「JP1」によるセンターサーバの一元管理で高可用性を実現。
適確な稼働性能分析で、SLAに応じた高いサービスレベルを追求
住友林業株式会社(以下、住友林業)では、2000年からオープン系システムのセンターサーバ管理に日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を活用し、高い可用性を維持してきた。さらに2003年、開発と運用管理を担当する住友林業情報システム株式会社(以下、住友林業情報システム)との間でSLA(Service Level Agreement)契約を締結。24時間稼働するコールセンターをはじめ、システムの重要度に応じたサービスレベル管理を徹底する。そこで新たに導入したのが、稼働性能分析「JP1/Performance Analysis Manager(JP1/PAM)」である。リソースの管理/分析を可視化・自動化し、システムの稼働状況をエンドユーザーへ公開することも可能。性能を評価することで、今後のハードウェアなどのリソース増強計画に役立てるとともに、さらなる可用性向上を目指していく。
住友林業情報システム株式会社
運用管理部 課長代理
金児 英和 氏
住友林業は、住宅の建築/販売と木材建材流通を2本柱として、住生活に関わるさまざまなサービスをトータルに提供している。システムも、住宅系と木建営業系の2本立てになっている。両システムで共通しているのは、インターネットのビジネス活用の拡大を見越して、はじめからWebシステムで構築していることである。 たとえば、住宅系の業務を支える統合顧客管理システム、1,500〜2,000社の協力企業を統括する工程管理システムなど、いずれも先進のWebシステムである。自由度の高いオープン系システムが求められるようになったとき、管理負担が大きいクライアント・サーバシステムをできるだけ避けて、集中管理ができるWebシステムへと早期に移行したのである。
住友林業のシステム開発と運用を担当する住友林業情報システムでは、Webシステムに利用するUNIXサーバが増え始めた時点で、運用管理ポリシーの改定に取り組んだ。
「オープンシステムにおける運用管理はどうあるべきかという社外コンサルティングを受け、管理ポリシーを策定しました。その作業の途中で気づいたのは、メインフレームもオープンシステムも運用管理ポリシーの根幹は同じだということです。統合管理を行ってサービスレベルを維持することは、運用管理に共通する基本要件です」と、住友林業情報システム株式会社 運用管理部 課長代理 金児 英和氏は語る。
そこで、高度な運用管理ポリシーを実現するため、2000年に日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を導入した。
「JP1」を評価したのは次の3点である。
1に、統合コンソール「JP1/Integrated Manager(JP1/IM)」によって、システムの状態を集中管理できる。ネットワーク監視、リソース監視、バッチジョブやバックアップの自動実行状況など、さまざまな管理情報を、メインフレームと同じように1台のコンソールで把握できるのは、使いやすい。
第2に、ジョブ管理機能が優れている。複数のサーバにまたがって複数のジョブをスケジューリングできるうえ、ジョブの実行状況までJP1/IMで一元的に把握できる。住友林業のシステムでは、約300ステップを1つのジョブネットに組み上げるなど、高度で複雑なジョブ運用が必要なため、その効率化は大きなテーマであった。
第3に、マルチOSに対応する。住友林業では、センターサーバにはHP-UXを使うことが多いが、システムの要件に応じて、Solaris、Windows(R)も混在し、Linuxを活用する計画もある。今後開発するアプリケーションがどのようなOSを選択しても、対応できるような運用管理体制を敷いておくことが重要であった。
住友林業の可用性に対する要求は高い。
たとえば住宅系では、全国54支店と東京・大阪・名古屋の3事業所に入る顧客からの電話に、24時間対応するコールセンターを設けている。このコールセンターは、水回りや電気設備をはじめとした、さまざまなメンテナンスに関する顧客の相談に、すみやかにワンストップで対応することから、高い顧客満足度獲得につながっている。各拠点やコールセンターで利用する統合顧客管理システムのセンターサーバは、24時間365日の稼働が必須条件である。
こうした可用性に対する要求に応えるため、住友林業情報システムでは、運用管理におけるさまざまなしきい値を、サーバ単位ではなく、ディレクトリ単位などきめ細かく設定している。
「動的にリソースを使う業務もあれば、静的な業務もあります。一律に、『ディスク使用率が80%を超えたらメールで知らせてくる』という対応では、使う立場に立ったビジネスの視点でのサービスレベルを実現できません」と金児氏は言う。
現在、住友林業情報システムは、OSや各アプリケーションが出力するすべてのメッセージをレベル分けし、重要なものは携帯電話に飛ばすなど、堅牢な運用管理体制を作り上げている。JP1の導入効果について、金児氏は4点を挙げた。
第1が、統合管理による省力化。データセンターに24時間常駐するメインフレーム用オペレータと、金児氏をはじめとする3〜4名のSEとのコンビネーションで、複数のOSが混在した37台のセンターサーバの管理ができている。
第2に、システムの可用性が向上した。ディスクの使用率を見てデータを圧縮するなど、さまざまなメッセージを重要度に応じて拾うことで、将来発生する可能性がある障害に対して予防措置がとれるのである。またWebサーバに問題が発生したときには、監視システムとジョブ管理システムを連携させて、瞬時に自動的に再起動をかける仕組みなども工夫して運用している。
第3に、自社開発のツールも含めて、柔軟な統合管理ができる。住友林業情報システムでは、データベースをチューニングするタイミングをアラームで知らせるシステムなど、便利なサブシステムを自社開発しているが、JP1/IMはこうしたサブシステムのメッセージまで一元的に管理することができる。
第4に、客観的なデータをもとに、運用管理者からシステム開発者への提言など、フィードバックができる。両者のキャッチボールがあってこそ、システムの可用性を高めることができるのである。
「いまやJP1はシステム全体に血を行き渡らせる心臓のような存在です。システム開発の段階で、バッチジョブはJP1の機能を前提に開発しているくらいです」と金児氏は強調する。
2003年、住友林業と住友林業情報システムは、SLA契約を締結した。稼働率、障害件数、障害復旧にかかる時間という3つの要素については、明確な目標数値も契約書に盛り込んだ。投資効果を数値化して客観的に把握しながら、可用性を向上させたいという強い意向のあらわれである。
そこで、住友林業情報システムは、新たに稼働性能分析「JP1/Performance Analysis Manager(JP1/PAM)」を導入。
JP1/PAMは、複数の稼働性能情報から横断的な状況把握と分析を行い、システム障害時の問題の1次切り分けを自動化する。ミッションクリティカルな業務がWebシステム上で多く稼働している住友林業にとって、サーバのリソース使用状況とエンドユーザーが体感するレスポンスの両方を一元的に把握できる効果は大きい。
レポート画面が見やすく、カスタマイズもできるため、エンドユーザーに稼働状況を公開することが可能になる。また、稼働性能を評価することにより、今後のハードウェアなどのリソース増強計画を裏づけるデータとすることも期待している。
住友林業情報システムでは、本社や支店など複数拠点に稼働性能情報を収集するための「JP1/Extensible Service Probe」を設置し、回線規模や業務ごとにサービス・レスポンスを測定する計画だ。ユーザー視点に立った、客観的な数値による性能分析でROI(Return on Investment)の向上を目指す。
「運用管理とは、新しい『運用管理システム』を構築する開発作業です」と金児氏は言う。運用管理システムの開発を成功させるには、ベンダー、開発者、管理者などのチームワークが不可欠だ。「日立には、これからもチームの一員として期待しています」と金児氏は強調した。
USER PROFILE
住友林業株式会社
[本社] 東京都新宿区西新宿6-14-1 新宿グリーンタワービル
[創業] 1691年
[設立] 1948年2月20日
[資本金] 276億7,200万円
[売上高] 5,644億8,700万円(2003年3月期)
[従業員数] 4,454名(2003年3月末現在)
森林経営、廃棄物のリサイクルや海外植林をはじめとする環境事業、木材・建材の国内外における流通・製造、木造注文住宅の建築と販売、中古住宅の流通やリフォームなど、再生可能で人と地球にやさしい自然素材である「木」を活かし、住生活に関わるあらゆる分野のサービスをトータルに提供する。
PARTNER PROFILE
住友林業情報システム株式会社
[本社] 千葉県千葉市美浜区中瀬1-3 幕張テクノガーデンB棟7階
[設立] 1991年11月1日
[資本金] 1億円
[売上高] 37億円(2003年3月期)
[従業員数] 77名
住友林業および住友林業グループ各社に対して、情報システムのコンサルティング、システムインテグレーションサービス、ネットワークソリューションサービス、ネットワーク運用サービス、ヘルプデスク、IT教育をトータルに提供。開発だけでなく、運用管理についても高度な技術の研鑽を積んでいる。