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VOS1技術計算システムのFORTRAN資産を
計算精度と操作性をそのままに  オープンシステムへマイグレーション

経営のスリム化と柔軟なIT基盤の確立をめざし、既存資産をオープンシステムへ移行するレガシーマイグレーションの動きが活発化しています。 株式会社 栗本鐵工所の住吉工場では、バルブ、鍛圧機器の製造を行っています。

その中のバルブ製造における構造計算などに用いる技術計算システムのオープン化を図るため、株式会社 日立システムアンドサービスとともに、 「最適化FORTRAN90」「COBOL2002」「XMAP3」といった日立オープンミドルウェアを活用したレガシーマイグレーションを実行。 業務に必要な計算精度やユーザーの操作性をそのままに、 コスト適正化と将来の機能拡張に向けた柔軟性もあわせ持つシステム環境の構築に成功しました。

既存資産を有効活用できるマイグレーションを選択

松田勝 氏の写真
株式会社
栗本鐵工所
住吉工場 システムグループ
グループ長
松田勝 氏

水道管やバルブなどのライフラインをはじめ、産業機械、空調 用ダクトなど、幅広い事業分野と高い技術力で世界に名を知ら れる株式会社 栗本鐵工所(以下、クリモト)。さらなる競争力強 化と企業価値向上を目的に、進むべき事業ドメインを「社会インフ ラ」と「産業設備」に定めた事業再編を推進している同社におい て、高度な研究開発拠点を擁した主力工場と位置づけられてい るのが住吉工場です。

「2005年の泉北工場との統合を契機に、住吉工場ではシステム 統合が本格化し、メインフレームからオープンシステムへの移行 が加速しました。しかし泉北工場が持っていたVOS1ベースの 技術計算システムだけは、FORTRANという科学技術計算にす ぐれた専用の言語で記述されていたため、なかなか手をつける ことができなかったのです」と語るのはシステムグループ グルー プ長の松田 勝氏。

松田氏によれば、「技術計算は技術的思考を そのままに一気通貫で流すことが重要です。そのため、オブジェ クト指向の考え方を異質に感じ、最新の言語による新規構築に は無理があると考えていました。ならば現状のアルゴリズムをそ のままソースごとオープン基盤へ持っていくマイグレーションしかな いと判断したのです」。

システムグループ 技術主査の木村 文計 氏も、「例えばVisual BASICなどで1から作り直すと、どうしても 現状のFORTRANとは計算精度など記述が異なるプログラムと なり、今までできていたことができなくなるおそれがありました。開 発期間も3年から5年は必要となるため、コストとリスクを極小化で きるマイグレーションが最良だと考えました」と付け加えます。


システム構成図

計算精度と操作性をそのままエミュレートしたい

木村文計 氏の写真
株式会社
栗本鐵工所
住吉工場 システムグループ
技術主査
木村文計 氏

小川健一 氏の写真
株式会社
日立システムアンドサービス
関西産業本部
第一システム部  主任技師
小川健一 氏

2007年6月に始まった移行プロジェクトのSIパートナーには、 株式会社 日立システムアンドサービス(以下、日立システム)を中心 とした日立グループが選ばれました。

「今回のマイグレーションでは、エンドユーザー への負担や違和感を最小限に抑えるためにも、 既存資産に極力手を加えることなく、従来どお りの計算精度と操作性を再現できるオープン プラットフォーム上の仮想VOS1のエミュレーショ ン性能を何よりも重視しました。そうなれば VOS1の基盤構造に精通し、実績も豊富な日 立システムにお任せするのが最も安心だと考 えたのです」(松田氏)。

クリモトと日立システムはさまざまな検証を重 ねた結果、日立オープンミドルウェアが提供す る科学技術計算向けソフトウェア「最適化 FORTRAN90」が、現行プログラムからの移 行性とアーキテクチャーの違いを超えた演算 精度の高さにおいて最もすぐれたツールであることを確認。画面 入出力を支えるCOBOLサブルーチンや、ユーザーインタフェース をつかさどるXMAPも含めた移行作業を効率化するため、 COBOL2002とXMAP3も適用した移行作業をスタートさせました。

現場を指揮した日立システム 関西産業本部 第一システム部 主任技師の小川 健一氏は、「オープンミドルウェアの活用により、 作業負荷は当初考えていた半分程度になり、効率化と精度向上 に大きく貢献しました。FORTRANの移行についても、日立のソ フトウェア事業部からの強力なバックアップのおかげで、お客さま の高度な要求に応えることができました」と評価します。

日立オープンミドルウェアを活用した高信頼かつ高効率なプロ グラムコンバートと、日立システムのすぐれたSI力により、技術計算 システムは約1年後、新たなプラットフォームとなったエンタープライ ズUNIXサーバ「EP8000/505」上に、すべての機能と操作性を そのままの形で移植することに成功しました。


XMAP3によって、従来の操作性をそのまま継承した技術計算システムのクライアント画面と出力帳票

システムリソースの柔軟活用と拡張性を実現

「以前は設計チームの要求に合わせ、メインフレームの起動や運 用に、休日でも人員を割り当てる負担が生じていました。しかしオー プンシステムへ移行した現在、基本的には、24時間365日の稼働 体制となり、ユーザーの利便性が大幅に向上する一方、運用管 理での負担も軽減しました。われわれの無理難題を聞いていた だき、満足のいく結果を出していただいた日立グループの皆さん には本当に感謝しています」と笑顔で語る木村氏。

また松田氏も、 「今回のマイグレーションで、本来異質なAIX上にVOS1ベースの FORTRANシステムをそのまま移行・再現できる技術とノウハウを 獲得できたのは、当社および日立グループにとって非常に大きな 成果です。いわばAIXで稼働するVOS1エミュレータという財産を 手に入れたに等しいのです。日立さんにはぜひこの貴重な財産を 他の幅広い事例に活用していただきたいですね」と、 FORTRANシステムのマイグレーションの広がりに期待を寄せます。

クリモトでは従来、工場内で提供していた技術計算システムの リソースを、今後外部の協力会社に対してファイアウォール越しに 提供する計画を立てており、オープン化による機能拡張とROI(※)は 将来的に一段と高まっていくと予想されます。

長年にわたって培ってきたFORTRAN資産と技術ノウハウを、 柔軟性とコストパフォーマンスに優れたオープンシステム上に移行 することに成功したクリモト。これからも日立はオープンミドルウェア を核としたサービスプラットフォーム製品の拡充により、同社の経 営スピード向上と情報活用の進化を力強くサポートしてまいります。

(※)
Return On Investment : 投資利益率

USER PROFILE


株式会社栗本鐵工所

[本社] 大阪府大阪市西区北堀江1-12-19
[住吉工場] 大阪府大阪市住之江区柴谷2-8-45
[代表取締役] 福井 秀明
[資本金] 311億円(2008年3月末現在)
[従業員数] 3,044名(連結)/ 1,411名(単独)(2008年3月末現在)

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 2009年1月号」に掲載されたものです。
  • COBOL2002ファミリー最適化FORTRAN90XMAP3の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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