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株式会社ノークリサーチ

第7回は、中堅企業におけるITの今日的な課題として注目される「統合化」を取り上げる。

現在企業におけるIT環境は、かつての「集中から、分散へ」という流れから、再び「集中へ」という揺り戻し現象が起きつつある。その背景にはコンプライアンスから端を発した内部統制やセキュリティ対応が求められていることもあるが、より現実的な問題として、増えすぎたITシステムの管理・運用上発生する問題が無視できない状況にあることが指摘される。
とりわけそのコスト、人的な負荷を如何に軽減するかは多くの企業にとっての悩みの種となっているところだ。その解決策として「統合化」というキーワードを盛り込んだソリューションが続々と登場している。以下で、統合化が注目されるようになった背景、及びその具体的な方法論を追っていきたい。

今ITの統合化が求められる背景には何があるのか?

企業を取り巻くコンピュータ環境は、メインフレームに代表される集中型システムが主流であった1980年代、コストパフォーマンスが向上したWindowsやUNIXといったオープン系サーバー、GUIを実装した個々のクライアントPCにアプリケーション機能を持たせるクライアント/サーバー型の分散システムが主流となる1990年代、そしてWebコンピューティングの現在へ、と変遷を遂げてきた。 こういった「集中から、分散へ」という流れは、コンピュータのダウンサイジング化の流れとも見ることが出来る。

そして今注目されているのが、コンピュータ環境の統合化である。
背景には「野放図に導入されて、一部カオス化したサーバーやシステム環境」の弊害が目立つからだ。レガシやオープン系システムの混在、OSの混在、そしてCPUの最適活用という物理的な課題解決の目的で、「統合化」「仮想化」といったテクノロジ、概念が強く求められ、注目されている。

具体的には利用目的別・業務単位別に構築してきたシステム(拠点や部門に分散利用されて管理上統制が執りにくい状況)を再び集中的に管理することが大きな目的である。一言で言えば、「再び分散から、集中へ」とコンピュータ環境が変化することになるが、決して逆行しているわけではない。そこには明らかな発展が見られる。

「企業がITシステムを構築する本来の目的が、システムの管理・運用の手間やコストによって見失われてないか?」という指摘も確かにある。もともと業務効率化、コスト削減によって売上増加を狙ったり、さらに戦略的な目的を持ったりしてIT化を進めてきたはずが、今は、そのシステムの管理を効率化するか、システムのネットワーク環境を堅牢化するか、システム管理に要するコストを削減するかが課題になってしまっている。

それはハード、ソフト、ネットワークインフラの普及が、想像を超えるスピードを伴ってしまったがために、運用管理上の諸問題、セキュリティなどの対応が追いつかなかったという誤算が要因となっている。その原因を提供側の想像力の欠如と見なす指摘もあるが、現実的には過去には無かった経験だけに、ひとまずその問題を克服することが第一義である。

例えば、ユーザ企業に導入されているサーバーの管理上の課題(図1)を見てみると「バージョンアップ、セキュリティパッチ適用などの運用管理」が課題と回答した企業が73.7%と圧倒的だ。社内ユーザPC環境と合わせたバージョンの管理や、セキュリティ関連のパッチを手作業で検証し施していく作業の煩わしさに、多くのIT担当者が悩まされている。 次いで、「機密情報や個人情報などの漏えい対策」が50.5%、「運用管理に対応する人がいない」が38.4%となっている。

こういった課題をクライアント/サーバー環境普及前から提供側もユーザ企業も想定しきれていたわけではない。

図1.サーバー管理上の課題

やはり避けては通れない統合化の対応

中堅企業のIT導入実態として、図2「サーバー統合・集約化」に関しての考え・対応を見ると、「すでに実施済み」が15.9%、「半年以内に導入する計画」が6.1%、「具体的ではないが検討/考慮している」が37.1%、「導入予定はない」が40.9%となっている。
現状、サーバー統合・集約に関して6割弱の企業が前向きな姿勢である。

図2.「サーバー統合・集約化」に関しての考え・対応

ただし、闇雲に統合化ソリューションに手を付けることは、かえって管理・運用コスト増加を助長することにもなりかねない。一口に統合化と言っても、統合対象、範囲、段階などの基準で方法論は複数存在するため、導入企業とベンダなど当事者間による入念な準備が求められる。

まず統合対象を明確に設定することからはじめなければならない。
ハードウェアの設置拠点が複数存在している場合「拠点そのものの統合化」が思いつく。それは複数拠点、もしくは社内の複数部門に点在するITシステムを物理的に特定の拠点に移動し、集中的な管理を行うことを意味する。特にトラブル発生時の対応を考えると大幅な管理ワークの効率化が実現するだろう。また設置拠点が居所的になるため、管理に要する人的コストも削減できる。
ただし、ITシステムの絶対数の減少にはつながらないため、抜本的な課題解決とは言い難いところではある。

一方で、仮想化のような最新の統合化ソリューションを採用するという意味では、「拠点内でのITシステムの統合化」が考えられる。 複数乱立してしまっているサーバーやストレージといったハードウェア、ネットワーク機器、OS、ミドルウェア(DBMSなど)、アプリケーションに至るまで、どこまでを統合対象とするのかの分析を行った上で、該当する仮想化ソリューションを採用する。
これにより個々のシステム管理に人員を割り当てる必要がなくなり、保守・メンテナンスコストダウンが期待できる。 またサーバーやストレージなどのハードウェアとOS間の稼動環境について物理的制約が排除され、1台のサーバーに複数OSを搭載できる。 すると、サーバーの余剰リソースを共用化することが可能となる。更に、従来個別のシステムごとに行っていた運用を一元的に管理することにより、重複業務を軽減させ、運用コストを下げや管理の手間を省くことが出来る。

これ以上の詳細は各ベンダの提供するソリューションの紹介に譲るが、仮想化技術は保有するIT資産の有効活用という点で非常に有意義な考えであると言えよう。

「最適なITの運用管理、統合化」は直近の課題、真の狙いは「戦略的なIT活用」

繰り返すが、ITの導入目的は決して「ITシステムの不断の稼動」にあるのではない。ITシステムの効率的な働きによってもたらされる経営・業務上のメリットを享受することこそが本来の目的である。 よって、分散・増加したITシステムの管理・運用自体に課題を残しているような事態は一刻も早く打破しなければならない。決して手段を見誤ることのないよう注意し、適切な仮想化、統合化ソリューションの採用によってより高次元でのIT経営を実現していただきたい。

「安定、セキュアなIT環境の実現と運用管理コストの低減で、コアビジネスに対する明確なIT投資と最適な活用」が目的であることを再度確認すべきだ。

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