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操業オンラインのオープン化プロジェクトに着手
厚板工場の最終工程を担う「新倉庫システム」を
日立のEP8000・OpenTP1・JP1などで再構築

国内トップクラスの先進性を誇る新日本製鐵株式会社 大分製鐵所(以下、新日鐵大分)では、業務を支えるITインフラの刷新プロジェクトを推進している。メインフレーム中心で構築されてきた一般管理系システム、生産計画系システムのオープン化を新日鉄ソリューションズ株式会社(以下、新日鉄ソリューションズ)の協力を得て既に実施。この効果をさらに高めるべく、24時間の連続稼働が要求される操業オンラインシステムの再構築にも取り組んだ。2004年6月には、その第一弾として厚板工場の「新倉庫システム」が本番稼働を開始。EP8000・HiRDB・OpenTP1・JP1など、日立のサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computing(ハーモニアス コンピューティング)を構成する製品群を採用し、「24時間止まらないシステム」を実現している。

浅野 博之 氏の写真
新日本製鐵株式會社 大分製鐵所
生産管理部
部長
浅野 博之 氏

桐石 俊幸 氏の写真
新日本製鐵株式會社 大分製鐵所
生産管理部
システムグループ グループリーダー
桐石 俊幸 氏

半田 清 氏の写真
新日鉄ソリューションズ株式会社
鉄鋼ソリューション事業部
大分システムセンター 所長
半田 清 氏

藤平 実 氏の写真
株式会社NSソリューションズ大分
取締役
技術第一部長
藤平 実 氏

西山 龍男 氏
新日鉄ソリューションズ株式会社
鉄鋼ソリューション事業部 大分システムセンター
技術グループ グループリーダー
西山 龍男 氏

環境変化への即応を目指し 基幹システムのオープン化に着手

日本で最も新しい製鉄所として知られる新日鐵大分。かつて厚板工場の工場長も務めた経歴を持つ新日鐵大分 生産管理部 部長 浅野 博之氏は「すべての業務をコンピュータで管理しているのが当製鐵所の特長です。厚板工場は1977年に操業を開始しましたが、当時からクレーンの制御や作業指示などのプロセスを、完全にシステムでコントロールしています」と説明する。

スピードやコストに対する要求が厳しさを増すなど、最近では市場環境も大きく変化し続けている。同製鐵所ではこのような変化に対応すべく、メインフレーム中心で構築されてきた基幹システムのオープン化にも取り組んでいる。

浅野氏はその経緯を「製鐵所の業務を確実に遂行するために、これまで非常に完成度の高いシステムを作り上げてきました。しかしその反面、新たなニーズを取り込むためには多くの工数と時間、人手を必要とするようになっていたのです。開発生産性の低下を防ぐためには、こうした状況をどこかで変えなくてはいけない。そこでシステムのオープン化に踏み切りました」と振り返る。

同製鐵所では基幹システム刷新プロジェクトの先陣を切って、まず一般管理系システムと生産計画系システムをオープン化。新日鉄ソリューションズ 鉄鋼ソリューション事業部 大分システムセンター 所長 半田 清氏は「業務停止が絶対に許されないミッション・クリティカルなシステムだけに、移行にあたっては並行稼働期間を設けて充分な検証を行うなど、万全の注意を払いました」と語る。

24時間止まらないシステムを支えるHarmonious Computing

一般管理系システムと生産計画系システムのオープン化に成功した新日鐵大分では、さらに次の課題に取り組むこととなった。厚板工場で実際に鉄製品の製造を担当している「操業オンラインシステム」のオープン化である。

「さまざまな基幹システムの中でも、操業オンラインは特に止まることが許されないシステムです。もしこれが止まったら、製鐵所の生産そのものが止まってしまいますから。24時間の安定的な連続稼働をいかにしてオープンで実現するか、慎重に検討を重ねました」と新日鐵大分 生産管理部 システムグループ グループリーダー 桐石 俊幸氏は語る。

またシステム構築に際しては、もう一つ新たな要件が課せられた。株式会社NSソリューションズ大分 取締役 技術第一部長 藤平 実氏はこの点を「次世代の操業オンラインシステムを創り上げていく上で、欠かせないポイントとなったのが『データのシームレス化』です。システムに蓄積されたデータを分析業務などにも活用し、より戦略的な業務が行える環境を実現したいと考えました」と語る。

もっとも生産業務の中核を担う操業オンラインを一気にオープン化することにはリスクも伴う。そこで移行作業を段階的に行うこととし、圧延・剪断・精整・倉庫と続く操業プロセスの最後尾を担当する「倉庫システム」から再構築に取りかかった。ちょうど鉄需要の回復に伴って倉庫の拡張が計画されており、新たな業務環境を構築する必要があったのである。

この新システムに採用されたのが、日立のサービスプラットフォームコンセプトHarmonious Computingを構成するエンタープライズサーバ「EP8000」、ディスクアレイサブシステム「SANRISE」、そして、「HiRDB」「OpenTP1」「JP1」などのオープンミドルウェア製品群である。製品を検討する過程で特に重要なポイントとなったのが、「データのシームレス化」を支えるデータベース製品の選択だ。

データベースを長期にわたって利用し続けると、データの追加・削除などによってどうしても断片化が生じてしまう。通常はデータベースの再編成でこれを解消するが、同製鐵所は24時間休むことなく操業を続けている。データベースの再編成を行うために、業務停止が必要と言うことでは使い物にならないのだ。

「しかしHiRDBとSANRISEの組み合わせなら、オンラインサービスの性能を落とさずに、動的に再編成を行うことができる。これが採用の決め手となりました」と藤平氏は語る。

構造型データベースとHiRDBのリアルタイム連携を実現

また新倉庫システムには、もう一つ画期的な試みが加えられた。

メインフレーム上で稼働する上流工程のオンラインシステムには、構造型データベースが用いられている。構造型データベースとRDBの連携には、データ変換後にファイル転送を行うなどの手法が用いられることが多いが、今回のシステムでは構造型データベースの更新内容をトランザクション単位で同期。完全なリアルタイム連携を実現しているのである。

さらにシステムの信頼性・可用性確保にも、細心の配慮が施された。「システムのライフサイクル全体を考えた場合、一番長いのは運用フェーズです。高信頼システムを実現するためには、設計段階から運用を見据えておくことが肝心。そこでこれまで培ったノウハウを活かし、独自開発の障害検知機構を盛り込みました」と新日鉄ソリューションズ 鉄鋼ソリューション事業部 大分システムセンター 技術グループ グループリーダー 西山 龍男氏は語る。この障害検知機構を有効に働かせる上で、大いに役立っているのがJP1だ。JP1はシステムから出力されるメッセージをトラップし、必要に応じて監視プログラムなどのジョブなどを実行しているのである。

OpenTP1に対しても、高い評価が寄せられている。西山氏は「システムのオープン化を進める中では、分散OLTPの評価もかなり行ってきました。そこで感じたのがOpenTP1の信頼性の高さです。日立のメインフレーム技術が存分に投入されており、重要な基幹システムにも安心して適用できます」とにこやかに語る。

新倉庫システムをモデルケースに他システムへの横展開を推進

新倉庫システムは、2004年6月に本稼働を開始。浅野氏は「従来より大幅に短い期間でシステムが構築できた上、カットオーバー以来トラブルもまったくありません。またEP8000のパフォーマンスも高く、システムレスポンス向上などのメリットも出ています。現時点での満足度は非常に高いですね」と力強く語る。

しかし今回の再構築で、全てが終わったわけではない。新倉庫システムはあくまでも第一ステップであり、その後ろには操業オンラインシステム全体のオープン化が控えている。

「効率の良いモノ作りをITで支援することが我々の役目。これからも現場の要求に確実に応えていきたい」と語る桐石氏。

浅野氏も「今回構築した新倉庫システムをひな形として、他のオンラインシステムにも順次横展開を図っていきたいと考えています。当社にとって理想的な環境を実現していくためにも、日立の製品群や提案には大いに期待しています」と続ける。

さらなる飛躍に向け、新たな一歩を踏み出した新日鐵大分。その取り組みを、日立のHarmonious Computingを構成する製品群が、これからも支えていくことになる。

新日鐵大分操業オンラインシステム概念図

USER PROFILE

新日本製鐵株式會社 大分製鐵所

[所在地] 大分県大分市大字西ノ州1
[本社] 東京都千代田区大手町2-6-3
[敷地面積] 1699万m2
[高炉] 1高炉4,884m3 2高炉5,775m3

高品質な鉄鋼の安定供給により日本製造業の競争力を強化し、日本経済の高度化にも大きな役割を果たしてきた新日本製鐵。その新日本製鐵の中核製鐵所の一つとして、月産70万トンにも上る生産を実施。生産品目は熱延コイルと厚板の2種類。製鐵所のレイアウトから業務プロセスに至るまで、ムダを省いた「直行・直結化」を実現し、高品質な鉄鋼製品を安定的に供給している。

PARTNER PROFILE

新日鉄ソリューションズ株式会社 鉄鋼ソリューション事業部 大分システムセンター

[所在地] 大分県大分市大字西ノ洲1
[本社] 東京都中央区新川ニ丁目20-15
[設立] 1988年10月1日

当初からオールコンピュータ操業を実現してきた大分製鐵所。直近もオープン技術およびオブジェクト指向技術を採り入れた挑戦的なシステム化を推進し、競争力向上に貢献している。このシステムを支えているのが新日鉄ソリューションズ株式会社 鉄鋼ソリューション事業部 大分システムセンターである。アプリケーションと基盤そしてシステムの運用・保守にわたる全領域をさらに緊密に一体化し、システム全体の最適化をより強力に支援している。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ 2005年1月20日号」に掲載されたものです。
  • JP1HiRDBOpenTP1の詳細は,製品ホームページでご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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