「JP1」「OpenTP1」の活用によりメインフレームの工場系システムをオープン化。
既存の全機能を継承し、「SANRISE」にDBを統合して新しい経営基盤を実現
グラスファイバーなどでトップレベルのシェアを誇る日東紡績株式会社(以下、日東紡)では、福島工場のメインフレームがリプレース時期を迎えたのを契機に、オープンシステムへ移行した。メインフレーム上の工場系システムの機能をそのまま継承すると同時に、東京本部で管理している販売系システムを取り込んでリアルタイムに連携させ、タイムリーな在庫引き当てができるようになった。データベースを東京と福島で二重化し、ディザスタリカバリ体制も実現できた意義は大きい。日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」と分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」の組み合わせにより、メインフレームで実現できていたことをもれなくオープンシステムへ移行し、なおかつ、新しい経営基盤へと進化させることに成功したのである。
日東紡績株式会社
情報システム部
部長
酒井 好男 氏
新事業創造を社風とし、多角経営を進めてきた日東紡。連結関連会社が国内20社・海外6社を数えるなかで、1999年には「ドメイン経営」を打ち出した。会社ごとに個別経営を行うのではなく、系統別/分野別に協調し、一体となってグループシナジーを追求していこうという経営コンセプトである。
「関連会社が作った製品を日東紡が販売するなど、一体となった新しいグループ物流に取り組んでいます」と酒井氏は語る。
新しい物流には新しいシステムが不可欠だ。グラスファイバーの生産拠点である福島工場で、1997年から稼働してきた日立のメインフレームがリプレース時期を迎えたのを契機として、製販一体化に向けたシステム再構築が始まった。
日東紡績株式会社
情報システム部
課長
岡 貢 氏
福島工場のシステム再構築は、一石三鳥をねらったものだ。 第1に、福島工場の生産システムに東京本部の販売系システムも取り込んでリアルタイム連携を実現する。
販売系システムは、2000年にオープンシステムで再構築済みだ。したがって福島工場のシステムもオープン化して連携させる。データベースも日立のディスクアレイサブシステム「SANRISE」に統合して、在庫引き当てをスムーズにする。従来はバッチ処理でデータ連携させていたため、30分ぐらいのタイムロスがあった。
「工場系と販売系でマスターDBも共通にします。グループ各社が共通なマスターを参照・更新することで、処理の効率化を図るとともに、アプリケーションを一本化することをねらっているのです」と、岡氏は説明する。
第2はディザスタリカバリ。通常時でも24時間稼働が求められる工場系システムだが、さらに災害時にもビジネスを継続するために、東京/福島という遠隔地間でデータを二重化することにした。
第3に、今回対象となるシステム以外でも40台近いサーバがあり、それらも統合してTCOを削減したいという思いもあった。
こうした数々の課題を実現しつつも、メインフレームで稼働してきた工場系システムのプログラムは変えないというのが大前提だった。この手作りシステムには、過去数十年にわたって工夫を凝らしてきたノウハウが集積されているからだ。
日東紡績株式会社
情報システム部
福島システム
グループ
スタッフ
菅野 虎宇一 氏
株式会社
日立東日本ソリューションズ
東北ソリューション営業本部
クロスマーケット
グループ
技師
盛 義弘氏
メインフレームのプログラムをそのままオープンシステムへ移行して、なおかつ遠隔地とのリアルタイム連携も果たしたい。この高度な要求に応えたのが、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」と分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」の組み合わせである。
メインフレームのCOBOLプログラムは移行ツールを使って自動コンバートした。COBOL以外の部分も含めて「COBOL85」のプログラムに統一、移行に伴う画面や帳票印刷機能の作り直しには、画面・帳票サポートシステム「XMAP3」を用いた。
2004年10月、予定通りに新システムが稼働を開始した。プログラムを画面も含めてそのまま移行したため、ユーザー教育も不要であり、「システムが変わったことに気づかないユーザーが多かった」(菅野氏)というほど、スムーズなリプレースであった。
新システムは、東京に本番系、福島に待機系のデータベースを置いて、データベースのレプリケーション機能でほぼリアルタイムにデータの整合性をとる。東京または福島のデータベースに障害が起きた場合でも、生き残ったデータベースを使って業務は支障なく続行できる。
オンラインのトランザクション処理はOpenTP1が担い、早朝から夜間まで実行される多数の複雑なバッチジョブの制御と障害監視はJP1が支える。データベースの夜間バックアップにも、「JP1/VERITAS Backup Exec」を用いている。
「JP1がなかったら、サーバ1台ごとに起動やメンテナンスのスケジュールを設定したり、変更したり、大変な手間がかかります。JP1の統合コンソールからすべてのサーバを一括管理できるからこそ、日々の安定稼働と万一のときのディザスタリカバリを、高い信頼性で運用できるのです」と菅野氏は強調する。
福島工場のオンライン業務中に、ワンタッチでMicrosoft(R) Excel形式の管理帳票を入手する際にもJP1を活用している。バックエンドでは、データベースから最新データを抽出し、集計したうえでクライアントへ返し、Excelに展開するプログラムを、JP1がきめ細かく制御している。
「日東紡はJP1とOpenTP1を高度に使いこなして、従来はメインフレームのバッチ型オンライン処理プログラム(BMPP:Batched Message Processing Program)で行っていた帳票生成処理を、オープンシステム上で実現されています」と、システム構築を支援してきた日立東日本ソリューションズの盛氏は言葉を添える。
二重化したデータベースを含めて、ネットワークの各ノードの稼働状況もJP1で監視している。万一障害が起きても、時間帯に応じて、警報を鳴らしたり、携帯電話にメールを送ったり、守衛所のアラームを鳴らしたりするため、夜間は無人運転にしている。
工場系システムの再構築により、製販のデータはリアルタイム連携を果たし、本部の営業部門では、福島の担当者を煩わせることなくダイレクトに、正確な在庫引き当てができるようになった。年来の課題であったディザスタリカバリ体制を実現できたのも大きな成果だ。
今後は、グラスファイバー以外の繊維、建材などの事業のシステムも、今回構築した仕組みの上に移行していく。
「製販一体の物流を展開するための基盤ができました。これを利用して、ドメイン経営をさらに推進するシステムを開発、活用していきたい」と酒井氏は意欲的に語る。
日東紡は、JP1やOpenTP1を使って、レガシー資産をオープンシステムへ継承したうえで、さらに新しい経営戦略を実現する新しいシステムへと進化させることに成功したのである。
USER PROFILE
日東紡績株式会社
[本社] 福島県福島市郷野目字東1
[本部] 東京都千代田区九段北4-1-28
[創業] 1918年(福島精練製糸株式会社)
[資本金] 196億円
[従業員数] 4,018名(連結、2004年3月)
繊維事業で培った技術力で日本初のグラスファイバーやロックウールなど新素材の生産に成功。建材、メディカル、不動産など事業を多角化し、「健康・快適な生活文化を創造する企業グループ」をめざす
PARTNER PROFILE
株式会社 日立東日本ソリューションズ
[本社] 宮城県仙台市青葉区本町2-16-10 NBF仙台本町ビル
[設立] 1984年5月21日
[資本金] 3億円
[従業員数] 710名(2004年8月)
日立製作所の地域グループ会社として、コンサルティングからSIサービス、システム構築まで、東北/北海道地区のシステムソリューション事業を担う