ビジネス拡大のために基幹システムをオープン化。
帳票システム構築支援ソフトウェア「EUR」を使って、
メインフレーム並みの高信頼な帳票運用環境を実現
車両輸送会社の株式会社ゼロ(以下、ゼロ)は、長年培った輸送ノウハウを活かし、事業範囲の
拡大を戦略的に進めるために、2004年から基幹システムのオープン化に取り組み、2007年1月に
稼働した。メインフレームで稼働していた基幹システムの中でも、とりわけ重要な帳票出力システム
のスムーズなオープン化を支援したのが、日立の帳票システム構築支援ソフトウェア「EUR(イーユーアール)」である。
メインフレーム並みの高信頼な帳票出力システムを構築して、開発工数の削減や効率よい出力
環境を実現。さらに、プレビュー機能で帳票イメージを確認してペーパーレスで業務が進められる
など、帳票運用・活用の環境も大きく向上した。
40余年の歴史の間に高度な輸送ノウハウ を蓄積してきたゼロは、この強みを活かしな がら、事業範囲を精力的に拡大している。
事業拡大を戦略的に進めるためには、事業 戦略が素早く業務システムに反映できるよう、 システム面での強化も不可欠である。2004年 から、基幹システムのオープンシステム化に 取り組んだのもその表れだ。
「ビジネスの変化に素早く対応するべく、鮮 度の高い情報を柔軟に活用できる環境を作る ためには、メインフレームをオープンシステム化 することが不可欠でした」と荒井氏は語る。
さらに2008年1月には、日立の統合サービ スプラットフォーム「BladeSymphony」を導入 して、サーバの統合化も実現させた。
株式会社ゼロ
情報
システム部
部長
荒井和彦 氏
帳票出力システム構築にあたって、重視し た要件はメインフレーム並みの信頼性である。
「当社は、売上と実績を日次管理して、輸送 の効率化を追求してきましたので、管理帳票 を出力するメインフレームの帳票システムは、 業務の基幹部分を支えていました。万一、帳 票出力システムがダウンすると、会社全体の 業務が止まってしまいます。そのため、オープ ンシステムでは、メインフレーム並みの信頼 性が必要であり、その要件に応えられる基盤 製品を求めていました」と荒井氏は語る。
管理帳票とひと口に言っても、受注管理、 実績管理、売上管理などさまざまな基幹シス テムのデータを扱うものが30種類以上あり、こ れらを個別にプログラミングしていると、大きな 開発負荷がかかる。そこで同社は、多種類の 帳票を共通して処理できる帳票システム基盤 を構築して、開発期間の短縮を目指した。
さらに、信頼性重視の視点で複数の製品を 比較検討した結果、帳票出力システム構築を 支援するソフトウェアとして日立の帳票システム 構築支援ソフトウェア「EUR」を選定した。
「管理帳票の共通出力システムを構築す る以前に、輸送伝票のフォーム設計にEUR を使った経験があり、設計・開発機能が優 れていることは知っていました。さらに、長期 にわたって日立が手厚いサポートを提供して くれる点も評価しました」と山田氏は選定の 理由を語る。
株式会社ゼロ
情報
システム部
課長
豊永茂樹 氏
株式会社ゼロ
情報
システム部
山田 悟 氏
多種の基幹システムから柔軟にデータを 引き出し、約30種類の管理帳票を出力する 帳票出力システム「Zero Printing System (以下、ZPS)」は、2006年10月に稼働を開始 した。利用者は、40〜50拠点にいるさまざま な立場のユーザーで、200名ほどにのぼる。
基幹システムから必要なデータを加工し、 CSV形式で抽出した後、EURのプリントサーバ へFTP転送するのは、日立の統合システム運用 管理「JP1」である。
JP1のジョブ管理機能で送信されたCSV データを使って、分散環境の帳票出力を支援 する「EUR Print Manager」がプリントサー バに帳票データとして蓄積する。これにより、 ZPSでは利用者の出力指示に応じて、「プレ ビュー表示」「プリンタ出力」「CSVデータ提 供」のいずれかを行うことができる。
「帳票の一括出力は、従来に比べると格 段に速くなりました。また、数十ページもある 長大な帳票の場合でも、目的のページだけを 指定して出力できるようになったのも便利な ところです」と山田氏は説明する。
「利用者がとても喜んでいるのは、プレビュー 機能です」と豊永氏は続ける。
帳票名を選択してプレビューボタンをクリッ クすると、印刷しなくても、実際の帳票イメー ジを画面で確認できるのだ。複数ページにわ たる場合も、マウスをクリックするだけでページ をめくる感覚で確認できる。
「紙の出力枚数が減り、ペーパーレスも進 んでいます」(豊永氏)。
帳票データを再利用できる環境を容易に 構築できるのも、EUR Print Managerの機 能のひとつである。
「いままで、帳票データは紙に出力するだ けでしたが、帳票データを残せるようになっ て、大変便利になりました。たとえば、利用 者が『CSVデータ提供』を利用して帳票デー タを蓄積することで、過去の帳票データを再 出力することや月次報告に活用することが可 能になりました。また、別のデータと組み合 わせることで、帳票データの2次加工を行う など、利用者側で思い立ったときにすぐに作 業が行えます」(山田氏)。
検索や一括出力が便利な一覧表示(左)とページをめくる感覚で確認できるプレビュー機能(右)。
ZPS構築によって、帳票システム構築時 の最大の要件である信頼性も大きく向上 した。
「ZPSを構築した最大の効果は、信頼性が 大きく向上したことだと思います。個別プログ ラミングではなく、信頼性の高いミドルウェア を使ったことで、プログラム・バグのリスクが 減り、移行および検証工数を大幅に抑えるこ とができました。ZPSが稼働を開始して1年 半ほど経ちますが、EURが原因のトラブルは 起きていません」(荒井氏)。
EUR Print Managerは、拠点間で必要な 帳票データの受け渡しの通信処理もサポート。 メインフレーム並みの高い信頼性を持った帳票 出力システム構築を実現したことで、ダウンサイ ジングのスムーズな実行を側面から支援したの である。しかも、ActiveX連携のWebシステム となったことで、クライアントマシンでの使い勝 手や管理性が向上し、帳票データをより柔軟 に活用しやすくなった。
次の課題は、輸送伝票などの出力システム もZPS上で統合し、ZPSを帳票出力の全社 共通プラットフォームとしてさらに活用していく ことである。帳票機能を共通プラットフォーム 化すれば、システム開発の負荷は軽減され、 迅速な新規開発と修正が実現できる。
「これからのシステム開発に求められるのは、 さらなる短期開発であり、ビジネス要件の変 化にすばやく対応することです。しかも、構築 効果を明瞭に打ち出していかなければなりま せん」と荒井氏は語る。
売上拡大に向けてデータを戦略的に活用 するためには、日々の業務と密接に関係する 帳票システムの利便性の向上は大きな課題 である。EURは、柔軟性の高い帳票システム 構築を支援していくことでゼロのビジネス拡大 に貢献していくだろう。
株式会社ゼロの帳票出力システム概要
USER PROFILE
株式会社ゼロ
[本社] 神奈川県川崎市幸区堀川町580
ソリッドスクエア西館6階
[設立] 1961年
[資本金] 33億9,000万円
[従業員数] 1,390名(2007年12月末現在)
車両輸送の国内大手。日産自動車 系列の日産陸送株式会社としてス タートしたが、2001年、MBO(経営 陣買収)によって独立して、現社名 に。新車・中古車・マイカーの輸 送、車両整備、中古車オークショ ンの開催、一般貨物輸送を幅広く 手がける。