地域密着型の多業態展開で増加を続けるデータ処理。
1日約350万トランザクションの安定稼働を支え、
オンデマンド化への要求にも柔軟に応える「JP1」
「マチのほっとステーション」を目指し、地域密着型の店づくりに取り組んでいる株式会社ローソン(以下、ローソン)。同社は1998年以降、ジョブ管理ツールとして、日立の統合システム運用管理「JP1」を活用してきた。現在同社では、「Speed、Small、Simple」を備えた統合システムを目指し、さらなるIT基盤の昇華に取り組んでいる。ローソンはこれまでJP1を活用して約200サーバの1万を超えるジョブネットの安定稼働を支えてきたが、今後はさらに柔軟な「IT基盤のオンデマンド化」にもチャレンジしていく。
株式会社ローソン
ITステーション
システム技術
リーダー
小畑 康治 氏
国内だけでも8,500店を超えるコンビニエンスストアをフランチャイズ展開するローソン。女性のニーズに対応し、美と健康をコンセプトとした「ナチュラルローソン」や新鮮な青果を豊富に品揃えし、適量小分けによるお手頃な価格を実現した「ローソンストア100」、それぞれの地域ニーズに合わせて新しい機能を付加した「ローソンプラス」など、地域の文化に合わせて多業態展開する「マチのほっとステーション」として、地域密着型の店づくりに取り組んでいる。
「コンビニエンスストアという業態は、情報システムが生命線である、いわば『システム産業』です。しかも、地域密着型の多業態展開を強化すればするほど、扱う情報量はますます増えていきます」と小畑氏は語る。
ローソンは、1日に700万人近くが利用しており、弁当や惣菜などの主食系商品などは各店舗に毎日3回の配送を行っている。受発注情報は1日約30万件にのぼるが、このデータのすべてを情報センターで集中処理。さらに、売上データおよび受発注情報は、短時間で単品レベルのきめ細かい分析を行ったうえで、必要な形の情報へ整理して社員へフィードバックされ、次の企画・日々の運営へと反映されている。
「店舗が24時間オープンしているのと同様に、システムも24時間365日、決して止まることなく、安定稼働を維持していかなければなりません。安定稼働は、IT基盤に求められる基本要件です」と小畑氏は強調する。
膨大なデータを安定して処理できる堅牢なシステム運用基盤を構築するため、同社ではIT基盤の運用標準化を行っている。その際に、ジョブ管理の標準ツールとして選定したのが、日立の統合システム運用管理「JP1」だ。
「JP1は、統合IT基盤構築にあたっての基本方針の『オープン』と『デファクトスタンダード』に適合していました。機能面でもいくつかの運用管理ツールを比較しましたが、総合点が最も高かったのがJP1でした」と小畑氏は説明する。
マルチプラットフォーム対応はJP1の大きな特長である。Linux、Windows®、UNIXに対応し、マルチベンダー環境でのオープンサーバを中心に、他社製メインフレームまでを含めて、プラットフォームを意識しないで、数種類のサーバにまたがったジョブ運用を実現できる。
バッチジョブの進行状況の監視が非常に容易であること、ジョブの変更・管理・登録が容易であること、バッチ処理異常時の障害通知も正確かつ迅速で、さらにリカバリも容易であるなど、ジョブ管理がきめ細かくできる点も評価された。
株式会社ローソン
ITステーション
システム技術
シニアマネジャー
吉岡 叙浩 氏
株式会社ローソン
ITステーション
システム技術
マネジャー
中島 啓二 氏
現在JP1は、約200サーバにおける1日約350万トランザクションをコントロールしている。ジョブネットの数は1万1,500を超えており、ジョブ数にすれば数10万に達する。
24時間365日、約8,500店舗のどこかで、クレジットカードが利用されたり、公共料金などのバーコード読み取りが行われたりすれば、そのたびにJP1が機能して、正確で迅速な店頭サービスを支えている。またローソンは、数種類の電子マネーへの対応をいち早く整備しているが、こうして増え続けるトランザクションに柔軟に対応していくのも、JP1の役割である。
一方、同社ではJP1のジョブネットのネーミングや階層などの標準化を進めると同時に、ジョブネットへの登録・変更の作業手順の標準化・効率化も推進してきた。
「店鋪で新たなサービスを展開する際は、仕事の流れを表計算ソフトでワークフローに描き、これをもとに社内や開発会社や運用管理会社との打ち合わせをします。打ち合わせのプロセスが進むにつれて、業務要件をシステム要件へと展開して、より詳細なワークフローを描いていきますが、最終的に確定したワークフローは、一括して表計算ソフトからJP1に吸い上げ、ジョブネットに自動登録する仕掛けを作っているのです」と中島氏は説明する。
標準的な業務プロセスを踏んでワークフローを描いていけば、最終的にジョブネットの運用設計が完了していることになる。
「JP1は、戦略をより速くシステムへ反映させるために、なくてはならない製品です。社内外との打ち合わせの際にも、ビジュアルでわかりやすいJP1を“共通言語”として活用できます」と中島氏は語っている。
まさに、ローソンが目指しているシンプルでスピーディな対応が図られている。
コンビニ業界の競争はますます厳しく、情報のさらなる活用に向けての挑戦は続く。
ローソンは現在、「Speed、Small、Simple」を備えた統合システムを目指し、さらなるIT基盤の昇華に取り組んでいる。
そこには「よりお客さまに喜んでいただける、さらなる『マチのほっとステーション』の実現」を目指し、コンビニ業界の常識を打ち破る新しい店づくりを推進できるシステムへのたえまない要求がある。
「IT基盤にも、オンデマンド化に対応することが求められています。オンデマンド化とは、新しいシステムを迅速に稼働させたり、ビジネスの状況に応じてシステム規模を容易に変化できるようにすることです。具体的には、アプリケーションごとにインフラを開発・実装するのではなく、仮想化した共通インフラを用意しておき、新しいアプリケーションが必要とする機能を選択・供給する環境づくりを目指しています」と吉岡氏は語る。
同社は、この仮想化技術を駆使した先進的なIT基盤においても、統合ジョブ管理ツールとして、引き続きJP1を採用する方針である。
「今後ますます処理量が増える大規模システムのジョブ管理を、安心して任せられるのがJP1の魅力です。また、IT基盤の昇華には数多くのベンダーに参加していただくことになりますが、JP1は複数のSI会社やシステム、アプリケーションが、共通して使える標準基盤として信頼できます」と小畑氏は語る。
いまやコンビニエンスストアは、社会インフラの一部であり、一つひとつのトランザクションの重要性はますます高まっている。
安定稼働を実現し、さらに一歩進んだオンデマンド化への要求にも柔軟に対応するJP1は、地域住民の生活に密着したローソンの活動をより強力に支えていく。
ローソンの新システム概要
USER PROFILE
株式会社ローソン
[本社] 東京都品川区大崎1-11-2 ゲートシティ大崎イーストタワー
[設立] 1975年4月15日
[資本金] 585億664万4千円
[従業員数] 3,131名(単体)
コンビニエンスストア「ローソン」をチェーン展開する大手小売企業。国内8,564店舗、海外286店舗(2007年2月末現在)。多業態展開のうち、「ナチュラルローソン」と「ローソンストア100」は、それぞれ株式会社ナチュラルローソンと株式会社バリューローソンが運営。