは共有するが、OSやアプリケーションといったソフトウェア環境は個別に用意されている形態である。当然ながら、社員の設定情報やデータは個別管理される。

長所 社員毎に異なるアプリケーションをインストールするなどの柔軟性が高い
短所 サーバ側の負荷が大きく、サーバ1台を共有できる社員数には限りがある

仮想PC型のしくみ

ブレードPC型(ポイント・ブレード型)

ハードウェアとソフトウェアともに個別に用意する形態である。ブレードPCという特殊な筐体が社員毎に割り当てられ、各社員はそのブレードPCへネットワーク経由でアクセスして利用する。

長所 負荷の高いアプリケーションを実行しても影響が全体に及ばない
短所 社員毎に専用ハードウェアを割り当てるため、コストが高くなりがち

ブレードPC型のしくみ

Microsoft Officeやブラウザといった一般的なアプリケーションを時々使うという程度であれば「画面転送型」で十分である。しかし、CADなどの負荷の高いアプリケーションやVoIP(IP電話)などの特殊な処理を行うアプリケーションを利用している場合には何らかの対応が必要となってくる。ユーザが利用するアプリケーションが多様化していることもあって、最近では「仮想PC型」や「ブレードPC型」への注目が高まっている。

「仮想PC型」と「ブレードPC型」は対照的だ。全社員が利用するアプリケーションが統一されており、比較的負荷の低いものが多い場合には「仮想PC型」が適している。一方、社員が利用するアプリケーションがバラバラで、負荷の高い処理を行う社員がいるようであれば「ブレードPC型」を選んでおいた方が無難である。

だが、多くの企業はちょうどその中間なのではないだろうか?

良く見られる利用実態の例)

営業系や総務系の部署は一般的なアプリケーションのみを利用し、処理の負荷も低い。
しかし、開発部門では設計に用いるアプリケーションを利用するために高性能マシンが必要だ。
さらに、サポート部門は電話と連携した特殊なアプリケーションを使っている。

このように必要とするアプリケーションや利用負荷は部署によって千差万別であることが多いだろう。そうなると、「仮想PC型はコスト負担が低いが、対応できない利用形態が存在してしまう」「ブレードPC型は全ての利用形態をカバーできるが、過剰な投資である」という悩みを抱えることになってしまう。

いいとこ取りの新しいシンクライアント方式

こうした課題を受けて登場してきたのが、上記の複数の方式を併せ持ったハイブリッドなシンクライアント方式である。以下ではそのうちの一つである日立製作所の「セキュアクライアントソリューション:統合型」(新規ウィンドウを開く)を紹介する。

「セキュアクライアントソリューション:統合型」は「仮想PC型」と「ブレードPC型」を混在させることのできるシンクライアント方式である。上記の例でいえば、営業や総務は「仮想PC型」でハードウェアを共有した低コストの形態を適用し、開発部門やサポート部門は個別にハードウェアを占有できる「ブレードPC型」を適用するといったことが可能となるのである。

この割り当ては動的に変更が可能だ。
例えば、営業マンが「得意先1000社に販促資料が添付されたメールを臨時で送りたい」といった場合も一時的に個別のハードウェアを割り当てることができる。一人の社員が「アプリケーションAは負荷が軽いので仮想PC型で動作させ、アプリケーションBは処理が重いのでブレードPC型で動かす」という使い分けもできる。
過剰投資をすることなく、自社の業務実態に合致した構成を組めるだけでなく、将来の変化に対しても柔軟に対処できるクライアントPC環境を構築することができるのである。

シンクライアント導入においては全業務をカバーできるソリューションを選択することが重要だ。「総務部門には導入できたが、サポート部門はこれまでと同じクライアントPCを継続利用している」という状態では情報漏洩やデータ消失のポイントが残ってしまう。

そのためにも、まずは自社のクライアントPCに関連する運用実態を正しく把握することが第一歩ということになる。そこで、次回はクライアントPCの運用管理に焦点を当て、既存クライアントPC環境の利用実態を正しく把握するためのポイントについて解説していく。

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