日立オープンミドルウェアで基幹バッチシステムを全面オープン化。
既存資産、業務ノウハウを継承しつつ、
メインフレームなみの機能性、保守性を実現
厳しさを増す経営環境への対応と、状況変化に即応できるビジネス基盤を構築するため、メインフレーム資産をオープン環境へ移行する企業が増えています。
名古屋鉄道グループ(以下、名鉄グループ)の情報システム会社である株式会社 メイテツコム(以下、メイテツコム)は、同グループの名鉄運輸株式会社(以下、名鉄運輸)のコスト低減とビジネススピード向上を目的に、基幹バッチシステムのダウンサイジングを実行。
その核として日立オープンミドルウェアのバッチジョブ実行基盤「uCosminexus Batch Job Execution Server(以下、BJEX)」を採用し、オープン環境においてもメインフレームなみの信頼性と機能性、高い保守性を実現しています。
株式会社
メイテツコム
事業統括本部 物流ソリューション部
シニア
マネージャー
江端 直人 氏
株式会社
メイテツコム
事業統括本部 物流ソリューション部
第2担当
マネージャー
戸井 栄治 氏
株式会社
メイテツコム
事業統括本部 物流ソリューション部
第1担当
リーダー
伊藤 弘和 氏
株式会社
メイテツコム
事業統括本部 物流ソリューション部
第1担当
宮島 淳一 氏
私鉄大手の名古屋鉄道を中心に、運輸、レジャー、流通業な
ど、幅広い業種にわたる約170社の関連企業で形成される名鉄
グループ。そのIT戦略基盤をトータルに支える情報システム会社
として設立されたのがメイテツコムです。
同社はグループ各社の
みならず、グループ外の企業にもシステム開発やアウトソーシン
グ、データセンターサービス、セキュリティコンサルティングなど、総
合力を活かしたITのワンストップサービスを提供しています。
2006年、創立30周年を機に新たな経営計画の柱として、お客さ ま企業のIT戦略を俯瞰的視野(SCOPE)からとらえ、適切な提 案を行いながら、ともに革新(INNOVATION)を継続するという ブランディングステートメント「SCOPE INNOVATION(視界革 新)」を設定。より高度で付加価値の高いサービス提供を積極的 に推進しています。
「当社では名鉄グループ各社から、長年にわたって日立のメイ
ンフレームを中心としたミッションクリティカルなシステムの構築・運
用を受託してきました。しかし近年は、維持コストの削減やシステ
ム拡張の柔軟性を高めるため、グループ全体でオープン化への
移行が加速しています」と語るのは、事業統括本部 物流ソ
リューション部 シニアマネージャーの江端 直人氏。
その一環とし
て2001年にメイテツコムは、商業貨物輸送のリーディングカンパ
ニーとして知られる名鉄運輸とそのグループ会社(以下、名鉄・
運輸グループ)である信州名鉄運輸株式会社(以下、信州名鉄
運輸)、四国名鉄運輸株式会社(以下、四国名鉄運輸)などの
基幹オンライン業務を、日立オープンミドルウェア「uCosminexus
OpenTP1」「JP1」や「HiRDB」を活用することで、3社個別運用
だったメインフレームからUNIXサーバ「9000V」へと集約するダ
ウンサイジングを実施。
その後、2006年にはUNIXサーバ「EP8000」へとバージョン アップさせ、メインフレームと同等の信頼性維持とTCO(※1)削減に 加え、インターネットを使った貨物追跡サービスを新たにスタートさ せることにも成功しました。
そして2007年6月、名鉄・運輸グループ3社のメインフレームに 残されていた基幹バッチ業務のダウンサイジング・プロジェクトが 始動。メイテツコムは基幹オンラインのオープン移行時と同様に、 パートナーベンダーに日立を選定しました。
「メインフレーム時代からの強力なパートナーシップと、信頼性
の高いオープンミドルウェアの存在。この2つが日立さんをパート
ナーに選んだ最大の決め手でした」と振り返る江端氏。
そのなか
でも、「バッチ業務の高効率な移行と運用に大きな効果を発揮し
たのが、当時リリースされたばかりのバッチジョブ実行基盤BJEX
だった」と強調するのは、事業統括本部 物流ソリューション部
第1担当 リーダーの伊藤 弘和氏です。
「バッチ業務のオープン化では、JCL(※2)で組まれたジョブ管理の 移行が大きな課題となります。従来の手法では、プログラム間の データのやり取りなどを大量のシェルスクリプト(※3)で記述し直す必要 があり、開発工数が膨大になると予想されました。しかしBJEXを活 用すれば、使い慣れたJCLと同様の定義で移行作業が展開でき るため、作業負担が大幅に軽減できると考えたのです」(伊藤氏)。
日立が提供するBJEXは、メインフレームのノウハウを活用した
基幹系バッチ業務システムの構築・運用を容易に行うためのミド
ルウェアです。
XML形式のジョブ定義ファイルにプログラムとファ
イル情報を記述するだけで、ファイルの後処理(正常終了時、異
常終了時)や一時ファイルの自動削除、ファイルの世代管理など
を容易に実現することが可能です。シェルスクリプトのようなロジッ
クの作りこみも不要なため、記述者の個性やスキルに依存するこ
とがなくなり、ジョブ定義の標準化が可能となるため保守性も大
幅に向上。バッチジョブをジョブ構成の最小作業単位であるジョ
ブステップごとにきめ細かく制御できるので、「JP1/AJS(※4)」との連
携によって高精度に実行することが可能となります。
ジョブ実行結果のログを自動採取する機能も提供し、JP1と連 携した一元管理で稼働後の運用を容易にするほか、ソート、 マージ、選択、集約、レコード編集といった機能を一つのコマンド で実行できる使い勝手のよいソート機能も提供されています。
伊藤氏らは、BJEXやCOBOL2002、JP1、メイテツコム独自の変 換ツールなどをフル活用し、アセンブラ、COBOLプログラム、JCLなど の既存資産を効率よくオープン環境へと移行。この間、日立は一連 のミドルウェアに関するトータルな技術支援や新環境での性能評価 を行う一方、バッチ業務システムと連携し、荷主とのさまざまなデー タ交換を担う物流VANシステムのダウンサイジングを実行しました。
そして2008年6月、まずは名鉄運輸のバッチ業務の移行が完 了。翌2009年9月には四国名鉄運輸、同11月には信州名鉄運輸 の基幹バッチ業務が、それぞれ新環境となるEP8000(AIX)上 に集約され、「BladeSymphony」の小型高集積モデル「BS320」 (Windows®)上で稼働する新VANシステムや基幹オンラインと もシームレスに連携した新基幹システムが誕生したのです。
ストレートコンバージョンされた3社の基幹バッチ業務は、各営業 地域での料金算出や業務形態が少しずつ異なるため、EP8000 のリソース上で3社の環境が稼働しています。プログラムはBJEXと JP1との連携により、メインフレームなみの信頼性と運用性を確保。
「処理時間も日時バッチで従来約3時間ほどかかっていたもの が、現在は1時間半に圧縮されたほか、大規模化したシステムの データバックアップの効率化・高速化を図るため、これまでのテー プ媒体に代わり、日立ディスクアレイサブシステム内でのDisk to Disk世代管理システムも構築されました。また、オープン化にあ たっては、プラットフォームの信頼性と可用性の維持も重要なテー マでした。そこでEP8000を2台導入し、システムとプログラムのフェ イルオーバーが可能なクラスタ構成を構築しました」と説明する事 業統括本部 物流ソリューション部 第1担当の宮島 淳一氏は、 「プログラム移行や環境構築・運用において、日立さんから常に適 切なアドバイスをいただけたことに感謝しています」と評価します。
今回のプロジェクトにより、メインフレーム上に残っていたすべ てのプログラムがオープン環境へと移行したことで、名鉄・運輸 グループはシステム維持コストの低減に成功。四国名鉄運輸と 信州名鉄運輸が自社内で管理していたハードウェア群もメイテ ツコムのデータセンター内に集約され、両社の運用負担も大幅に 軽減しました。
「今後はビジネス面での付加価値向上や内部統制的な観点か
らも、名鉄・運輸グループ全体としてのシステム統一を図ることが重
要だと、われわれは考えています。日立さんには引き続き、お客さま
の経営改革に沿ったIT戦略の立案や営業支援ツールの構築など
で、知恵とノウハウをお借りしたいですね」と語るのは、事業統括本
部 物流ソリューション部 第2担当 マネージャーの戸井 栄治氏。
その期待に応えるため、これからも日立はオープンミドルウェアを核
とした高信頼なITプラットフォームとソリューションの提供により、メ
イテツコムの限りないチャレンジを力強くサポートしていきます。
システム構成図
USER PROFILE
株式会社メイテツコム
[本社] 名古屋市中村区名駅南1-21-12 名鉄協商コンピュータビル
[設立] 1976年9月27日
[資本金] 4億円
[従業員数] 258名(2009年3月31日現在)
名古屋鉄道グループの情報システム会社として、情報化コンサルティングから企画、開発、情報システムのアウトソーシングまで統括したサービスを提供