日立の「COBOL2002」と「XMAP3」で開発生産性を向上し
クレジット基幹システムをスムーズにダウンサイジング。
メインフレームに並ぶ高信頼なシステムを「JP1」で実現
今やクレジットカードは、一般消費者の決済手段として、なくてはならない存在だ。 九州日本信販株式会社(以下、九州日本信販)は、高い信頼性と可用性が求められるクレジット基幹システムを、「COBOL2002」と「XMAP3」を活用し、日本ユニシス株式会社(以下、日本ユニシス)と株式会社ゆめカード(以下、ゆめカード)の支援で、メインフレームからWindowsRサーバへとダウンサイジング。ハード・ソフトウェアのコストダウンと、新規アプリケーションを容易に追加開発できるオープン環境を実現した。 メインフレームに並ぶ高信頼なシステムの運用は、日立の統合システム運用管理「JP1」が支えている。
九州日本信販株式会社
常務取締役
システム本部長
大野 良一 氏
九州日本信販株式会社
システム本部
システム部
副部長
入澤 弘美 氏
九州日本信販株式会社
システム本部
システム部
副部長
小野 厚 氏
九州日本信販株式会社
システム本部
システム部
高橋 輝和 氏
USOL九州株式会社
製造流通プロジェクト
主任
森 智文 氏
九州日本信販の事業の柱は、クレジットカードと、個品斡旋のショッピングクレジットの2つだ。中国・関東など、福岡県外にも支店を設けて営業を拡大中であり、カード提携先やショッピングクレジット提携先の開拓と支援、オリジナルカードの企画・開発など、さまざまな「攻めの経営」で事業を伸ばしている。
「2006年12月に貸金業法の改正があり、信販業界を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。経営の情報をきちんと把握し、分析しながら、利益を上げられる体質へと革新していかなければなりません」と大野氏は語る。
しかし従来の基幹システムは、20年以上使用してきたメインフレームのシステムだ。陳腐化が進んでいたうえ、新機能を追加することは困難だった。そこで2001年、システムの見直しが始まり、2003年12月にオープンシステムへの移行を決定した。
「クレジットシステムはとにかく信頼性と可用性が大切。メインフレームシステムの作り替えなどさまざまな方策を検討しました。その結果、TCO *1 が約50%近くも削減されるというオープンシステムのコストダウン効果は大きな魅力でした」と入澤氏は語る。
日本ユニシスより、ゆめカードのクレジットシステム *2 の紹介を受け、オープンシステムで充分な稼働実績があることが解ったことから、2004年、開発に着手した。
「ミッション・クリティカルなシステムに対応するため『Enterprise Server ES7000』と『Windows Server™ 2003, Datacenter Edition』を採用しました。採用にあたっては、当時Datacenter Editionに未対応だったJP1を対応してもらうなど、日本ユニシスと日立とで連携を図りました」と森氏は説明する。
パッケージシステムは、クレジットカード機能は備えていたが、ショッピングクレジット機能は新規に開発しなければならなかった。開発にあたっては、日立のビジネスアプリケーション開発・運用環境「COBOL2002」を活用し、シンプルなコーディングと効率的なパッケージのソース解析を実現した。
また、アプリケーションプログラムの規模は約150万ステップで、そのうちの約55%を占める画面系・帳票系の開発には、日立の画面・帳票サポートシステム「XMAP3」を活用した。
XMAP3は、COBOLと連携して画面・帳票の開発生産性を大きく高めるうえに、クライアントPCに業務プログラムを配布せず、業務処理をサーバに集中させたシステムを構築できる。
「クレジットシステムの要は複雑な計算処理であり、これをクライアントPCに任せるのは妥当ではないと思っていました。XMAP3を使うことで、計算処理をサーバに集中させたシステムを構築できたのです」と高橋氏は語る。
さらに、「XMAP3とデータベースを接続する部分の開発環境の支援など、日本ユニシスによる技術支援に大変助けられました」と続ける。
日本ユニシスのプラットフォーム構築力と適切な開発環境の提案があいまって、スムーズなダウンサイジングを実現できたのである。
約150万ステップのアプリケーションプログラムのうち、32%をバッチ系が占めることでもわかるように、膨大なバッチ処理を正確に実行することは、システムの信頼性を支える重要なポイントである。そのため、九州日本信販では日立の統合システム運用管理「JP1」を用いて、ジョブ管理とバッチ処理エラーの統合監視を行うことにした。
JP1では、オンラインサービスの開始時間やデータベースサーバ上のバッチの開始時間などもきめ細かく設定できた。
「JP1は理解しやすく、オープン環境での作業が初めての人でもすぐにジョブを組めました。しかも単なるスケジューリングだけでなく、常駐プログラムが特定のステータスに達したら自動的にJP1と連携し、社外へデータを自動送信したり、それに対する返事が戻ってきたところでまたJP1を用いて結果を自動的に取込むなど、きめ細かな対応がすごい」と高橋氏は評価する。
小野氏は、「夜間バッチはすべて手入力だったのが自動化され、朝7時にはファイルのバックアップまでできています。しかも、何か問題があればJP1が知らせてくれるので、そこで初めて統合コンソールを見れば良い。夜間は2名のオペレータが常駐していますが、今後は無人化も考えています」と語った。
さらに今後は、JP1と日本ユニシスのSAN対応ストレージ「SANARENA®(サンアリーナ)」との連携によるオンライン・バックアップも検討に入る予定だ。サブシステムが増え、バッチ処理時間が長くなるなかで、バックアップ時間を大幅に削減できると期待は大きい。
新システムは、2006年6月に稼働を開始。
日本ユニシスの保守サポートの効果もあり、メインフレームと同等の信頼性と可用性を維持しつつ、オープンシステムとしての機動力を発揮できる環境が整ったのである。
「大きな効果のひとつとして、業務処理の迅速化とリアルタイム化で、信販会社としての信用を高められたことが挙げられます」と入澤氏は言う。提携カード会社の不正検知システムとのリアルタイム連携を実現したことで、不正利用への防衛対策を強化し、利用者サービスを向上させたのだ。
基幹システムと連携する新規アプリケーションも容易に開発できるようになった。そして、複数の情報照会をしなければならなかった審査業務も、今では1台のPC上で完了するなど、業務面での省力効果も大きい。
「基幹システムのダウンサイジングを検討したい信販会社は多いはず。九州日本信販で成功した基幹システムを、他の金融系企業にも共同で利用していただくなど、協業ニーズにも積極的に対応していきたい」と大野氏は意欲的に語る。
信販会社は今後も、ICカードや携帯電話を使った決済に対応したり、インターネット連携を強化するなど、新しいシステムを次々に開発していかなければならない。九州日本信販は、日立オープンミドルウェアを駆使したスムーズなダウンサイジングにより、将来の競争力強化へ積極的に取り組むことのできるシステム基盤を手に入れたのである。
これからも日立オープンミドルウェアは、変化するビジネス環境に対応していく。
九州日本信販の新システム概要
USER PROFILE
九州日本信販株式会社
[本社] 福岡県北九州市小倉北区船場町2-1 福銀小倉ビル
[設立] 1957年9月12日
[資本金] 1億5,000万円
[従業員数] 188名(2006年4月1日現在)
九州初の総合信販会社として設立された独立系クレジットカード会社。ボランティア活動や障害者雇用にも積極的で、バリアフリーの事務所環境が評価されて、2006年度日経ニューオフィス賞を受賞。
PARTNER PROFILE
日本ユニシス株式会社
[本社] 東京都江東区豊洲1-1-1
[設立] 1958年3月29日
[資本金] 54億8,317万円
[従業員数] 8,578名(連結、2006年9月末日現在)
2,051名(単独、2006年9月末日現在)
日本を代表するITソリューションプロバイダのひとつ。金融、製造、流通、社会公共など幅広い分野での実績と、業種横断的なノウハウを有する。