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株式会社ノークリサーチ

前回はグリーンITの定義と「なぜグリーンITが中堅・中小企業にとって重要なのか?」を解説した。
今回は日立製作所や各種団体のグリーンITへの取り組みを一通り眺めた後、中堅・中小企業にとって身近に実践可能なグリーンIT対策を紹介していく。

第10回 グリーンITとは何か?
グリーンITの定義や背景、関連する法制度について紹介する
第11回 中堅・中小企業にとってのグリーンITソリューション
日立製作所や各団体の動きを踏まえた上で、中堅・中小企業にとって現実味のある実践可能な対策について紹介する
第12回 グリーンITとその周辺の動き
グリーンITと他のIT技術との関連及び今後の展望について紹介する

グリーンITに取り組む各種団体

大手ITベンダを中心にグリーンITに取り組むための非営利団体が幾つか設立されている。 これらはいずれも「IT自身のグリーン」を目指し、IT関連機器の省電力化に向けて様々な活動を行っている。

The Green Grid<グリーン・グリッド>(新規ウィンドウを開く)

主要なグリーンIT関連団体の中では最も古く、2007年2月に米国にて設立された。設立メンバーはAMD、APC、DELL、HP、IBM、Intel、Microsoft、Rackable Systems、SprayCool、Sun Microsystems、VMWareの11社。 データセンタの省エネ化を主要な取り組み内容としている。データセンタの効率改善に向けた効率測定基準(メトリックス)やベストプラクティスの策定及びそれらの情報提供が主な活動内容である。

日本においては2008年5月に活動を開始。日本の大手ITベンダやデータセンタ事業者も参加しており、会員企業数は2008年7月現在で180社以上にのぼる。データセンタにおける省電力化の評価指標に関しては今後の業界標準を担う存在として期待されている。

Climate Savers Computing Initiative
<クライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシアチブ>(新規ウィンドウを開く)

世界自然保護基金(WWF、World Wide Fund for Nature)が推進する温室効果ガス削減活動である「クライメート・セイバーズ・プログラム」の一環として2007年6月に米国にて設立された。

設立メンバーはGoogleとIntelの2社。参加企業数は2008年7月現在で250社以上に達している。 日本国内でも設立とほぼ同時に日本語ホームページ開設などの活動を行っている。ITベンダだけでなく、ユーザ企業も会員として数多く参加している点が特徴である。
同団体に参加したITベンダは、所定の省エネ基準を満たしたIT関連機器の開発と製造を約束する。同じく同団体に参加したユーザ企業はそれら基準を満たしたIT関連機器を選定して購入することを約束する。 ITベンダとユーザ企業がこのルールを遵守することによって、2010年までにIT関連機器から発生するCO2排出量を年間5400トン削減することを目指している。

グリーンIT推進評議会(新規ウィンドウを開く)

日本発のグリーンIT関連団体である。
経済産業省が環境保護と経済成長を両立させた社会の実現に向けて提唱する「グリーンITイニシアチブ」に基づいて2008年2月に設立された。参加企業数は2008年7月現在で170社以上にのぼる。ITベンダとユーザ企業双方を含む一般企業、政府機関及び学術経験者といった産官学のパートナシップで構成されている点が特徴である。
2008年5月には「The Green Grid」及び「Climate Savers Computing Initiative」とそれぞれ覚書を締結し、海外で設立されたグリーンIT関連団体との協調体制を敷いている。

日立製作所によるグリーンITへの取り組み

日立製作所は上記団体へ参加するだけでなく、独自にグリーンITへの取り組みを表明している。
省電力対応のIT関連機器開発を進める「Harmonious Green」と今後5年間でデータセンターの消費電力を最大50%削減する取り組みである「CoolCenter50」を推進している。
こうした製品とデータセンタにおける施策に加えて、ユーザ企業の省エネ対策実施における診断、評価、運用管理サービスといったソリューションも提供している。

中堅・中小企業が実践するグリーンIT

このように大手ITベンダは省電力化に対応した製品やサービスを展開することでグリーンITへの取り組みを進めている。中堅・中小企業にとってもグリーンITが取り組むべき重要課題であることは前回述べた通りである。 しかし、だからといってサーバやクライアントPCを急に買い換えるわけにもいかないだろう。

以下のグラフを見ていただきたい。これはノークリサーチが年商5億〜500億円の中堅・中小企業に対して行った「ITキーワードの取組状況と興味関心度(N=800)」の結果である。 グリーンITについて「既に取り組んでいる(導入している)」と回答した企業の割合はSaaSや仮想化といった他のトピックを上回っている。

では、グリーンITに取り組んでいると回答した企業は何を行っているのだろうか?実はIT関連機器を買い換える前にまず取り組むべき省電力対策がある。それこそが中堅・中堅企業がまず始めに実践できるグリーンIT対策に他ならない。以下でそれらを列挙してみよう。

図表1. ITキーワードの取り組み状況と興味関心度
図表1. ITキーワードの取り組み状況と興味関心度

サーバ

不要なサーバが電源を入れられたまま稼動し続けていないだろうか?
ファイルサーバとして部署ごとにサーバが乱立しているにも関わらず、各サーバにはほんの少ししかデータが格納されていないというケースが少なくない。 部署ごとにディレクトリを分け、アクセス権を適切に設定すれば、1台のファイルサーバを共用することができる。

クライアントPC

電源を入れたまま外出もしくは帰宅してしまう社員はいないだろうか?
不要時にはクライアントPCの電源を落とすことをルール化することが重要である。 また、離席中は自動的にスリープ状態になるように設定しておくだけでも電力消費の低減に役立つ。

プリンタなどの周辺機器

プリンタのように待機時間の長い機器の消費電力も無視できないポイントである。 最近のプリンタでは印刷命令が出された時に素早く反応できるが待機電力も多いモードと反応は遅いが待機電力の少ないモードを選択できるようになっていることが多い。 必ずしもスピードを要求されない利用シーンでは電力消費の少ないモードを選択するのが良いだろう。

ネットワーク機器

ネットワーク管理の規則が緩くなりがちな中堅・中小企業では個々の社員がポート数の少ないハブを勝手に接続してしまうケースがある。 それらがある程度の数に達すると全体の消費電力を押し上げる要因となる。ハブやスイッチの乱用を避け、ネットワーク設計を適切に見直すことが重要である。

実はここで挙げた対策によって得られる効果は消費電力の低減だけではない。
サーバ台数やネットワーク機器台数が減れば、それは運用管理コストの低減につながる。クライアントPCの管理を強化すれば、それは情報漏洩の防止にも寄与するだろう。

このようにグリーンITへの取り組みは単独で実施すべきものではなく、運用管理コスト削減や情報漏洩防止といった情報システムの管理上重要な他の取り組みとも密接に関連しているのである。

その点を踏まえ、次回はグリーンITと他のIT技術との関連を取り上げる。消費電力低減、運用管理コスト削減、情報漏洩防止といった重要テーマを網羅的に解決するための考え方や今後の展望について解説していく。

次回予告

第12回 グリーンITとその周辺の動き

グリーンITと他のIT技術との関連及び今後の展望について紹介する

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